進化

おすすめ書評まとめ

書評在庫一掃セール2009年7月版

最近読んだ本、またはずっと紹介したいと思っていた本の中から、個別エントリにするタイミングがなさそうなものを、まとめて一挙紹介。  ★は1-5個でオススメ度。人に薦める価値がまったくないと思うものはそもそも取り上げないので、1個でもつまらないという意味ではない。 『自分をつくりだした生物―ヒトの進化と生態系』★★★  ジョナサン・キングドン著。先史人類とそのテクノロジーが環境といかに相互作用してきた...
科学技術哲学

ニック・レーン『ミトコンドリアが進化を決めた』

『生と死の自然史―進化を統べる酸素』の続編に当たる本。 真核生物とミトコンドリアの進化的起源 老化とフリーラジカルとミトコンドリアとの関わり 内温性(温血)生物のスケーリング則  など。前著からわずかの期間にも次々と知見がアップデートされている感があってとてもエキサイティングだ。老化に関しては統一的に予防や治療ができるようになる可能性が十分あるのは確からしい。現在のところは、 頭や体をよく使うよう...
科学技術哲学

ニック・レーン『生と死の自然史―進化を統べる酸素』

0.予習  予告しておいてから随分間が開いたが、久しぶりに相当面白い本に当たったので紹介する。すごくオススメである。続編にあたる『ミトコンドリアが進化を決めた』も都合がつき次第読みたいと思っている。  まず、絶対に必要というわけではないが以下のエントリの内容を踏まえておいた方がもっと面白いと思う。 ピーター D.ウォード『恐竜はなぜ鳥に進化したのか―絶滅も進化も酸素濃度が決めた』 ガブリエル・ウォ...
科学技術哲学

ニール・シュービン『ヒトのなかの魚、魚のなかのヒト―最新科学が明らかにする人体進化35億年の旅』

ティクターリク(Tiktaalik)の発見者が書いた本。とは言っても話はティクターリクだけに留まらず、 魚類から四肢動物への進化の過程 エボデボ(発生生物学+進化生物学) 人類と他の生物が祖先を同じくすることの意味  と、多岐にわたる。それぞれについては関連図書にあげたような本の方が詳しいが、その全てが約300ページ・2000円とかなり圧縮してまとまっている。すごくいい本だと思う。今まで興味がなか...
科学技術哲学

トム・カークウッド『生命の持ち時間は決まっているのか―「使い捨ての体」老化理論が開く希望の地平』

『生と死の自然史―進化を統べる酸素』のための予備知識二冊目。 1.なぜ老いるのか  人間の寿命の信頼できる最高記録は120年とちょっとである。不老不死は今も昔も究極の夢であるが、そもそも生物はなぜ老いるのか? 老化は極めてありふれた現象であるにもかかわらず、実はこの問いに完全な答えは未だ得られていない。  「細胞は常に損傷に晒されているんだからいずれ劣化するのは当たり前じゃないの?」などと言ってみ...
科学技術哲学

パスカル・ボイヤー『神はなぜいるのか?』

原題は『説明される宗教』(Religion Explained)。原題の方が内容に忠実だ。全体の趣旨は私なりに思いっきり要約するとこう。 従来の説明 宗教は説明を与える。 宗教は安らぎを与える。 宗教は社会に秩序を与える。 宗教は認知的錯覚である。  これらはみな一理あるが不十分である。このような現在「宗教の特徴」と言われて思いつくようなものは、いくつかの大宗教の特徴であるに過ぎず、宗教全体の中で...
科学技術哲学

マイク・モーウッド『ホモ・フロレシエンシス―1万2000年前に消えた人類』

1万2000年前と言えば、以前紹介した『銃・病原菌・鉄』で、人間集団間の文明の格差が生じ始めるスタート時点として仮に設定されていた1万3000年前よりも後だ。  そんな年代まで、チンパンジー並みの体格で火や石器を操っていた別の人類が生きていたとしたらどうだろう?  ……という、実に様々な知的興奮を掻き立てるホモ・フロレシエンシスだが、この本自体はどうも書き方が悪いのか、研究に際しての他の研究者やマ...
科学技術哲学

アルフレッド・W. クロスビー『飛び道具の人類史―火を投げるサルが宇宙を飛ぶまで』

人間は自分達ホモ・サピエンスの長所を精神に求めることに慣れており、動物と身体能力を比較するときは、負けることを好む。  「俺たち人間はこんなに脆弱な肉体しか持たないのに地上を征服した。だから万物の霊長なんだぜい。イェイ!」と思うと気分がよいのだ。  そのためか、人間の身体能力のうち圧倒的に優越しているものがあることをほとんど忘れている。それは投擲力。ものを放り投げる力。  投石は初期人類にとって重...