2019 11/3

『宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃』★

 加藤文元著。例の望月新一ABC予想の話。

『THE ONE DEVICE ザ・ワン・デバイス iPhoneという奇跡の“生態系”はいかに誕生したか』★

 ブライアン・マーチャント著。特別iPhoneに思い入れあるわけではないけど、面白かった。

『精密への果てなき道:シリンダーからナノメートルEUVチップへ』★★★

 サイモン・ウィンチェスター著。「精密さ」で一本筋を通した科学史本。意外と今までなかった気がする。

『野蛮な進化心理学―殺人とセックスが解き明かす人間行動の謎 単行本』★

 ダグラス・ケンリック著。個別に特別目新しい話はなかったけどいいと思う。

『幸福な監視国家・中国』★★★★

 梶谷懐著、高口康太著。タイムリーな話題。かなり面白い。

『医者には絶対書けない幸せな死に方』★

 たくきよしみつ著。粗も多いけど大事な話のような気がする。

『進化心理学から考えるホモサピエンス 一万年変化しない価値観』★★

 アラン・S・ミラー著。当然新味はまったくないけど、入門書としてはとても良いのでは。

『脳と視覚―グレゴリーの視覚心理学』★★★★

 リチャード・L. グレゴリー著。著者の名がダニエル・デネットの議論に出てくるからどんなのかと思って借りたが、普通にすごく面白かった。すでにかなり前の本ではあるが、全然古さは感じない。

『「いいね! 」戦争 兵器化するソーシャルメディア』★★★★★
 P・W・シンガー著、エマーソン・T・ブルッキング著。これもタイムリーかつ非常に重要な話題であるし、すごく面白い。軍事系で定評ある著者だし。

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2015 5/25

暴力の人類史 上

 ピンカーの『暴力の人類史』を読んで考えたこと。大半は今回初めて考えたというわけではないが。

 『暴力の人類史』を読んでいることを前提とするが、必ずしも必須ではない。

 価値観の話でややこしくなるのを避けるため、単純に人類間の暴力を減らすことを良しとする。ブロイラーの福祉とか、地球のため宇宙のためとかは考えない。

 理由はどうあれ事実として暴力はずっと減少してきたし、今後も減り続ける可能性が極めて高い。予見しうる将来にわたって時間は味方だ。

 ここでは格言に反して、巧遅が拙速に勝る。どんなもっともらしいあるいはもっともらしくない理由であっても、棚上げ・時間稼ぎ・現状維持は、ほとんどの場合に善だ。

 統計的に考えた場合、暴力が無視できるほど減るまでに、特異点的な大破局、平たく言えば第三次世界大戦を起こさないことだけが肝要だ。

 バイオテロは現実だが実践的に極めて困難で、ナノテク災害や人工知能の反乱はまだSFで、おそらく永久にSFにとどまる。

 結局、第三次世界大戦であっても、大破局を人為的に引き起こせる手段は、古典的(?)な戦略核兵器の撃ち合いぐらいしかない。その危険もキューバ危機を頂点に大幅に減っているが。

 戦略核兵器の運用能力があって、ユートピアイデオロギーの影響下にあり、民主的でない独裁政権を持つ国がポイントになるが、かなり限られる。中国・ロシア・イラン・北朝鮮ぐらいだろう。

北朝鮮

 このうち北朝鮮は、個人独裁過ぎて何世代も持たないだろうし、今ですら中国が保護していなければ一時も成り立たないので、今回の観点としては中国の一部と言ってもよいだろう。

 独裁崩壊が不測の事態(のきっかけ)になりうるけども、もちろんいい方向にも変わりうる。良くも悪くもそれだけだろう。

イラン

 『暴力の人類史』でもあったと思うが、イランが核化しても、別に何も起きないだろう。インドやパキスタンの時と同じように。

 およそありそうもないような奇跡的な最悪ケースでも、せいぜいイスラエルとイランの限定核戦争だろう。(もちろんそれでも十分ひどいが。)

イスラム

 イランのついでにイスラムについて。

 個人的には、暴力という観点から見てのイスラムの問題点は、ムハンマドがイエスと違って世俗的にも成功してしまったために、政教分離が困難なシステムになってしまった、ということに尽きると思われる。

 『暴力の人類史』の中で最も実践的な指摘はモラルの適用範囲を狭めれば暴力は減るということだろう。

 宗教は(全ての文化でそうだというわけではないにせよ)モラルとかなり重複するし、政治というのは(それが全てというわけではないにせよ)暴力装置の独占である。

 政教分離はモラルの非暴力化+適用範囲の大幅削減に他ならない。

 それにイスラムは統一された政体ではないし、そうなりそうな気配もない。ISとかがいくらがんばってもこの記事で考えているような破局をもたらしうるとは思えない。

ロシア

 第2次世界大戦後初めて武力で大きく国境線を変更して、歴史の時計を巻き戻した感があるロシアだが、これは大部分ウラジーミル・プーチンという類い希な個性と能力の持ち主ひとりの問題に見える。

 大破局が特異な性格の個人によって引き起こされうるというのが『暴力の人類史』でも強調された警告であるから、だからと言って警戒しないでいいというわけではない。

 だが、彼の代を過ぎてもロシアが今ほど危険である可能性は、かなり低いと思うし、彼の代のうちに大破局を選ぶほど彼が馬鹿とも考えにくい。

中国

 そうなると結局、唯一本当の本当に危険になる可能性があるのは中国だ。

 だいぶ薄れたとはいえ共産主義というユートピアイデオロギーを正統とする独裁政権が、世界一の人口とまもなく世界一にもなろうかという経済を擁している。

 だが、ここでもやはり時間は味方だ。現在の中国共産党指導者がどれほど酷かろうが、毛沢東と比べたら天使のようだ。今の指導者と50年後の指導者を比べても同じだろう。

 人口動態も味方になる。中国にもまもなく来る人口減少と高齢化は、経済的にはともかく暴力の観点からは利点しかない。直感的にも明らかだが暴力傾向はおおむね若い男性のものだからだ。男女比の偏りも今より悪化はしないだろう。

 中国が経済的・軍事的に地球の覇権を握るというビジョンは、ちょっと前に日本が経済的にそうだと思われていたのと同じく、近過去から現在までのトレンドをそのまま未来に外挿するというありがちな誤りに過ぎない。

 何度でも言うが時間は味方だ。常に今が一番危険な時で、あとほんのちょっと(歴史的な尺度では)だけバランスを取って耐えればいいだけだ。

 しつこいが棚上げ・時間稼ぎ・現状維持がおおむね善だ。逆に一番まずいのは、今すぐ何かやらないともっと危険になるという誤った危機感に捕らわれることだ。恐怖すべきことはただひとつ、恐怖そのものだ。

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2011 3/5

ロボット兵士の戦争

 『戦争請負会社』『子ども兵の戦争』の著者P・W・シンガーの本。面白い。これはかなり面白いぞ。

 米軍無人機の活躍を見ることはもはや珍しくもなくなっているが、誰の想像も及ばぬほどのスピードで変化していく戦争の現在と未来。

  • 第一部:私たちが生み出している変化
  • 第二部:変化がもたらすもの

 と分けられているが、第一部の方が面白いかも。

 現実の面白さもさることながら、著者のSF知識も相当のもので、ちょっとした小ネタも面白い。軍事やSFに関心のある人は是非。

おまけ

 DARPAの話多し。

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2010 11/24

子ども兵の戦争

  『ブラッド・ダイヤモンド』から連想して借りてきた少年兵問題の本。

 少年十字軍みたいな集団狂気や末期のヒトラーユーゲントみたいなヤケクソはあれど、あくまで例外であり、有史以来古今東西を問わず子どもが軍事に関わるのは常にタブーとみなされていた。

 しかし、今子供兵はかつてなく増えている。現代の紛争地域では、正規軍の装備や練度も大したことないし、狙いがソフトターゲットであることも多く、軽くて取り扱いの容易なAK-47一挺持った子どもで十分役に立ってしまうのだ。

 それどころか、誘拐・洗脳で簡単に徴集できるし、死の概念が未発達なので死を恐れず、自爆も辞さないし、報酬も欲しがらない。敵も見落としたり躊躇したりするし、むしろ大人より都合が良かったりする。

 どう見ても最悪の人権侵害だし、地域の復興にも大変な障害となるが、公式にはいないことになっているので皆存在を否定するし、すぐに死ぬか成長していなくなってしまうので、なかなか目に入りにくくなってしまっている。

 うーむ、大体知っているつもりだったが、改めてひどい話だ。非常におすすめ。私が一点強調するとしたら、人間は「合理的」でインセンティブ次第で何でもやるのだ、ということかな。

参考リンク

おまけ

 小さな大量破壊兵器つながり。

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2009 12/6

(本文とは無関係)

 最近読んだ本、またはずっと紹介したいと思っていた本の中から、個別エントリにするタイミングがなさそうなものを、まとめて一挙紹介。

 ★は1-5個でオススメ度。人に薦める価値がまったくないと思うものはそもそも取り上げないので、1個でもつまらないという意味ではない。

『クトゥルフ神話ガイドブック―20世紀の恐怖神話』★★

 朱鷺田祐介著。クトゥルフ神話は今見ると非常に陳腐というか普通だけど、それはこれを皆がフォローしたからそう見えるようになったわけで、やはり必修だと思うのです。

『新・現代の軍艦―その技術と運用』★

 江畑謙介著。江畑謙介つながり。古い本だが、原潜とか原子力空母がどういうもんかぐらいは知っておいた方がいいのでは。まあ、そのぐらいならwikipediaで十分か。

『匂いの人類学 鼻は知っている』★★★★

 エイヴリー・ギルバート著。嗅覚全般の話。やや話が広すぎる印象だがとても面白い

『新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く』★★

 アルバート・ラズロ・バラバシ著。ダンバー数云々の話で思い出した。スケールフリーネットワーク周辺の話題でそこそこいい本だったと記憶している。

『日本人の英語』★★★★★

 マーク・ピーターセン著。どっかで見かけて借りたが、すごくよかった。

『イノベーションのジレンマ 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』★★★

 クレイトン・クリステンセン著。なぜかちゃんと取り上げたことがなかった。就職する前後にすごく話題になってたのを覚えてる。

『ザ・リンク ヒトとサルをつなぐ最古の生物の発見』★

 コリン・タッジ著。霊長類のミッシングリンク。この化石と発見の経緯は大変興味深いのだが、本としてはいまいち。最初の章だけ面白い。

『農耕起源の人類史』★★★★

 ピーター・ベルウッド著。これはすごい。ただ、元からこういう話にある程度の興味と知識を持っている人でないと読めないかも。

『蟻の自然誌』★★★★★

 バート・ヘルドブラー、エドワード・O・ウィルソン著。蟻サイコー! ウィルソンの蟻の研究と社会生物学は、20世紀を通じた生物観・進化観に大きな影響を与えているので、蟻スキーならずとも是非に。

『天才数学者、株にハマる 数字オンチのための投資の考え方 』★

 ジョン・アレン・パウロス著。彼の本はどれも面白い。その中では一枚劣る感じだけど、十分面白い。

『バフェットの株主総会』★★★

 ジェフ・マシューズ著。ううむ、ウォーレン・バフェットというのは賢い人なのだなあ。投資家としてすごいのはもちろんとして、意外な質問に対するちょっとした受け答えの方にそれを感じるわ。

『神々の捏造 イエスの弟をめぐる「世紀の大事件」』★

 ニナ・バーリー著。本としては今ひとつだが、やっぱあの辺の地域はいろいろと大変なんだなあ……という知識として。

おまけ

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2009 10/31

(本文とは無関係)

 最近読んだ本、またはずっと紹介したいと思っていた本の中から、個別エントリにするタイミングがなさそうなものを、まとめて一挙紹介。

 ★は1-5個でオススメ度。人に薦める価値がまったくないと思うものはそもそも取り上げないので、1個でもつまらないという意味ではない。

『軍事とロジスティクス』★★★

 江畑謙介著。あまり知らない分野なので面白かった。

ローズマリーの赤ちゃん』★

 『死の接吻』アイラ・レヴィン著。モダンホラーの先駆け的作品。映画が有名だが、小説はちょっといまいち。訳が悪いのだろうか。

『タウ・ゼロ』★

 ポール・アンダースン著。今まであまり言われてるの聞いたことないのだが、ジョジョ6部プッチ神父のスタンドの元ネタってこれだよな? 作品自体は若干古いものの十分面白い。

『かくして冥王星は降格された―太陽系第9番惑星をめぐる大論争のすべて』★★

 ニール・ドグラース・タイソン著。原題”THE PLUTO FILES The Rise and Fall of America’s Favorite Planet”。『冥王星事件簿 アメリカが一番好きな惑星の隆盛と没落』ぐらいの意味合い。日本でも少しは話題になったが、アメリカでは全然インパクトが違ったんだということがよく分かる。なかなか面白い。

『クルマの渋滞 アリの行列 -渋滞学が教える「混雑」の真相』★

 西成活裕著。初心者向き。読みやすい。

『予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』★★★★

 ダン・アリエリー著。内容そのものは類似の本がよくあるが、著者の人格に好感が持てる。かなり面白い。

『潜水調査船が観た深海生物―深海生物研究の現在』★★★★★

 藤倉克則著、丸山正著、奥谷喬司著。これはすげー! 小さいころに生物図鑑を読んでいて感じたような、あのワクワク感とでも言うべきものが甦る。最高。

『研究する水族館―水槽展示だけではない知的な世界』★★

 猿渡敏郎著、西源二郎。これもなかなか。

『科学がきらわれる理由』★★★★★

 ロビン・ダンバー著。地下猫さんのおすすめ。原著が95年ということもあり、確かにわずかに古さは感じるが、話題の幅の広さと見識の深さは素晴らしい。厚さもそこそこに押さえられているし、啓蒙書として理想的。私もおすすめしておく。

『格差はつくられた―保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略 』★★★

 ポール・クルーグマン著。アメリカ大統領選はとっくに過ぎて、日本の政権交代も終わっちゃったし、旬を逃した感があるが、結構面白い。

『進化論の射程―生物学の哲学入門』★

 エリオット・ソーバー著。ポパーのあたりの話は、昔もっとずっと良い本を読んだ覚えがあるのだが何だったかな。思い出せない。最近こういうことが多い。歳で記憶が衰えたか、それとも歳で経験が増えてきた証拠か。

おまけ

 時が加速していくつながり。

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2009 9/10

最底辺の10億人 最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?

 以前立ち読みで良い本だとは思っていたけど、図書館の予約の順番が回ってきたのでまた読んだ。やっぱりすごく良い本だった。おすすめ。

 思いっきり要約すると、ここ数十年の間に、

  • 先進の10億人+発展途上の50億人

 という構図だった世界は、

  • 先進or発展途上の50億人+底辺の10億人

 という構図になりつつあるということ。

 そして、この底辺国が陥っている罠を打破するには、軍事介入や貿易自由化という、通常こうした最貧国への援助に取り組む人たちが嫌う行為が、往々にして必要であるということ。

 イラク戦争の引き起こした最も重大な問題は、軍事介入の選択肢を奪ってしまったことなのかもしれない。

関連項目

参考リンク

おまけ

 底辺と希望つながり。

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