ラノベ補強計画の一環として西尾維新に再チャレンジ。以前カタカナ8文字のシリーズに挑戦しかけ、数ページも耐えられずに投げた記憶があるが、こっちのシリーズは読めた。
時事ネタ・他作品ネタ・メタネタが多いのが予想外だったが、この独特の言語センス・ギャグセンスは嫌いではない。
基本的に最初から最強で、都合のいい女の子に囲まれ常時セクハラしまくり、いい人だというだけで好かれまくる。男性キャラは基本的に性的競合にならないおっさんしかいないし。
ああこれぞまさに男のロマン(ストレートに自分の夢と言え的な意味で)。おそらく主要対象読者であろう中高生男子に受けるのは、とてもよくわかる気がするね。
前回の『とある魔術の禁書目録』とあわせて、ラノベというのはこういうものなのか、というのも少しだけ見えてきたかもしれん。
シリーズ内での私的面白さランキングは、『化物語』>>『偽物語』>『傷物語』。試しに、という人は発売順に『化物語』から始めるのがよさそう。アニメは未見だが、ニコ動のMAD等でちらっと見た限りでは、悪くはなさそうな印象。
おまけ
ED曲のsupercellってメルトとかの人なのね。
by 木戸孝紀
tags:ラノベ 書評 小説 西尾維新
『星を継ぐもの』は最近しんざきさんもおすすめしてたように、SFオールタイムベストに数える人も多い傑作。
私もオススメできるのは、まず『星を継ぐもの』を含む「巨人たちの星」シリーズ3部作。ただし、このシリーズは後に行くごとに急速につまらなくなっていく。(最初が面白すぎると言った方が正しい。)
次にやはり『創世記機械』。『未来の二つの顔』は、今見るとやや古くさいが、個人的に星野之宣が好きなのでコミック版を入れておく。
なお巨人たちの星シリーズは、今後別の文脈でごくわずかに触れる機会があるかも。
おまけ
月SFつながり。
by 木戸孝紀
tags:SF ニュース 小説 訃報
『新世界より』がめちゃくちゃ面白かったので、作者つながりで読んでいた、貴志祐介特集。比肩するほどのものはなかったけど、まったくの外れもない。
『天使の囀り』★★★
これだけは寄生虫つながりで前から読んでいた。結構好き。ついでに『パラサイト・レックス』は寄生虫関係では随一の超おすすめ本だから、ぜひ読んでおいてほしい。
『青の炎』★★
読んだことがあるのは『天使の囀り』だけかと思っていたが、昔ひぐらしの祟殺し編の元ネタのひとつと聞いて読んだことがあったのを思い出した。細かい記憶は残っていないが、つまらなくはなかった。
『十三番目の人格(ペルソナ)―ISOLA』★
デビュー作らしい。ネタバレになるから詳しくは言えないけど、当ブログ読者ならご存じであろうあの人が出てきてワロタ。
『硝子のハンマー』★
不可能殺人発生! ISOLAの後だったからSF展開になるのかと思ったら、意外とちゃんと推理ものしてる。面白さは普通。
『クリムゾンの迷宮』★★★
バトロワ系。読んでいるうちはかなり面白いが、読み終わってしまうと、あまり残るものはない感じ。罠アイテムの元ネタは手塚治虫の短編だと思う。タイトルも収録されている本も思い出せないが。
『黒い家』★
これも面白かったが、やはり読んでいる間だけのものかも。映画は観てない。
おまけ
殺人予告発生!(1:30過ぎ)
by 木戸孝紀
tags:サスペンス ホラー 貴志祐介 書評 小説
『動物感覚』でラセンウジバエという単語が出てきたので、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアのことを思い出した。
わりと好きなSF作家で、やたらかっこいいタイトルをつける。思い出しついでに、印象が残っているものだけ厳選して紹介する。
『星ぼしの荒野から』★★★★
なんと言っても白眉は『ラセンウジバエ解決法』。この一本だけでも読んでおく価値はあると思う。映像化されているらしいが、それは見ていない。映像化に向いた作品とは思えない。
『愛はさだめ、さだめは死』★★
「美しいガイアを救うため汚らわしい人類は絶滅させちゃるぜ!」テーマの最高傑作(と私は思う)『エイン博士の最後の飛行』が収録。映画『12モンキーズ』の元ネタにもなっている。
『故郷から10000光年』★
『雪はとけた、雪は消えた』は『BLAME!』の1巻で霧亥が読んでることで有名(?)。内容はそれほど関係ない。そんなに面白くはないと思う。
『たったひとつの冴えたやりかた』★
個人的には、あまり好きではない。しかし、タイトルの有名さが群を抜いていることと、後の多くの作品に微妙な影響を与え続けていることから、抜くわけにもいかない。ざっとでいいと思う。
おまけ
by 木戸孝紀
tags:SF ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア 書評 小説
21世紀初頭に超能力の存在が確認されてから1000年後、人類は機械文明を捨て独自の精神文明の世界を築いていた……。
と書くと、なんともそそらない陳腐極まる設定に見えるのだが、実際に読み始めると1ページ目から引き込まれる。随分ひさびさに小説で時間を忘れるぐらい面白かった。
SFでもファンタジーでもありホラーでもあり、冒険活劇でもありジュブナイル小説でもある。1つ1つのネタは陳腐に見えても全体の完成度は非常に高く、娯楽と真剣さが互いを邪魔せず両立しているという点で『第9地区』観たときと近い印象を受けた。
また、ジェンダーや社会問題に対する意識とセンス・オブ・ワンダーのからめ方が、どことなくジェイムズ・ティプトリー・ジュニアを連想させる。事前情報はあまり入れない方がいいかも。
参考リンク
関連書籍
おまけ
by 木戸孝紀
tags:SF 貴志祐介 書評 小説
将来書こうと思っている「ひらがな すいしょう」問題の下地作りのため適当に選んで読んだだけ。
……なのだが、正直むかつく。文章を読んでここまで腹が立ったのは何年ぶりか。一言は表出しておかないと収まらぬ。
いまググった中では、一番近い感想はこれ。
おまけ
by 木戸孝紀
tags:ひらがなすいしょう エスペラント 言語 書評
グレッグ・イーガン『順列都市』から、後々話に使いたいと思っているところ2点を、最低限の説明をつけて抜粋。
《なにも変えない神の教会》
マリアは話しつづける。「『神はなんの違いももたらさない……なぜなら、神こそは万物がいまある姿をとっている理由だからだ』、ですっけ? だから、あたしたちはみんな、宇宙を心静かにうけいれられるってわけね?」
フランチェスカは首を横にふった。「心静かに? いいや。そう考えれば、神の介入だのなんだのいう古い考えを、きれいさっぱり一掃できるだけの話さ。それに、神を信じるための、証しや、信念でさえ不要になる」
「じゃあ、いま母さんにはなにが必要なの? そして、神を信じてないわたしには、なにが欠けてるの?」
「信仰だろうかね?」
「同語反復はきらいよ」
「トートロジーを悪くいっちゃいけない。宗教を築くなら、ファンタジイよりはトートロジーの上にしたほうがましだ」
「だけど、これはトートロジーよりもひどいわ。単に……言葉を恣意的に再定義しただけ。ルイス・キャロルの小説じゃないんだから。でなければ、ジョージ・オーウェルの。『神は万物の根拠である……その根拠がなんであれ』それは、正気の人間が単に物理法則と呼ぶものを、母さんたちは神と改名したにすぎない……それも、その単語のほうが、ありとあらゆる歴史的な響きを――人を勘違いさせやすい、ありとあらゆる言外の意味を含んでるからというだけの理由で。自分たちが古い宗教とは無関係だと主張するなら――なぜ宗教の用語を使いつづけるの?」
フランチェスカは答えた。「わたしらは、その単語の歴史を否定はしないよ。多くの点で過去と訣別したけれど、自分たちの出自も認めている。神は、人々が何千年も使いつづけてきた概念だ。わたしらがその概念を、幼稚な迷信や願望充足以上のものに洗練させたのは事実だけれど、だからといって、同じ伝統に属していないことにはならないさ」
「でも母さんたちは、その概念を洗練させたんじゃない、無意味にしたのよ! 必然的に。母さんたちは、そこに気づいてないようだけど。神にまつわる、火を見るよりあきらかなたわごとを、全部剥ぎとったんですもの。擬人化も、奇蹟も、かなえられた祈りも、なにもかも。ただ、いちどそれをやってしまったら、宗教と呼ぶ必要があるものはなにも残らないことを、母さんたちはわかってなかったようね。物理学は神学ではない。倫理学も神学ではない。なのに、なぜそれが神学だというふりをするの?」
「わからないかねえ? それでもわたしらが神について口にするのは、ただ単にそうしたいからさ。人の心には、その言葉を、その概念を使いたいという衝動が――捨て去るより、磨きをかけつづけたいという思いが――根深くしみこんでいるんだ。その言葉が意味するものは、五千年前と違ってしまっていてもね」
「でも、その衝動がどこから来るのか、しっかりわかってるでしょう! 聖なる存在が実在するわけじゃない。文化と神経生物学の――進化と歴史の、いくつかの偶然の産物にすぎないわ」
「あたりまえじゃないか。そうでない人間の特性があるのかね?」
「だったら、なぜそんなものに従うのよ?」
フランチェスカは笑った。「なにかに従うのはなぜだい? 宗教的な衝動は……宇宙から来た精神ウイルスの類じゃないよ。有形無形の意味づけをすべてとり去った、純粋なかたちでの宗教的衝動は、洗脳の結果でもない。それは、わたしという人間の一部なんだ」
マリアは両手で顔を覆った。「そうかしら? そんなことをいうなんて、ちっとも母さんらしくない」
「ものごとが思いどおりにいったとき、神に感謝したくなったことはないのかい? 力が必要なとき、神にそれを願いたくなったことは?」
「全然」
「わたしは、あるんだよ。神はなにも変えないと、知ってはいてもね。そして、神が万物の根拠なら、神という言葉を使いたいという衝動も、神の中にあることになる。だから、わたしがその衝動から力やなぐさめや意味を得るなら、その力やなぐさめや意味の根源が、神なのさ。そして、自分の身に起ころうとしていることをわたしがうけいれるのを、神が――なにも変えなくても――助けてくれるなら、そのなにが、おまえを悲しませるんだい?」
(『順列都市』上巻P138-P144)
SF作家として最新の科学知識を身につけて、政治的には当然リベラルなグレッグ・イーガンの宗教観は、『神はなぜいるのか?』のようなものにならざるをえない。
ここで作者自身の考え方を代弁しているのは明らかにフランチェスカの方で、主人公のマリアはそれを理解できない未熟な者として描かれている。
《唯我論者国家》
《唯我論者国家》の創始者ダニエル・ルベーグはこう書いた。『わたしの目標は、人間の真髄として尊ばれるありとあらゆるものを手にいれることだ――そしてそれを、すりつぶして塵にするのだ』
(『順列都市』上巻 P124)
(伝統的な意味では)神に何らの自明な価値も認めず、人間性のひとつとしてしか見ないイーガンが、それでも目標として認めうるのは、人間性のあらゆる可能性を試し尽くすことだ。
作品が違うが『ディアスポラ』のトランスミューターは、おそらくこのルベーグの目標を達成したものと考えられているのだと思う。
おまけ
そういえば最近ドナルド見ないな。三大宗教とかどこ行った。
by 木戸孝紀
tags:グレッグ・イーガン 宗教 小説 神 人間
いつぞやの表現規制の件周辺で何度かタイトルを小耳に挟んだので読んだ。
- 『すばらしき新世界』
- 『1984年』
- 『エヴァ』
- 百合(公認)
って感じか。表現規制の件で引かれた文脈はまあわかった。
でも『すばらしき新世界』『1984年』の部分はそのまんま。『エヴァ』の部分は、読んだ人はわかると思うが、「老人」って言葉の使い方とか、結局人類補完計画かよとか。
元ネタに対するプラスアルファの部分が百合以外これといってインパクトなく、単独として面白いとは思えなかった。『虐殺器官』の方が面白いのかなあ。どうしよう。
2010/05/31追記
『虐殺器官』を読んだが、やはりいまいち合わなかった。
おまけ
by 木戸孝紀
tags:SF 伊藤計劃 書評 小説 文学