多くの蛇足が玉に瑕 『風来のシレンDS』

不思議のダンジョン 風来のシレンDS

 うーん、やはり神はそうそう降りて来ないから神なのでしょーね。期待を集めた『風来のシレンDS』。一部のローグライクフリークからは神の作りしゲームとまで呼ばれる『風来のシレン』(SFC)のリメイクです。

 私も一応掛軸裏99Fを達成したこともあるシレンジャーの端くれなので一も二もなく買って遊びましたが、元がほぼ完璧なだけに追加された要素がことごとく蛇足に見えてしまいます。

 2ちゃんねる等でまとめられてますが、SFCをやりこんだヘビーユーザーが感じる不満点は概ね一致するようです。

  • 掛軸裏や食神にレベルが持ち越されるようになったわりに持ち込み完全不可のダンジョンが増えていないこと
  • 逆用もできなければ防御策もない身も蓋もないペンギンの能力
  • 呪いの仕様変更
  • ろくに考えずにダジャレ放棄したと思われるベル系レベル4のネーミング「ショーパン」

 などがやり玉に挙げられています。

 ゲイズの催眠の凶悪化もそうです。ただでさえ催眠を使う確率が大幅に上がっている上に、もっとまずいことが2つも重なっています。1つは行動の前に向いている方向さえ変わってしまうことがあることです。

 勝手にアイテムを使わされても、使った効果(主に杖・ドラゴン草等)によって止められることがあるというのが重要な安全弁なのに、それがなくなってしまったので冗談抜きで「ずっと俺のターン!」状態になっています。

 ここまでは単なるバランス変更で、凶悪化したからくらわないようにもっと注意を払うべき、と言えないこともありません。しかしそれと同時に山彦の盾が消滅してしまったのは致命的です。

 ゲイズの催眠や骸骨系の魔法は普段とても辛い攻撃だからこそ、跳ね返って相手に向かうようになったときにカタルシスが生まれるのです。

 「自分の催眠術で眼を回すスーパーゲイズ」や「自分の魔法で肉になってしまうがいこつ魔王」等は彼らのキャラクター作りの重要要素でもあったわけです。

 それを放棄するからには、それを埋め合わせるだけの利益がなければならないと思います。しかし、その利益は今のところどこにも見あたりません。

 確かに「盾の防御力が高くなって山彦も合成されたら何も怖い物がなくなって面白くない」という意見は昔からありました。実際にはオドロとかチタンアーマーとかアークとかイッテツとか他にも危険な要素はありますが、ある程度妥当な指摘と思えます。

 しかし、それが問題だと思ったのであれば、単純に「山彦の盾は最終問題のある程度深層にのみ登場する」と調整すれば済んだことです。

 わざわざ山彦の盾を廃止して追加ダンジョンの深層にゲイズの盾・プリズムの盾を改めて用意するという措置はまったくもって意味がわかりません。

 チキンの経験値が1になっていることに関してはもうちょっと複雑です。SFC版ではチキンの経験値は200です。マスターチキン(400)の半分あります。

 このことはマスターチキンはちょうどチキンにレベルダウンしないように倒すと経験値がお得です! だからうまくマスターチキンのまま倒せるようにダメージ調整しましょう!というサブゲームを構成しています。

 確かにチキンの経験値を減らしてマスターチキンとのギャップを大きくするのが妥当に見えます。よって今回の変更に至った思考は理解できます。

 しかし、これもまた今まで通りの半分で十分だったのです。たとえ399だろうが200だろうと好きこのんで経験値を減らしたいプレイヤーは普通はいないのですから。1にしまってはダメなのです。なぜだかわかりますか?

(どちらかのシレンのプレイ経験がある人は先を読む前に考えてみてください。)

 チキンはシレンに対して完全に無害なまま走り回るキャラです。生かしておけば敵の出現枠を占有します。通路を引き返してくることによって他の敵の存在を察知することができますし、間に挟んで壁として使ったりできます。

 チキンの経験値が200あれば、逃がして役立てるか倒して経験値を得るかの選択肢が存在し、それがまた別のサブゲームを構成します。

 しかし、1となるとその選択肢は消えます。倒すための木の矢を消費する価値もないので生かしておかない理由がなくなるのです。

 1つのサブゲームを調整する過程で、気づかないうちに他のサブゲームを完全に潰してしまっているわけです。

 これは文章にすると難しいことを言っているように見えるかも知れませんが、SFC版のシレンを普通にプレイした経験があれば直感的にわかるはずのことです。

 これに気づかない――気づいていてこうしたならもっと悪い――ということは、単純に担当者がSFC版をあまりプレイしていないのではないかという解釈しかできません。

 トラバサミの罠が自主規制されて影縫いなどというものに変わっているのもそうです。ローグライクゲームとしての完成度と並ぶ、シレンの魅力の大きな柱の1つが、これ全身不謹慎の塊と言っても過言ではないような落語的なセンスに溢れる世界観でしょう。もっとずっと危険そうなネタが全部そのままなのに、変なところで自主規制しないで欲しかったです。

 もっともこれらはあくまでSFC版に対して蛇足であるという“玉に瑕”のキズ程度であって、一本のゲームとしては十分過ぎるぐらい面白いことには変わりありません。私もテーブルマウンテン一発挑戦の時は相当に楽しめました。

 64もアスカもやっていない私はインターフェースや操作系・ウェイト等は全然不満に感じませんでしたし、ひどい出来とまでは思いません。シリーズを初めてプレイするという人には迷わずおすすめできます。

 ただ私にはその瑕が耐えがたいのは確かです。「無限増殖が封じられた最終問題はSFC版より面白い」という声もありますが、シューベル肉屋等の制作者さえ思いもよらなかったであろう遊び方をも生み出した“神”はこのDS版には宿っていないと感じられて、すでに最終問題を出すまでやる気力が失せてしまいました。

 私は現在でもSFC版のプレイ環境を残しているので、結局SFCを引っ張り出してきてプレイすることになりそうです。携帯機でシレンができるというメリットは捨てがたくはありますが、DSで魅力的なソフトは他にも沢山あるのでDS版は売却してアスカに当ててみます。

 アスカは口コミでの評価は高かったもののハードの問題でプレイできていなかったのです。今回の件でWin版になっていることを初めて知ったのでセブンイレブンで注文してみました。約1880円。やすっ! 売却益を当てるどころかお釣りが出そう。

コメント

  1. GATO より:

    DSでシレンデビューしました

  2. 木戸孝紀 より:

    >鯛
    アスカやってるけど面白いね。

  3. 木戸孝紀 より:

    >鯛
    洒落?
    >天さん
    私はむしろこれで初めてずっと俺のターン! の元ネタ知りました。

  4. より:

    元が完璧だった分、変更が悪い方向に転んでしまったんですね
    私が知ってるのは「月影村」と「トルネコ3」だったので、問題なく楽しめてます。
    しかし、ゲイズが「ずっと俺のターン!」なのは言いえて妙です。(笑

  5. より:

    オドロ恐ろし過ぎ。

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