2010 1/10

(本文とは無関係)

 オリオン座の1等星「ベテルギウス」で、超新星爆発へ向かうと見られる兆候が観測されている。米航空宇宙局(NASA)が6日に公開した画像には、星の表面の盛り上がりとみられる二つの大きな白い模様が写っていた。この15年で大きさが15%減ったという報告もあり、専門家は「爆発は数万年後かもしれないが、明日でもおかしくない」と話す。もし爆発すれば、満月ほどの明るさになり、昼でも見えるようになる。

(asahi.com(朝日新聞社):ベテルギウスに爆発の兆候 大きさ急減、表面でこぼこ – サイエンス)

 久々に面白い天文ニュースだなあ。

 万一本当に爆発したら、1054年のかに星雲以来のでかい超新星爆発、というか間違いなく空前絶後の天文ショーが見られることになるわけで。見たいなあ。

 さらに万一ガンマ線バーストの方向に入ってたら「人類は滅亡する!」(な、なんだってー!!!)レベルの話になる可能性もあるけど。*1

 少なくともオリオン座は消滅する、あるいはごく薄くなることになりそう、世界中の星図や天球儀は更新を余儀なくされるのだろうか。想像するだけで面白いわ。

*1:もちろん、そんな宝くじ一等を二日連続で当てるみたいな話はいくらなんでもないに決まってるけど。

おまけ

 「あの星々はもう滅んでしまっているのだろうか?」

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2009 11/7

広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由―フェルミのパラドックス

ドレイクの方程式

 ドレイクの方程式というものがある。最近は宇宙への関心低下に伴って知らない人も増えているかもしれないが、一定の年代のSF者や宇宙科学に興味のある人は大抵知っている。

 内容の解説はしないので知らない人はwikipediaで予習してほしいが、この方程式なるものは要するに、

 今日道路に落ちていたバナナの皮で滑って転んで頭を打って死ぬ人の数は、今日道に落ちているバナナの皮の数×道に落ちているバナナの皮を人が踏む確率×バナナの皮を踏んだ人が転ぶ確率×転んだ人が頭を打つ確率×頭を打った人が死ぬ確率に等しい。

 ……という、当たり前のことを言っているだけである。それぞれの記号に代入すべき数・確率がすでに知られているのなら、単なるかけ算に過ぎないし、もちろん実際には知られていないのだから、なおさら無意味である。*1

 ところがこれを、いかにも「科学」を連想させる記号で書き、「数学」を連想される「方程式」と名付ける*2と、とたんに何かすごいことを言っているように見え、何か確固たることが言えるような錯覚を起こさせる。

 だからこそ、SFや通俗科学では盛んに使われた。wikipediaにも載っているエピソードだが、

著名な天文学者であるカール・セーガンは文明の存続期間以外の項は総て比較的高い値であると推測している。そして、この宇宙に存在する文明の多寡を決定付ける要素は、文明の存続期間(言い換えると技術文明が自滅を避ける能力の大小)であるとしている。ドレイクの方程式はセーガンにとって、環境問題に関わったり、核の冬の危険に対し警告を発する為の原動力となった。

 カール・セーガンのこのような主張は、どの本だったか忘れたが、私も読んだことがある。もちろんこのような推測を裏づける根拠は、極めて薄弱である。

 数に明るい子供に「銀河系で恒星が形成される速さが大きいと分かったら核戦争をしてもいいのか」と思わせかねないような小細工を弄せずとも、環境保護や核反対の主張はできるはずだし、またすべきだ。

 彼は自分の主張がより正しく・立派で・客観的に見えるように、大衆のこうした科学・数学に対するオカルト的崇拝感覚を利用したのであり、それは、いかにもっともな動機によるものといえども真の科学ではない。

 高橋直樹がこの件に関連してドレイクの方程式に言及しているのは、地下猫さんの「ダンバー数」に対する態度は、この場合のカール・セーガンに相当する誤りではないか、という問題意識に基づくものと理解している。

 つまり「まあそりゃ限度のある要素の集まりには何かしらの限界はあるだろうねえ」と、ドレイクの方程式同様考えるきっかけ程度に扱っておくべきものを、大衆の数学に対する弱さを利用して自分の政治的主張を虚飾することに利用していないかということだ。

 私としては、それはさすがに悪意に取りすぎで、地下猫さんはちゃんと考えるきっかけ程度に扱っているように見える。

 しかし、確かに今回話したような問題意識をちゃんと持っていたら、今回の通りの言い方はしなかっただろうとも思う。批判的な立場の人から疑われるのは仕方あるまい。

 そもそもダンバーの『科学がきらわれる理由』でも、科学が厳密化・数理化されていくに伴って、一般大衆から敬遠・反発の感情が発生し、オカルトへの傾倒を生んでしまう……というような危惧は、重要テーマのひとつだったはずだ。

 セーガンやドレイクの方程式の時代とは風向きが大きく違っているけれども、この本から学ぶものは霊長類学以外にもっとあったんじゃないのかあ、ぐらいのことは私も言っておきたいかな。

*1:考え始めるきっかけぐらいにはなるにしても。
*2:ついでだが「ドレイク」って名前もなんか絶妙に格好いいよなあ。提唱者が「ジョン・スミス」とかいう名前だったら流行らなかったに違いない。全世界のスミスさんには申し訳ないが。

おまけ

 バナナの皮つながり。

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2009 6/29

宇宙を織りなすもの――時間と空間の正体 上

 あなたの住んでいるスペースコロニーが何かのはずみで、物理法則は同じだけど他に何もないからっぽの宇宙に一個だけ迷い込んでしまいました。

 さて、このコロニーは自転によって人工重力を維持することが、

  • できる(他に何もなくたって空間に対して回転してるんだからできるよ!)
  • できない(他に何もなければ回転しているという概念には意味がないのだからできないよ!)

 どっちだかわかります? 自信持って答えられる人はかなりえらいです。

 『エレガントな宇宙』と同じ著者。「時間と空間」で一本筋を通したかなりよい本。

 量子力学部分でもベルの不等式が持つ意味の説明などは、数式を使わないものの中ではこれまでで最も優れているのではないかと思う。

 ただし、後半に入ると話が最新のものにまで及んでくるので、予想・予測で語られなければならないところも多くなってくる。それが楽しみだという人には文句なくおすすめ。

おまけ

 いまさらだけど宇宙と回転つながり。

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2009 5/31

幸運な宇宙

 原題“THE GOLDILOCKS ENIGMA Why is the Universe Just Right for Life?”(『ゴルディロックスの謎 なぜ宇宙は生命にちょうどよいのか?』)。

 ゴルディロックスとは童話3びきのくまの主人公の女の子のことで「特別にあつらえたわけではないはずなのになぜかちょうどよい」ことを表す。

 テーマは『宇宙のランドスケープ』の時にやや詳しく取り上げたので繰り返さないが、これまでの多宇宙本の中で最もまとまりがよかった。

 あとがきで著者が個人的に好むとしている意見は、私には純粋にSFだと思われ――実際にグレッグ・イーガンの『万物理論』そのままだ――同意できないが、全体的には非常におすすめである。

関連書籍

おまけ

 ありえないような幸運つながり。

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2008 12/25

宇宙旅行はエレベーターで

 軌道エレベータにはSF等ですでにお馴染みの存在だとは思うが、最近まであくまで空想の存在であり実現可能だとは思われていなかった。このために使えるほど軽くて張力に耐える物質など存在しうると思えなかったためだ。

 全てを変えたのがカーボンナノチューブ。ただでさえ限りなく魅力的な新素材だが、なんと軌道エレベータのケーブル素材としての任に耐えそうなのだ。そして、それ以外に軌道エレベータのために必要な技術は、むしろロケット技術よりもずっと簡単なものばかりである。

 唯一にして絶対不可能だと思われていた壁が崩れてしまったため、あとは長いカーボンナノチューブの商業生産が順調に実現できさえすれば、軌道エレベーターはたったの一兆円ぐらいで20年もしないうちに実現可能だというのが筆者たちの提言。

 もちろんこれは限りなく楽観論寄りの予想で、実際にはもっと、たぶん4,50年はかかりそうな気はするが。私たちが生きているうちに実現したら儲けものというぐらいに考えておけばちょうど夢があってよいのではないかな。

参考リンク

関連図書

おまけ

 SFつながり。

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2008 12/24

宇宙をプログラムする宇宙―いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?

 宇宙は常に時代精神の最先端を走るイメージでたとえられます。

 大昔は宇宙は大きな卵だったり、亀の背中に乗ってたりしました。中世ではもちろん宇宙は神でした。科学が勃興すると宇宙は時計仕掛けの機械だと言われたこともあります。コンピューターが発達した頃は宇宙はコンピューターだと言われ、複雑系ブームの頃は宇宙はカオスの渦だと言われました。

 そして現在。いよいよ量子コンピューターが現実味を帯びてきたので、もちろん「宇宙は量子コンピューターだ!」と言われるようになってきました。ちっとも変わりませんね。

 でも、いままでと違うところが一点だけあります。もはや単なるたとえではなくマジだって事です。

 全てに目配りしたバランスの良い本でした。『宇宙を復号する』に近いですが、初心者にもより優しいです。ちょうど前の記事で取り上げた実効複雑度に関する話も少しですが出てきます。

おすすめ類書

おまけ

 プログラムつながり。

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2008 11/12

度胸星 1 (1) (KCデラックス)

 黒人大統領のエントリでtikaranoさんに教えていただいた。山田芳裕は最近『へうげもの』がかなり好みなので期待はしていたが、さらに想像を遙かに超えて面白かった。漫画に関してはそれなりにアンテナを張っているつもりだったのに、これを今まで読んでなかったとは大不覚。

 かなり徹底した取材に基づいたと思われるリアリティのある部分と、漫画らしい極端な誇張の部分の配分が絶妙。そこはへうげものにも通じる。打ち切られて未完なのは残念極まるが、それでもなお自信を持っておすすめできる。

 具体的な内容についてはネタバレになりそうなのであまり触れないが、直接バレない範囲で指摘しておくと、この作品に影響を与えていると思われる重要な元ネタが2つある。ひとつは萩尾望都の『11人いる!』。

 もうひとつは中学生の時大変お世話になったエドウィン・ A アボットの小説『フラットランド』(多次元・平面国―ペチャンコ世界の住人たち)。次元の違いというモチーフで社会風刺というテーマを扱った傑作SFである。最近『ワープする宇宙』で言及されたので多少知名度が上がったかもしれない。

 別作者だが続編もある。(多次元・球面国―ふくらんだ国のファンタジー)こちらも、さすがに同等とは言えないが面白かった記憶がある。

おすすめ類書

おまけ

 宇宙開発→月まで届け

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2008 1/12

宇宙の定数

 物理定数を主軸に据えた本。分野は『宇宙のランドスケープ』に近いが、過去の歴史も面白い。

 まだしっかり確立している話ではないようだけど、実際に微細構造定数が変わっていることを示唆する具体的な観測があるというのは初めて知ったかな。かなりおすすめ。

 ジョン・D・バロウの本はどれも面白い。

おまけ

 変わるものと変わらぬもの。

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