2016 1/25

『大脱出――健康、お金、格差の起原』★

 アンガス・ディートン著。ノーベル賞経由。とりわけ新しい知見はなかったが、いい。

『数学の大統一に挑む』★

 エドワード・フレンケル著。NHK経由。ちょっとクセがあるが面白い。

『惡の華』★★

 押見修造著。レンタルで全巻一気読み。アニメ未見。前半の変態大戦争は結構面白かったが、後半は狙いすぎて逆にありきたりみたいな。

『彼岸島』★★★★

 松本光司著。みんなお馴染み吸血鬼ギャグ漫画。自分は昔から立ち読みしてたが、今回なぜか妻に刺さって、改めてレンタルで全巻一気読み。

『0ベース思考—どんな難問もシンプルに解決できる』★★

 スティーヴン・レヴィット著、スティーヴン・ダブナー著。『ヤバい経済学』コンビ。それにしては普通か。

『暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス』★★

 結城浩著。みんなお馴染み結城先生。

『仮想通貨』★★

 岡田仁志著、高橋郁夫著、山崎重一郎著。ようやくビットコインとかIT・ギーク界隈以外でも聞くようになってきたような。ビットコインの仕組みを少し詳しく知りたい人におすすめ。

『夢の守り人』★★★★★

 上橋菜穂子著。シリーズ3冊目。前2冊には微妙に劣る気がするが、それでも一級。

『紙の月』★★★★

 角田光代著。妻経由。小説としてすごく面白いかというと迷うが、なんか女性心理というか買い物依存症というか、色々理解の助けになった気がする。

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2009 9/26

暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで

 アラン・チューリングの名誉回復について。彼の名で知られている有名なものは主に三つある。

 チューリング賞は計算機科学最高の栄誉とされている賞だ。

 チューリングテストはAI分野において、あるいは知性とは・意識とは・思考とはなんぞやという哲学の分野において、汲めども尽きぬ問題を生み出す有用な思考実験であり続けている。

 チューリングマシンは現実のコンピュータが作成される以前にその理論的基礎を固めた。現在のところこの世のあらゆるコンピュータ――あなたが今ここを読むために使っているパソコン・携帯電話を含む――は、すべてチューリングマシン(の物理的特性に制約された不完全なサブセット)である。

 またチューリングマシンによる計算の抽象化の成果には不完全性定理の最も洗練された形が含まれる。たとえば我々現代人が「プログラムに絶対にバグがないと確信することはできない」などのいくつかの命題に自信を持っていられるのは、彼のおかげだ。

 チューリングは第二次世界大戦ではドイツ軍のエニグマ暗号解読に中心的な役割を果たしたにも関わらず、同性愛者だったために自殺に追いやられてしまう。このあたりはサイモン・シンの『暗号解読』がよくまとまっているのでオススメする。1箇所だけ引用しておこう。

 アラン・チューリングもまた、世間の認知を待たずに死んだ暗号解読者の一人だった。英雄として歓呼されるどころか、チューリングは同性愛者として迫害を受けたのである。一九五二年、自宅に強盗が入ったと警察に届け出たとき、チューリングはうかつにも自分か同性愛者であることを漏らしてしまった。警察は一も二もなく彼を逮捕し、「刑法一八八五年改正法第十一条に違反する重大な猥褻行為」の罪に問うた。裁判のようすや有罪の判決は新聞ネタとなり、チューリングは公に辱めを受けた。
 こうしてチューリングの秘密は暴かれ、彼の性的嗜好は公衆の知るところとなった。イギリス政府は彼のセキュリティークリアランス(国家機密などを扱うための人物証明)を取り消し、チューリングはコンピューター開発関連の研究プロジェクトで働くことを禁じられた。精神科医にかかることを強要され、ホルモン治療を受けさせられて、チューリングは性的不能となり、また肥満体になった。それから二年のあいだ、彼は重い鬱状態にあった。一九五四年六月七日、チューリングは青酸カリ溶液の入ったビンとりんごを一個もって寝室に入った。十六年前、彼は悪い魔女の呪文を歌うように口ずさんでいた――魔法の秘薬にりんごを浸けよう、永遠の眠りがしみ込むように。そして今、彼は自らその呪いにかかろうとしていたのだ。チューリングはりんごを青酸カリに浸けると、何口かかじった。こうして、暗号解読における真の天才の一人は、わずか四十一歳にして自ら命を絶ったのである。

(サイモン・シン『暗号解読』P278-279)

 この件に対する公的な名誉回復がやっと行われたというのが冒頭のニュース。後で他の話と関連させて取り上げる機会があると思うので記録しておく。

おまけ

 暗号?つながり。

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2006 10/18

暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで

 題名通り暗号の古今東西を扱った本。著者は以前紹介した『フェルマーの最終定理』のサイモン・シン。

 フェルマーの最終定理ほどではなかったがやはり最高に面白かった。暗号について何か一冊だけということなら迷わずこれを薦めることになるだろう。

 特に公開鍵暗号の技術はインターネットを利用している人の多くがそれと意識することなく日常的にお世話になっているはずであるし、知っておいて損はない分野である。

 それにしてもほとんどが知っている話のはずなのにものすごく面白く読めてしまうのはなぜだろう。『フェルマーの最終定理』でもそうだったが、単に難しい内容をわかりやすいようにかみ砕いて説明しているというだけでなく、ちょっと大げさに言えば人間愛とでも言うべきものまで伝わってくる。科学啓蒙書としてまったく理想と言ってもよい。

 もしかしたらこのサイモン・シンという人はアシモフグールドにも匹敵するのではあるまいか。『ビッグバン宇宙論』も読んでみなければなるまい。

おまけ

 コード違い。

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