フリーマン・ダイソン『宇宙をかき乱すべきか〈下〉』

宇宙をかき乱すべきか〈下〉 (ちくま学芸文庫)

 上巻に続いて下巻から、クリーンエネルギー関連の話題。

 短絡的な善悪二分法は害悪であり、短いスパンの現実と長いスパンの理想は両立しうるし、させねばならない。

 今日の状況の参考にすべき部分は多いと思われる。

21 銀河系の緑化

 なぜわれわれは、グレーは悪でグリーンは善だと単純に言うべきではないのか? グリーンな技術を奉じグレーなあらゆるものを禁ずることによって救済への近道をとろうとすべきではないのか? その答は、世界の物質的諸要求に応ずるためには技術は美しいだけではなく安価でもなければならないということにある。もしわれわれが、「グリーン・イズ・ビューティフル(緑は美にみちている)というイデオロギーがわれわれを将来困難な選択をせねばならない立場から救ってくれると思い、それは他のあれこれのイデオロギーが過去にわれわれを困難な選択から救ってくれたのより少しでもましだと思うなら、われわれはとんだ思い違いをしているのである。この地球の上では、太陽のエネルギーは人間にとって大変必要なものの一つである。あらゆる国が、富んでいる国も貧しい国もすべて、豊富な太陽のエネルギーを浴びているが、われわれはまだ、このエネルギーをわれわれの日常生活に必要な燃料や電力に変換するための安くて広く使える技術をもっていない。日光を燃料や電力に変換することは、科学的には平凡な問題である。原理的には、多くの異なる技術によってこの変換を行なうことができる。しかし、既存のどの技術でも安くはできない。われわれには、それらの技術を大規模に使って、われわれのエネルギー消費量の大きな部分を、急速に減少しつつある天然ガスと石油資源への依存から脱却することができるほどの資金の余裕はない。

 テッド・テイラーは、核盗みに関する仕事を終えると、まだ仕事のできる余生を太陽エネルギーの問題に捧げようと決意した。彼は太陽池装置の設計を練り上げた。それは、もしすべてがうまくゆけば、既存のどんな太陽エネルギー技術よりも根本的に安くなるかもしれないものであった。彼のアイデアは、土手で固まれた巨大な池を掘り、透明なプラスチックのエア・マットレスでふたをすることであり、それにより、水は日光で温められ、風や蒸発によって冷えるのを防がれる。夏も冬も水は温かいままになっている。その熱エネルギーは家庭暖房にも使えるし、市販の簡単な熱機関によって電力や化学燃料に変換することもできる。

(中略)

 テッドの特殊なアイデアがうまくゆくかどうかはたいして問題ではない。テッドは太陽エネルギー装置の一つを設計したに過ぎない。世界中には、別のアイデアで別の設計を試みているグループが何百とある。世界を変換するのには、なんらかの安くてうまくゆく装置が得られればいい。テッドの装置でなくてもいい。われわれが配慮すべきことは、各自のアイデアを推し進めようとするあらゆるグループに対して、彼らがなしうることを示す機会を与えるべきだというだけである。どのグループをも、イデオロギー的な理由によって排除したり挫折させてはならない。

 テッドの技術はグリーンというよりはグレーであり、美よりも実益のために設計されたものである。

(中略)

 しかし、二五年とか五〇年とかでなく、もっと先の未来を見渡せば、グリーンな技術にはもっと大きな将来性がある。

(中略)

 グリーンな技術に基づく太陽エネルギーの未来を想像してみよう。それは、われわれがDNA言語の読み書きを習得して、樹木の成長と代謝の仕組みを再プログラムすることができるようになった後のことである。地上に見えるのは、アメリカ杉が生い繁った谷だけであり、そこはカリフォルニアのタマルペイス山の山麗にあるミュアの森のように静寂でうっそうとしている。それらの樹木は天然のアメリカ杉ほど早く成長はしない。それらの細胞は、天然の樹木のようにおもにセルロースを合成するのでなく、純粋なアルコールとかオクタンとか他のなんらかのわれわれにとって便利な化学物質をつくりだす。水分が一組の導管系を通じて上昇してゆき、樹木が合成した燃料は別の導管系を投下して根へと送られる。地下では、根は生きているパイプライン網を形成していて、燃料を谷に沿って流下させる。この生きているパイプラインは、あちこちで生きていないパイプラインに連絡されていて、燃料は必要なあらゆる場所へ運ばれる。樹木を再プログラムする技術が達成されれば、こんな人工森林を自然の森林が育つ土地ならどこでもつくることができるだろう。

(中略)

 しかし人類は緊急に太陽エネルギーを必要としている。われわれは一〇〇年も待っていられない。もしプラスチックの池のほうが早く間にあうなら、われわれはプラスチックの池をつくって、人工樹木のほうは孫たちに委ねねばならない。

おまけ

 あー感情をフリーエネルギーに変換するテクノロジーほしい。

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