小説

星新一の夢世界

星新一『不景気』

結婚を控えた若い優秀な科学者エス氏は、経済界の首領から何でも2倍欲しくなる治療不可能なウィルスの開発を依頼されていた。  アイスクリームなら普段一杯で満足するところをもう一杯食べないと気が済まなくなり、本のような一冊あれば十分なものでさえも、もう一冊買わなければ気が済まない。  博士は「どうも無駄のような気がする」と懸念するが「無駄こそ文明の本質だよ」と説得される。そして一生豪勢に暮らせる金額を、...
文化芸術宗教

古川日出男『アラビアの夜の種族』

わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる: この本がスゴい2008 わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる: 「アラビアの夜の種族」はスゴ本 【徹夜保証】  と、スゴ本さんのところでメチャメチャ褒めちぎられていたので正月休み用に選んだのだが正解。ネタバレすると致命的というわけではないが、かなり興がそがれると思うので検索禁止。  100%味わえるかどうかはある箇所で「○ィ○○○...
星新一の夢世界

星新一『囚人』

ボンボンと悪夢 (新潮文庫)より。  ある刑務所。そこにいる囚人は彼たった一人。しかも牢の鍵は自分が持っている。 「まったく変なことになったものだ。犯罪者でもないおれが、刑務所のなかにいる。そして、きみたちは脱獄の邪魔をしないばかりか、内心ではしてくれるよう祈っている。しかし、おれは出ていかない。なれてはきたものの、時たま考えるとおかしくなってくる」  塀の外では飢えて絶望した群衆が集まって「囚人...
科学技術哲学

2007年ブログネタ在庫一掃セール「本」編

今年読んだ本、またはずっと紹介したいと思っていた本の中から、紹介タイミングがないままの本をまとめて一挙紹介。  ★は1-5個でオススメ度を表す。人に薦める価値もないと思うものはそもそも取り上げないので、1個でもつまらないという意味ではない。十分おすすめである。 『彼らが夢見た2000年』★★  アンドリュー・ワット著。1900年の人間は2000年の世界をどのように想像したか。 『見えざる左手―もの...
文化芸術宗教

海堂尊『チーム・バチスタの栄光』

方々でべた褒めされていたので読んだ。  こういういわゆる普通の小説を読むのはかなり久しぶりなので、どう評価していいかわからないが、かなり面白かったと言っていいのではないか。  どういう繋がりか『パラサイト・イヴ』と比較されていることが多いが、『パラサイト・イヴ』よりは好きだ。 おまけ  病院繋がりで作者は病気シリーズ。フタエノキワミ系では粉雪も受けたけどこれが一番。 【ニコニコ動画】【MAD】フタ...
文化芸術宗教

中島敦『山月記』

DS文学全集で久々に読んだがやっぱりこれは面白いわ。  隴西の李徴は博学才穎、天宝の末年、若くして名を虎榜に連ね、ついで江南尉に補せられたが、性、狷介、自ら恃むところ頗る厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしなかった。いくばくもなく官を退いた後は、故山、略に帰臥し、人と交を絶って、ひたすら詩作に耽った。下吏となって長く膝を俗悪な大官の前に屈するよりは、詩家としての名を死後百年に遺そうとしたのである。しかし...
星新一の夢世界

星新一『悪への挑戦』

「みなさま。夕食もおすみになり、夜のひとときをおくつろぎのことと思います。ではこれより、正義にみちスリルに溢れる社会の連帯と向上のためのみなさまの番組、そして現実のドラマである〈悪への挑戦〉をお送りいたします。これは法律省のご協力と、スポンサーである……」  あたしはこの番組の熱烈なファン。もっとも、あたしだけじゃない。誰でも、どこでもそうなのだ。開始以来、ゴールデン・アワーのこの番組は驚異的な視...
星新一の夢世界

星新一『テレビ・ショー』

<みなさま、まもなく政府の提供による、テレビ・ショーの時間でございます。お子さまがたには、ぜひ見ていただかなくてはなりません。ショーはただいまから十分後に始まります。ご家庭では、それまでにお子さまをテレビの前にお連れになるよう、お願いいたします。>  部屋にいない子供を捜す両親。電話で高校の実験室にいるのを突き止めて呼び戻す。  妻はそばの椅子に腰を下ろした。 「あたしはこんな風にも考えてみるのよ...