2018 10/7

『知ってるつもり――無知の科学』★★★

 スティーブン・スローマン著、フィリップ・ファーンバック著。いまではそんなに珍しくない話題ではあるが、意外によかった。

『知の果てへの旅』★

 マーカス・デュ・ソートイ著。個々の話題はちょっと薄い気もするけど、よい。

『進歩: 人類の未来が明るい10の理由』★★★

 ヨハン・ノルベリ著。まあこれもいまではそんなに珍しくなくなってきた話題ではあるが、よい。

『広い宇宙に地球人しか見当たらない75の理由』★

 スティーヴン・ウェッブ著。50の理由のアップデート版。正直そこまで変わってない。前のを読んでればパスでもいいかも。

『遺品整理屋は見た!』★

 吉田太一著。孤独死関係のエッセイ集というか。ちょっと興味深い。

『馬・車輪・言語』★

 デイヴィッド・W. アンソニー著。かなり専門的。思いっきり『銃・病原菌・鉄』の装丁をなぞってる気がするけど、同じ調子で読もうとするときついかも。

『人が人を殺すとき―進化でその謎をとく』★★★★★

 マーティン・デイリー著、マーゴ・ウィルソン著。殺人に関する進化心理学の古典。古典らしくいま読むと流石に古い話題とも感じるが、古いからといって間違っているわけではない。あまり馴染みがなければ今からでもおすすめ。

『amazon 世界最先端の戦略がわかる』★★★★

 成毛眞著。IT業界人なら知っていることも多いだろうが、とても面白い。

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2008 11/15

「戦争」の心理学 人間における戦闘のメカニズム

 『戦場における人殺しの心理学』の実践編みたいな位置づけの本。前作と共通部分が多いので、普通の人は前作のみで十分かもしれない。逆に自衛隊員・警察官・SP・警備員・消防士といった職業の人は自腹切っても読むべきだと思う。

 いや……自腹というか、配られて然るべきなんじゃないのか? そもそも日本の自衛隊や警察では、ちゃんとこういう最新の研究成果に基づいた教育と訓練が行われているのだろうか? 根拠はないが絶対行われてない気がする。

 訓練による条件付けがいかに重要かということが繰り返し語られる。映画などでもよく描かれる「ミスだ。君は今死んだぞ!」という訓練は良くないようだ。実戦でも一発弾を受けた時点で「ああ俺は今死んだんだ……」と条件反射で行動をやめてしまうから。

 逆に「何発撃たれようが息の根が止まるまで動き続けろ!」と訓練しなければならないらしい。そういう点は文字通りの“戦闘”とは無縁の人間にも、教育シーンなどに広く応用ができそうだ。

参考リンク

おすすめ類書

おまけ

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2007 2/18

戦争における「人殺し」の心理学 (ちくま学芸文庫)

 うーん、これは非常に面白かった。私なりの要約。

 研究によると古今東西の兵士は想像以上に敵を殺せていない。というより殺そうとしていない。殺せても強烈なトラウマに悩んで社会不適合になったりする。それは人間には殺人に対する凄まじい心理的抵抗が存在するからだ。

 そのような抵抗を持たない“生まれながらの兵士”も1%とか2%とかそんな割合で存在し、優秀な兵士となる。しかし多くの普通の兵士に敵を殺すことができるようにするためには相当の訓練を要する。

 この抵抗はかなりの部分本能的なものであり、進化が“知らない”近現代戦では効果がなくなってくる。

 たとえばナイフで刺し殺す等の近接戦闘では非常に強いが、ライフルで遠くから狙撃する等の状況では弱くなり、レーダーに映る船に向かってミサイルを撃つとか、はるか上空から爆弾を落とすとかいう状況ではまったく働かない。

 実際にはより多くの人間を殺していることを理屈ではわかっていても「自分は殺していない」と自分自身をごまかすことができる余地があるから大丈夫なのだ。

 このように単に心理的なものであっても効果がある。たとえば人間以下・人間以外の存在だと考えようとするだけでも抵抗を弱める効果をもたらす。

 兵士が敵兵を蔑称で呼ぼうとするのもそのためだし、敵国民を残虐非道で生きるに値しない奴らだと教え込むことは単なるプロパガンダでなく歴とした軍事訓練なのだ。

 軍隊というものは有史以来少なくとも数千年の歴史の中で普通の兵士に敵を殺すことができるようにする方法を学んできた。たかだか20年前後の人生経験しか持たない新兵は赤子同然だ。

 半ばネタ扱いされているハートマン軍曹みたいな鬼軍曹の精神的・肉体的シゴキも決して伊達や酔狂でやっているわけではない。

 命令系統への服従を教えるというだけでなく、生身の人間からの剥き出しの悪意や暴力に対する免疫をつけるという意味もあるのだ。ボクシングやラグビーのような生身でぶつかり合うようなスポーツが推奨されるのも同じ理由だ。

 近年になってさらにその知識の武器庫に加わったのは条件反射の利用だ。射的の的をただの丸ではなくて本当の人っぽく見えるものにするなどだ。その結果ベトナム戦争では敵を殺すことができる兵士の能力は大きく改善した。

 しかし、当時は兵士のトラウマとそのアフターケアに関する知識はまだ不十分であった。ケアどころか逆に自国民から「この赤子殺し!」的な非難を浴びせられて、いわゆるベトナム帰還兵問題を生むことになった。現在イラク戦争でブッシュを口を極めて罵る人でも決して兵士を非難しないのはこの苦い教訓によるものだ。

 もったいないのは、最後の章のゲーム批判の部分だけ突然「本当に同じ人間が書いたのか?」と思うような思考停止的な結論ありきの議論になってしまっていること。どんな人にも盲点はあるなあ。

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