内容についてはshorebird先生にお任せ。生態学の基本としてはまともだし、面白くもあるけど、全体として作者の意見には乗れないな。最後の一文を引用。
わたしには、今も獰猛な肉食獣にかみ殺される不安を抱えながら暮らしている数少ない人々の気持ちを代弁することはできないし、そうするつもりもない。ライオンがうろつく畑で眠らざるをえないタンザニアの農夫を代弁する資格はないし、信仰と仮面だけを頼りに、トラがいる森に入っていくスンダルバンの男たちのような自信もない。しかしわたしは、科学が発見したことと、愚かな人間の実験によって明らかになったこと、そして、大型捕食者が消え、生物世界が不毛になる未来が迫っていることをどうしても伝えなければならない。わたしは、大きな肉食獣が歩きまわる土地とそうでない土地との本質的な違いを、彼らのなわばりをひとりで歩いてみればはっきりとわかるその違いを、個人的な感覚としてではあるが、ありのままに証言できる。そしてわたしは、論理的思考よりもっと深いところでこう信じている――野生動物が姿を消し、もはや戻ってくることのない世界には、果てしない孤独が待ち受けている、と。
そりゃあ私だって著者と同じように感じる。ただでさえ狭い地球に溢れかえっているアフリカやアジアの貧乏人なんかもっとライオンやトラの餌になって、私が温かい部屋で鑑賞するBBCの番組に出演する動植物たちが、代わりに増えれば幸せだと思う。
私が彼と意見を異にするのは、論理を超えた何かはそのような感情を助長するためにではなく、抑制するために使われなければならないと思っているところだ。
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by 木戸孝紀
tags:ガイア教 科学 環境 書評 生態学 動物
「動物福祉」にたずさわる「自閉症」の「女性」の「共著」。……何このスピリチュアルアンテナにビンビンくるキーワードの羅列!
「おお、彼女こそ動物たちと魂の触れ合いができる天使のようなピュアな心の持ち主! 環境ホルモンまみれのマクドとかむさぼり喰ってる愚民ども今すぐ有機野菜買わないと地獄に堕ちるぞ!」
みたいな内容だったらどうしようと警戒しながら読み始めたので、意外にも大変まともな内容でものすごく得した気分。
イルカ高知能説のなごりがわずかに見られるが、そういうのに釘を刺しているところもあるし、全体的には全然許せるレベル。
動物の本としても脳科学の本としても自閉症の本としても、それぞれ超一級品。非常にオススメです。
参考リンク
おまけ
by 木戸孝紀
tags:自閉症 書評 心理 進化 動物 脳
経由で知る。これは確かに最高級に面白い。
で以前注目したように、『鋼の錬金術師』は、現代少年マンガを薄く広く覆っている「不殺」的発想を一歩破って進んでいるように見える。
このことが、作者荒川弘の農家出身という属性に寄っているのではないかという考えは以前から持っていたが、これを読んで確信に変わった。
- ヒグマの気配に死を覚悟したり
- 珍しい障害を持って生まれた仔牛を実験用に提供するかひと思いに処分するか悩んだり
- 家族がみんな死にかけたり骨折ったり血が出たりする怪我をしたことがあったり
というような経験なくしては、間違いなくハガレンはなかった。
そういうことを考えなくても、単純にエッセイとしても雑学としてもマンガとしても面白い。農業高校の回では『動物のお医者さん』を思い出したりもした。傑作。おすすめします。
おまけ
by 木戸孝紀
tags:エッセイ コミック ハガレン 荒川弘 動物 農業
「動物」と言ったとき最初に連想されるのはまずイヌかネコだろう。「刷り込み」の発見等の功績によりノーベル医学生理学賞を受けたコンラート・ローレンツのイヌネコ限定エッセイ集である。
彼の『ソロモンの指輪』は私が誰に対しても絶対の自信を持っておすすめする本の一冊である。彼の動物にたいする限りない知識と愛情の深さには敬愛の念を抱かずにはいられない。この本もイヌ・ネコが好きか嫌いかに関わらず楽しめるだろう。
逆説的であるが私が動物(特に犬)飼わないことに決めているのはローレンツの影響によるところが大きい。
もちろん私は自分が動物が好きだと思っているが(そもそも「自分は動物が嫌いだ」と自己既定する人がどれぐらいいるものなのかも疑問だが)、彼の本を読んでいると自分は本当に動物が好きなのではないと自覚するからだ。
より正確に言うと動物は好きだが、それは図鑑やテレビや本で見るのが好きなのであって、飼っていっしょに暮らすのが好きなのではないとわかるのだ。
たとえば、私はたぶん犬を毎日規則正しく散歩に連れて行ってやるタイプの人間ではないだろう。それは犬にとって非常な不幸なのである。だからこれから飼うことがあるとしてもあまり手間のかからない小鳥ぐらいだろう。
最後に別の話題に繋げるためのちょっとした問題。正解した方が偉いというわけでもないのであまり考え込んだり調べたりせずに直感的に答えて欲しい。
問題
次の文章はこの本の中でイヌを家畜化し始めた時代における人類祖先の想像上の1日が描かれた部分からの引用である。次の( A )に入る単語を答えなさい。
彼らの指導者であった知恵のある老狩人は、数週間前に命を落としていた。(中略)集団は、いまはたった五人の成人男子によって支えられていて、そのほかは女や子どもたちであった。五人の男では、大きな猛獣の攻撃を撃退するのに十分というわけにはいかなかった。またリーダーシップを受け継いだ男は、前指導者ほどの経験も筋肉の力も身に備えていなかった。しかし彼の瞳は他の誰よりも輝き、その( A )は高く秀でていた。
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かなり昔のネタ(のはず)だが目に留まったので備忘がてら。選曲が秀逸。犬もちょっとだけ登場。
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