『順列都市』『ディアスポラ』に続きグレッグ・イーガン3冊目。
ところどころ急ぎすぎたり間延びしすぎたり、あるところでは無駄に細かすぎたり逆にあっさりしすぎてたりする印象。個人的お気に入り度は
『ディアスポラ』>>『順列都市』>『万物理論』
かな。でも書かれた順に良くなっているみたいだからそれでいいのか。
本筋の万物理論の他にも様々なSF要素が出てきて、ウィルスの人工合成の話も出てきたけど、今日見たニュースがすでにこれ。
スペイン風邪を人工合成 鳥インフル解明に道筋…東大教授ら
1918年に大流行したインフルエンザ「スペイン風邪」のウイルスを人工的に作り出し、サルに感染させると、異常な免疫反応が起きて致死性の肺炎になることを、河岡義裕・東大医科学研究所教授らが突き止めた。
高病原性鳥インフルエンザも似た症状を人や動物で起こすことがあるが、このウイルスは実験に使うサルに感染させても症状が出にくい。スペイン風邪ウイルスがサルに起こす症状を抑える手法が確立できれば、高病原性鳥インフルエンザの治療や感染予防につながると期待されている。18日付の英科学誌ネイチャーに発表する。
スペイン風邪が流行した当時はウイルス検出技術がなく、発症の仕組みは確かめられなかった。このため、研究チームはスペイン風邪のウイルスを、最近解明された遺伝子配列をもとに人工合成し、カニクイザルに感染させた。その結果、1日以内に衰弱して食欲がなくなり、8日目には呼吸器状態が非常に悪化。気道全体から増殖した高濃度のウイルスが検出された。
サルの遺伝子を調べると、異常な免疫反応が起きていた。河岡教授は「スペイン風邪をさらに分析すれば、鳥インフルエンザの予防や治療につながる可能性がある」と話している。
(2007年1月18日 読売新聞)
一昔前まで完全にSFの世界だったものが現実の役に立つ段階に来ているのだなあ。
ちなみに予習にはまったく同名のこの本がよいだろう。テーマの性質上あまり面白いとは言い難いかもしれないが、これまで読んだこのテーマの本の中では一番いいことは確かだ。
by 木戸孝紀
tags:SF グレッグ・イーガン 書評 小説
『順列都市』に続いてグレッグ・イーガン作品を読んでみた。個人的には順列都市以上に面白かった。これが現代の『スターメイカー』なんだろうなあ。
スターメイカーでは無名のイギリス人が主人公だったけど、こっちでの主人公がもはや現在の意味での人間ですらなく、最初からコンピュータ内のバーチャル都市でプログラムによって作られた「市民」。
そのわりには地球の危機が起きたりいろんな星を渡り歩いたり他の文明と接触したりと古き良き(?)SFっぽい要素もあり。とてもいい感じ。他のグレッグ・イーガン作品をまとめて注文してしまった。
ただ人に薦める上で唯一の欠点はかなり敷居が高そうであるということ。元からSFか科学にかなり興味がある人じゃないと厳しいと思う。専門用語などを全部わからないまま読み飛ばしても面白くないわけじゃないがやはり魅力は半減だろう。
『順列都市』の方はまだ『ライフゲイムの宇宙』一冊読んどけと言えるが、こちらはかなり幅広い分野からネタを持って来ているので、事前準備は難しい。あえて一冊挙げるならマ、レイ・ゲルマンの『クォークとジャガー』かなあ。それ自体少々敷居が高そうな気もするが。
関連図書
by 木戸孝紀
tags:SF グレッグ・イーガン 書評 小説
『スターメイカー』の感想を書いたときに「今現在残されている神秘と最先端のSFは何だろう?」という問いかけをした。
あの時は単なる締めの言葉として深く考えずに適当に書いたのだが、自分で気になってきてしまったので調べたところ最先端のSFの候補の1つであるらしい。読んでみたら確かに面白い。一級品。
セルオートマトンに関する知識があった方がより楽しめそうなので、『ライフゲイムの宇宙』を先に読んでおくといいかも。あつらえたようにぴったりの内容だ。
ただ、確かに面白い最先端のSFなんだろうけど、ここでいう“神秘”とはちょっと違いそう。
話の中心となってる「コピー」やセルオートマトンについては別に、知性や精神がアルゴリズムで代替可能であろうということも、セルオートマトンが万能チューリングマシンになりえて、チューリングマシンでも進化の複雑性は再現できることも、神秘どころか現在すでに当たり前の話なわけだし。
結局神秘(SF)への橋渡しを担っているのは人間原理と量子論の多世界解釈の方。現代の神秘はもはやそこら辺にしか残されていないってことかね。追いつめられてるな。
たぶん、もう100年するかしないかで量子コンピュータが当たり前のものになると思うが、そうなったら神秘の持って行き場が完全になくなってしまうんじゃないだろうか。
by 木戸孝紀
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