2016 7/1

『研究不正 – 科学者の捏造、改竄、盗用』★

 黒木登志夫著。流行り(?)もの。いいんじゃない?

『ザ・セカンド・マシン・エイジ』★

 エリック・ブリニョルフソン著、アンドリュー・マカフィー著。ありがちな話題と内容だけど。これも流行りもの。

『記憶に自信のなかった私が世界記憶力選手権で8回優勝した最強のテクニック』★

 ドミニク・オブライエン著。興味深くはあるけど「曲芸」でしかないかもねえ。

『坂の途中の家』★

 角田光代著。妻経由。これも小説として面白いというより女性(母親)心理としてなんか参考になる。

『スターティングGo言語』★★★★

 松尾愛賀著。Go言語けっこう好きになれそう。プログラミング経験者のGo言語最初の一冊としておすすめ。

『競争優位で勝つ統計学 —わずかな差を大きな勝利に変える方法』★

 ジェフリー・マー著。面白そうな話題なのに、やや散漫。

『こじらせない離婚』★★★★

 原口未緒著。女性視点。どこかで著者の記事を見て。離婚する気なくても非常にいいこと書いてる。

『プログラミング言語Go』★★★

 Alan A.A. Donovan著、Brian W. Kernighan著、柴田芳樹訳。訳者のブログ経由。同著者の有名なC本同様、内容はいいけど取っつきにくい雰囲気。『スターティングGo言語』の方を先にどうぞ。

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2010 1/10

切除されて

 ここしばらくヒューマン・ユニバーサルの話題を並べていたのは何故かというと、ちょっと前*1に見かけた一連の女性器切除の話題に関して、一言だけ触れておきたいと思ったから。

  1. 女性器切除
  2. ちょっと待って、「女性器切除」の話題! – キリンが逆立ちしたピアス
  3. 割礼儀礼の現場から Circumcision

 1の匿名のような素朴な意見は、もちろん2のような批判を免れえない。

 だが「女性器切除と一括りに呼ばれるものの中にも多様性がある」とか「現地女性の意見も様々だ」なんてことは百も承知の上で、3のような素朴な相対主義も、もはや支持しえない。

 現代の医学・人類学・霊長類学が明らかにしつつあるのは、女性の陰核や性感は、男性のペニスやリビドーの副産物などではなく*2生物学的にも社会的にも重要な武器のひとつ*3だということ。

 またさらに、陰核切除などの慣習にも、これ*4に代わるべき説得力のある説明はなく、別の脈絡では意味をなさない。この慣習を「女の割礼」――加入儀礼として男の包皮を切除するのと並ぶ慣習――と呼ぶことで説明してしまおうとするのは、あまりにあからさまな人類学的婉曲法である。このような説明はあてにならない。文化的な諸観念は、陰核の除去手術や陰唇の縫合(陰部封鎖)を行なって女の解剖学的構造を作り変えようという直截的な努力の上塗りにすぎない。それぞれの処置が男と女に対して及ぼす影響は根本的に異なっているのである。男の割礼は性的能力にきわだった影響を与えない。しかし、陰核切除は性的快楽を減少させる効果的手段である。

(サラ・ブラファー・ハーディー『女性の進化論 』)

 すでに多くの人が指摘していることだが、あらゆる意味で*5陰核切除を含む「女子割礼」に正しく相当する「男子割礼」は、包皮切除ではなく亀頭切断である。

 もちろんそんな男性にとって都合の悪い「文化」など、非難する・しない以前に、どこにも存在しない。何が文化かを決める権力は、常に男性が握っているからだ。*6

 (極端な)文化相対主義が徐々に批判に耐えられなくなってきた以上、人権の概念の方を大きく書き換えるのでない限り、少なくとも「男子の包皮切除が非難されないのは欧米中心主義だ」などという類の言説は、もはや批判に耐えられない。

 「じゃあどうすんの?」という話になるのだけど、今回の絡みで読んで一番バランスが取れていると思ったのは、流石に専門の文化人類学者らしいこちらのエントリ。

 心理学ではよくある話*7だが、実際には大したことがないものを魅力的に見せるのに、上から頭ごなしに禁止するより優れた方法はない。人間はただ禁止されているという理由だけで毒薬でもなめる。

 このような心理的傾向は、ほぼ間違いなく優位者の操作に対抗するために進化してきたものであろうから、一概に否定もできない。ただ、分かっていてそういう方向に追い込むなら、追い込んでしまう側には責任がある。

 仮に女性器切除の廃絶だけを目標とするにしても*8それを実現するベストな手段はおそらく、女性器切除への関心などおくびにも出さず、ひたすら現地の女性に対するエンパワーメントを進める、というようなものになろう。

 当然、このような見方を受け入れるならば、長い間、多くの女性に生じる現実の被害を、積極的に見て見ぬふりをすることを要請することになるわけで、そのことの倫理性は大きな問題になるであろうが、それはまた別の話。

*1:すでにちょっとどころではない前だけど。
*2:男性の乳首が、おそらく女性の乳首の単なる副産物であるようには。
*3:何も特別な意味ではなく、単に脳や目や手足がそうであるように。
*4:女性の社会行動・性的戦略を制限して男性の父性を確実にすること。
*5:相同器官であるという生物学的な意味でも、実際に果たしている生理的・社会的機能の上でも。
*6:完全な女権社会は、地球に未だかつて実在したことはないと思われている。いわゆるアマゾネスの伝説は、現代人にとってのビキニアーマーの女戦士が登場するアニメ同様、男性の男性による男性のための性的ファンタジー以上のものではなかったであろう。(念の為に断っておくが、だからいかんと言ってるわけではないよ。性的ファンタジー大いに結構。現実とごっちゃにしなければ。)
*7:『影響力の武器』か何かにも出てきたと思う。
*8:もちろん「だけ」を目標にする必要などないだろうが。

関連書籍

おまけ

 亀頭とか書ける機会はあまりなさそうなのでこの際遠慮せず。

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2009 10/19

「ハリー・ポッターと死の秘宝」 (上下巻セット) (ハリー・ポッターシリーズ第七巻)

 固有名詞のセンスが半端じゃない時点で結構面白いだろうということは確信していたのだが、最近ようやく最終巻まで図書館で借りられるようになってきたので、全部読んだ。

 どこかで誰かが「魔法界はアムネスティの調査で100位以下になりそうだ」とか書いているのを見て笑ったおぼえがあるが、確かにそんな感じ。大臣の独断で容疑者を処刑したりしちゃうし。

 機会均等の原則はしっかり守ってホグワーツの創設者も2/4は女性。だけど、重要なのはグリフィンドールとスリザリンだけで、ハッフルパフとレイブンクローは空気*1。過去も現在もどこまで行っても最後は男と男の一騎打ち。

 「黒人が出てこねーぞ」とかヤンキー*2どもがうるせえのでキングズリーを出してやったぜ。おまけに最後には魔法大臣にしてやんよ。これで文句ねえだろオラ。

 チャンだかチョンだかいう東アジア系の女は、キスぐらいなら許してやるけど、すぐ裏切りやがるから恋愛対象としては間違った相手。

 ああ、このいかにもイギリスっぽい慇懃無礼さがたまらない。物心ついた頃からこれ読んで育つ子供たちは、どれだけ素晴らしくねじ曲がった物語を生み出すだろうか。楽しみでたまらん。

 ところで、基本的に常に悪役好きな私なのに、ヴォルデモート卿には全く食指が動かなんだ。なんでだろう? 一人称が「俺様」なのを含め、全体になんとなく小者っぽいからだろうか。

*1:そもそもこの二人が女性(魔女)だというのは相当後になるまで気がつきもしなかったぞ。
*2:もちろん不良じゃなくてアメリカ人の方ね。

おまけ

 魔女つながり。

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2009 9/14

ペルセポリスI イランの少女マルジ

 イランの裕福でリベラルな家庭に生まれた女性の自伝的マンガ。これは最高に面白かった。つべこべ言わずにとにかく読め。この面白さは文章では伝えづらい。

 雰囲気を見たければ映画版のトレーラーを。映画は未見だがなかなかよさそうだ。実際はトレーラーの印象よりもシリアス成分多めである。

 2巻も大急ぎで借りてきて続けて読んだが、1巻と比べるとあまり面白くない。1巻だけでもちょうど区切りが良いので2巻は省略するのもありか。

 同作者の『刺繍』もついでに読んだ。イラン女性たちが集まって結婚や性にまつわる愚痴や噂を延々と続けるマンガ。面白いかどうかは人によるだろうが、こんな話めったに聞けるものではないのでどんな人でも一読の価値はあると思う。

おまけ

 ”ちびマルジちゃん”の検索結果 5 件中 1 – 5 件目 (0.07 秒)

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2008 8/8

快楽電流―女の、欲望の、かたち

 現在、私たちのまわりには、〈性〉に関する幻想の、数多くの鏡のカケラが散らばっている。そのうちの一片には全てを打ち破る愛の物語があり、また別の一片には徹底した支配・服従の物語がある。こちらには貞操の物語があり、あちらには快楽の物語がある。

 かつてこれらの物語はそれぞれの鏡にまとまり、秩序だって、映すべき特定の人々を待っていた。しかし、今、それらの鏡はバラバラに壊れ、それぞれのカケラが、別のカケラの光を映して乱反射する。

 時にその一片を拾ってそこに移る景色をなぞり、時にいくつものカケラから図像の輪郭を復元し、それから図像のゆがみを辿って排除すべき切片を、注意深くより分ける――この、〈性〉という幻想のカレイド・スコープ(万華鏡)の中で、そんなことがどれほど有効なのかはわからない。ひとつの図像を写し取ってみた途端、それはもうすでに形を変え始めるかもしれず、ある図像はもう、骨董品としての価値だけのためにそこに飾られているのかもしれない。それによしんば、このカレイド・スコープの中の全ての物語を解読できたところで、人はそれから完全に自由になれるわけではない。

 だが、〈知る〉ことはそこから身を引きはがすための第一歩だ。私たちはすでにその探求の過程で、ありうべき新しい物語のほんのカケラなりと、見つけだすことができるだろうか?

 なんとも説明しづらい内容。タイトルから想像されるよりかなり真面目。ちょっと文学的なフェミニズム論みたいな感じ? いや、それでは全然表現できてない気がする。いわゆる普通のフェミニズム本ではない。上の導入部を読んでもらえば少しだけ雰囲気が掴めるかも。とにかく、ものすごく面白かった。

 東電OL殺人事件は外国人容疑者に対する扱いの問題としては知っていたけど、そんな側面もあったなんて夢にも知らなかったのでかなり驚いた。あと当然ながら、真面目なりにバリバリ18禁の内容を含むのでお子さまはご遠慮下さい。

おまけ

 男と女。

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