小説

星新一の夢世界

星新一『ある戦い』

妖精配給会社 (新潮文庫)  太陽系外からの突然の侵略軍に敗北寸前の地球。敵ミサイルの攻撃になすすべもない司令官と部下たちの部屋に、長く地面に埋まっていたとおぼしき古びた金属筒入りの古文書が飛び込んできた。 「……勝つか負けるかの場合には、体当たりの精神以外に、勝利への道はない。爆弾もろとも敵にぶつかる。一機をもって一艦を葬るのである……」  司令官は直ちに命令を下し、争って志願した部下たちは見事...
文化芸術宗教

新訳「カラマーゾフの兄弟」異例のベストセラー

Yahoo!ニュース - 産経新聞 - 新訳「カラマーゾフの兄弟」異例のベストセラー 混沌の時代、生きるヒント  かなり昔読んだことは憶えているのだが、はっきり言ってそこまで面白かったという記憶はない。  というか、大審問官の部分以外そんなに憶えていない。面白さがわかるには若すぎたんだということにしておこう。もう一度読んでみてもいいのかな。  で、大審問官がどんな話かというのはググってもらうとして...
星新一の夢世界

星新一『おみやげ』

原始の地球に降り立ったフロル星人は、やがて進化するであろう地球人のために 簡単に宇宙を飛び回れるロケットの設計図 あらゆる病気を治し、若返ることのできる薬の作り方 皆が平和に暮らすにはどうしたらいいかを書いた本  等をカプセルに詰め「おみやげ」として砂漠に残していった。しかし進化した人類はその砂漠で核実験を行ったため「おみやげ」はそれと知られることなく灰になってしまった。  教科書に載ったことで有...
文化芸術宗教

ゴセシケゴセシケ

地上でもっとも凶々しいSF 合成脳のはんらん(合成怪物)  ずいぶん前に読んだ覚えのあるはずの上のリンクの文章がなぜかはてブの注目エントリに上がっていた。私もこの本は小学校の図書館で読んで強く記憶に残っている。  今思えばSFに限らず私の趣味一般、たとえば登場人物皆殺し系の悲劇的というか破滅的な結末の話が好きだったりすることなどにかなり影響を与えているような気がする。  「『脳に意識がある』という...
文化芸術宗教

虹影『飢餓の娘』

母が家に置いていったので読んでみたが、これ自体はそこまで面白いとは思わなかった。『ワイルドスワン』と似たような内容で、そちらの方が面白かった。  これまでの経験を思い出してみると、近代中国に関する文学で本気で面白いと思ったのは『大地』と『阿Q正伝』。後者は短いし青空文庫でも読めるのでまだの人にはおすすめ。
政治経済社会

『最後の喫煙者』の世界は着実に近づいている

タクシー全面禁煙巡るコラム、中日新聞に抗議40件 5月10日3時18分配信 読売新聞  名古屋地区で今月1日から始まったタクシーの全面禁煙について、中日新聞社(本社・名古屋市)の常務・編集担当の小出宣昭氏(62)が4月29日の朝刊で否定的な意見を掲載したところ、「たばこの害を、どう考えているのか」などの抗議が同社に相次いでいることが9日、わかった。  NPO法人「日本禁煙学会」(東京)も小出氏に抗...
星新一の夢世界

信仰と懐疑の本質を描く 星新一『殉教』

死後の世界と交信できるテレビが発明された。  すでに亡くなった親類縁者・友人達が言うには、死後の世界は無条件にあらゆる苦悩から解放される楽園であるらしい。  それを信じて自殺した人もすぐにテレビの向こう側に現れ「こんなことならもっと早く死ねばよかった。君らも早く来い」「死刑など即刻廃止し少しでも長生きさせる刑に改正すべきだ」などと口々に語り始める。  かくて大半の人間が自殺をとげ、廃墟となった町で...
科学技術哲学

グレッグ・イーガン『宇宙消失』

量子力学を初めて知ったときには誰でも「この確率を自由に操作できたら俺無敵!」って思うものだ。  だが、よもやそのまんまのネタを一本のSF小説にしてしまって、しかもそれが結構面白いんだから恐れ入る。  SFとしても十分面白いし、裏ギャグ的な面白さもあるし文句ない。  これでたぶん今出ているグレッグ・イーガンの本は一通り読んだが、長編では『ディアスポラ』>>『宇宙消失』=『順列都市』>『万物理論』ぐら...