水伝問題で非難されるべきは著者ではなく学校教師

本文とは無関係

 前回の続き。水伝はトンデモだということはわかったとしよう。なぜ科学にそんな風に誰かの飯の種を切って捨てる権利があるのだろう。

 何が正しくて何が間違っているか判断する方法は色々ある。(あるいはあった。)昔も今も人気がある方法に、

  • 真理は聖なる本に書かれている

 というものがある。

  • 優れた哲学者の魂が考えて考えて考えぬけば真理に到達できる

 とする方法も昔はあった。だが結局は

  • みんなで検証を何度も繰り返せば長い目で見れば真理に近づくことが期待できる

 という科学の方法が勝ち残った。

 現代の日本のような先進国においては、科学が何が正しくて何が間違っているかを判断する唯一絶対の権利を握っていることは、もはや当たり前すぎてほとんど意識されもしない。

 輸血は大罪だと信じる外科医は職を追われるしだろうし、祈れば死体が生き返ると思って家に放置していたら逮捕されるだろうし、人を大勢殺して沢山の魂をあの世に送らないと世界が破滅すると信じてその通り行動したら絞首刑になるだろう。

 話の都合で突拍子もない例をでっち上げていると思うだろうか?

 なので言うまでもなくオープニングクイズ2番の正解は×だ。一見○のような気がするのは「少数派の意見を主張するからといって弾圧されたり処罰されたりしない」と言い換えれば本当に○だからだ。

 どんなに異常だろうが少数派だろうが、信じ主張するだけであれば保護される。それは科学の実践に不可欠な活動だからである。ちょうどいくら花粉症がうっとうしくて鳥インフルエンザにかかる可能性があっても呼吸をやめるわけにいかないのと似たようなものだ。

 また科学はその強力さを得るのと引き替えに自らが扱う範囲を厳しく制限している。“みんな”の“検証”が“何度も”可能なことしか扱わないという制約だ。誰か特定の人にしか通用しないこととか、検証の仕様がないこととか、繰り返しが不可能なことは扱わない。

 否定するのではない。扱わない。神がいるかとか死後の世界があるかとかはそもそも検証の仕様がないので科学の命題ではない。科学はそれらを否定しない。ただ無視する。オープニングクイズ3番の答えは×だ。

 これらが水伝問題にどう関係あるかというと、逆説的に聞こえるかもしれないが水伝が自らを科学ではなくポエムだと断っている以上、水伝は科学社会のルールを破ってはいないということだ。

 ポエムに金を出させるのが犯罪なら世の詩人俳人は軒並み廃業せねばならないし、逆にどんな言葉がポエムに当たるか警察や裁判所が決めてよいことになるのも極めてまずい。そんなことになったら水伝どころではない。

 ゲーム脳・マイナスイオン・血液型性格診断・水子の霊、私の思いつく限りいかなる観点――科学的・社会的・教育的・倫理的・経済的・論理的・審美的――から比較しても、「水伝」はこれら諸々よりもはるかに良性(のトンデモ)と思える。

 穏やかに無視するのが妥当な無数のトンデモの1つに過ぎず、学校で取り上げられているという要素がなければこんなに非難されることもなかっただろう。

 確かにその通り。水伝問題で一番責められるべきなのは学校教師だ。小学校は科学が間違いないと認めた知識を覚えるための場所であり、社会の中心であって、どうでもいい意見をほっぽり出しておく社会の辺境ではない。

 小学校で水伝を教える教師というのは、シロアリを家に持ち込むリフォーム業者と全く同じレベルで存在意義がない。現実的には無理だろうがクビにされてしかるべきである。

2009/2/20追記

 で取り上げられているような勘違いをする人もいるみたいだから断っておくが、ここで言っている話は、水伝を哲学上の命題と見た場合の科学社会の正式な取り扱いの話であって、実際に水伝を宣伝している人たちは普通に科学を装って詐欺商法をやってるだけだってのは当然の前提だからね。

 実践としては「科学を装ってるわけじゃないよ」と言い訳された場合に「じゃあポエムのコーナーにすっこんで、学校に入り込もうとしたりすんなよ」と追及できるようになれということ。その程度の問題意識すら持っていない人がここにたどり着く可能性はあまりないとは思っているので、わざわざ言ってなかったけど念の為。

おまけ

 水で癒されたきゃこれでも見とれと。

コメント

  1. より:

    今回一番驚いたのはこの部分です。
    >水伝が自らを科学ではなくポエムだと断っている以上、
    これを授業に使った教師は本当に何考えてるんでしょうね・・・。
    しかし、前回のコメントで自分なりの回答を書いてましたが、先にネタバレをしたみたいになってしまいましたね。
    空気読まなくてすいません。orz

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