2013 4/9

(本文とは無関係)

 キプロスの預金封鎖のニュースを説明するための思考実験。独自通貨を持つある国の政府が、いま世界に存在するのと同額のお金を発行するとしよう。

 物理的存在としての紙幣に価値はないから、輪転機が回り終わった時点で、2倍の量が存在するようになったこのお金の価値は半分になっていなければならない(100%のインフレ)。

 そして今や全紙幣の半分が政府の手元にあるので、これは事実上、世界中のあらゆるお金の半分を政府が税金として強制徴収したのと同じことである。

 銀行や家庭に兵隊を派遣して、物理的にこれをやろうとすると、とてつもないコストと社会不安を巻き起こすことは必至であり、そうしてもなお、大変不完全かつ非効率にしか目的を達成できないことが確実である。キプロスで起きたことはこちらに近い。

 対して、インフレ税では、偏屈な資産家が山に埋めたまま死んでしまい、いまや人類の誰も知らないお金にまでも、魔法の手を伸ばしてきっちり課税したのと、結果的に同じ効果をもたらす。日本で起きたことはこちらに近い。

 金融緩和というのは大雑把に言えば「お金を大量に刷ります」ということ*1であり、これによって円は安くなり、インフレを通じて国の債務は相対的に軽くなる。

 2012年末からの20%程度の円安は、世界規模で見れば、日本円の預金者がみんな預金封鎖されて20%程度が税金として徴収されたのとそう変わらないはずだ。しかし社会的混乱は、少なくともキプロスのようなそれは、起きていない。

 キプロスも独自通貨でさえあれば、同じことができたはずなのだ。この差がクルーグマンとかがよく言っているユーロ(≒独自通貨を持たないこと)の問題点だ。理論としては前から知っていたはずなのだが、こうして実例で考えるとよくわかる気がする。

*1:ひどく単純化していることは承知の上で言っている。リフレ政策自体には賛成だ。

by 木戸孝紀 tags:


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