2007 10/8

星新一 ショートショート1001

<みなさま、まもなく政府の提供による、テレビ・ショーの時間でございます。お子さまがたには、ぜひ見ていただかなくてはなりません。ショーはただいまから十分後に始まります。ご家庭では、それまでにお子さまをテレビの前にお連れになるよう、お願いいたします。>

 部屋にいない子供を捜す両親。電話で高校の実験室にいるのを突き止めて呼び戻す。

 妻はそばの椅子に腰を下ろした。
「あたしはこんな風にも考えてみるのよ。あたしたちがずっと若かった昔、全世界が最終戦争の恐怖に怯えて、誰も未来を信じなかったことがあったわね。そのため、神様が罰を下して、未来を人類の手から取り上げてしまったのではないかと」
 夫は、パイプに火をつけながらうなずき、煙を吐きながら答えた。
「ああ、そんなこともあるかもしれない。未来を拒否しようという意識が積もり積もれば、こんな風に形を取ってあらわれてくることだって、十分に考えられるな」

 そして始まった政府提供のテレビ・ショーの内容はなんとエロビデオ。

 人類から急速に失われつつある性欲を、何とかして子供たちに植えつけようとして、政府提供の豪華なショーは、このように祈りを込め、だが、むなしく放映され続けられる。

 少子化問題に対して政府が何かするというニュースは必ずこの作品の記憶を呼び起こす。

 政府の対策が無駄だと言っているわけではない。むしろ大いに必要だろうと思う。下のニュースのような単純なばらまきが有効かどうかという具体的な問題は別として。

 しかし、望みうる最高の対策が全てなされたとしても、それで出生率が望ましいレベルに回復するかというと大いに疑問がある。

 ある程度の技術と知識が行き渡った状態での出生率はおそらく、今財布に入っているお金でも来月振り込まれる金額でもなく、もっと長期的な未来に対する楽観的な見通し、つまり未来は現在よりもっと良くなると思っているか? に相関しているのだろうから。

 じゃあどうすりゃいいんだって言われると、こればっかりは本当にどうすればいいんだろうねえとしか言いようがない。

 またバブルみたいな景気拡大と、それがずっと続きそうだという幻想が同時に成り立てば、その時だけ回復するなんてことがありえそうだけど、それでいいのかというと、違うだろうし。

 民主党が7月の参院選マニフェスト(政権公約)で柱に据え、今国会へ提出する予定の「子ども手当」法案の概要が7日、明らかになった。親の所得制限などは設けず、ゼロ歳から中学校卒業までの子ども1人当たり月額2万6000円を支給する。必要な費用は約5兆8000億円を見込んでいる。

 同法案は「次代の社会を担う児童の成長および発達に資することを目的とする」と規定。費用は経過措置を置いた上で全額国庫負担としているが、財源については「所得税にかかわる扶養控除などの改廃その他の必要な措置を講じる」とするにとどめた。このほか、施行後3年をめどに見直しを可能とする規定も設けた。

(2007/10/07-15:52 子ども手当2万6000円支給=民主、今国会に法案提出)

おまけ

by 木戸孝紀 tags: