ガイア教

科学技術哲学

リー・M. シルヴァー『人類最後のタブー―バイオテクノロジーが直面する生命倫理とは』

宗教右派と自然崇拝の左派、双方からのバイオテクノロジーに対する反発に対する、分子生物学者の立場からの批判。この手の話に慣れている人にとっては改めてすごい話は出ないと思うが、その分網羅性が高く、どんな人にも非常におすすめである。  原題は"Challenging Natrue - The Clash of Science and Spirituality at the New Frontiers o...
ガイア教の天使クジラ

ガイア教の天使クジラ33 ジョン・C・リリー『イルカと話す日』 6/8

【第32回】 【目次】 【第34回】  前回でリリー博士に関しては最大の山場を越えたが、まだいくつか興味深い部分が残っているので『イルカと話す日』から抜き書き風に進めよう。 第一章 イルカに関する新学説の展開  イルカに関する学説を最初に記録したのはアリストテレスである。その著作『動物誌』の中で、アリストテレスはイルカに関して鋭い観察を数多く書き記しており、イルカが胎生であること、授乳すること、呼...
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ガイア教の天使クジラ32 人間の思考に対して働く時代精神の制約がいかに強力なものであるか

【第31回】 【目次】 【第33回】  歴史上存在した生物の由来に関する理論は、創造論と進化論のふたつだけというわけではない。  もちろんそれは最も重要な境目には違いないが、『種の起原』が出版されたと同時にスイッチが切り替わるように前者が後者に置き換えられ、以後そのままであるかのような印象を抱いているなら誤りだ。  それはあくまで第28回で少し触れたような、我々が歴史を理解しやすくするために必要な...
ガイア教の天使クジラ

ガイア教の天使クジラ31 ジョン・C・リリー『イルカと話す日』 5/8

【第30回】 【目次】 【第32回】  ではまた『イルカと話す日』の続きから始めよう。次の部分はちょうど第29回の引用部分の直後に続くもので、ガイア教徒の鯨類に関する中心信条とでも言うべきものである。  機会があれば後で実例もお目にかけるが、驚くべきことに――そろそろ驚かなくなってきていてもらえると嬉しいのだが――今日時点ですら、これをほぼそのまま信じている人は大勢いる。  このような考察を推し進...
ガイア教の天使クジラ

ガイア教の天使クジラ30 狂っているのは我々の歴史に対する感覚であって彼らの頭ではない

【第29回】 【目次】 【第31回】  前回で、ついに“脳”を介して歴史上三つの大いなる存在の連鎖が全て一本に繋がるところまで来た。いい機会なので少し俯瞰してまとめてみよう。  いつの時代も――少なくとも何万年という長きにわたって――ずっと変わらないものがある。それは、自分と自分たちの共同体が、宇宙の中で特別の歴史を持ち・特別の使命を帯び・特別の地位を占めていると信じたい人間の心である。  それは...
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ガイア教の天使クジラ 中間テスト

しばらくの間、全く無関係ではないとはいうものの死刑問題に浮気していたり、やっぱりもうちょっと年代順を続けた方がわかりやすいかと思って構成を変更していたりと色々事情があってずっと停止していましたが、そろそろガイア教シリーズを再開しようとしています。  しかし、やはり最速でも週一・週二ぐらいしか更新できないので、待ち時間に使えるクイズ集を作ってみました。これは学校の試験ではありません。正解を出すことよ...
ガイア教の天使クジラ

ガイア教の天使クジラ 目次

このエントリは『ガイア教の天使クジラ』シリーズのポータルページとしてwiki的な使い方をします。 シリーズ本編 回数タイトル 第1回個人的回想と主題の提示 第2回“存在の大いなる連鎖”の概念とその変遷 第3回反捕鯨は食肉業界の陰謀でも文化帝国主義でも人種差別でもない 第4回反捕鯨は科学や論理的整合性の問題ではない 第5回金儲けのための宣伝や政治利用を批判するのが論の目的ではない 第6回活動家の熱意...
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ガイア教の天使クジラ29 ジョン・C・リリー『イルカと話す日』 4/8

【第28回】 【目次】 【第30回】  前回に続き『イルカと話す日』を読み進めよう。今回はいよいよ我々がリリー博士から学ばなければならないことの核心に迫っていく。  ここで現在、人間が論争しているクジラとイルカに関する二通りの考え方を比べてみたい。  最初の考え方は十九世紀の生物学から生まれたものだが、これは脳の構造と脳のはたらきについて多くの発見がなされる前の考え方である。脳の重さや体重が測定さ...