『SPY』

SPY

 テックコンパク初のプラチナ賞作品ということですが、その名誉に恥じぬ面白さです。

 タクティクスオウガへのリスペクト感あふれる渋いオープニングデモでがっちりつかみにきて、そのままぐいぐいラストまで引っ張っていってくれます。

 こういう良作をプレイしてしまうと、私が最近のゲームに興味がわかないのは、たんに歳をとって感性が衰えたわけではなく本当につまらないんじゃないかという疑いを濃くしてしまいます。

 内容についてはコンテストパークはじめすでに方々で絶賛されてますし、なによりプレイすればわかることですので私はあえて欠点につっこんでおきたいと思います。

 やはり惜しいのは戦闘パートです。最初こそアニメーションに感激しましたが、そのうちただ見ているだけの苦行に感じるようになってしまいました。

 カード選択のバトル方式で、私が思い出すのは『ドラゴンボール3悟空伝』ですが、悟空伝は弱いカードを移動などで消費して、強いカードを温存するというところで戦略性を表現していました。

 SPYの戦闘ではカードは毎ターン全て入れ替えられてしまうので、その戦略性がありません。敵のカードは悟空伝同様ランダムに出てくるため、戦術性もありません。

 プレイ中「カウンターはアタックとチャージのどちらに強いんだったっけ?」とか「あれ、今どのカードを出してたんだっけ?」と疑問に思う機会がたびたびありました。カードの種類による区別とその強弱はもっとはっきりしているべきです。

 剣戟1つに何通りのもアニメパターンを作る労力をかけられるのならば、たとえばチャージのカードを出したなら、明らかに突進しているとわかる専用のグラフィックが欲しいです。

 そうであれば「ああ突進しているところに反撃をくらったんだな」などとカードの強弱が自然と見てわかるようになったのではないかと思います。

 状態変化も種類が多すぎて最後まで憶えきれませんでした。「ヒートアップ」と「逃げ腰」の2通り程度に絞るべきだったかと思います。

 そもそも対応策が「攻撃系カードを選択する」か「防御系カードを選択する」の2通りしか用意されていないわけですからそれが限度のはずで、それ以上はわかりにくくしているだけです。

 また状態異常に合わせた対応をしたくてもそれに合ったカードが手元にないこともあり、これもある意味運任せになってしまっています。

 カードが持ち越され、さらに相手のカードを見てからそれに合わせて自分のカードを決めるようなシステムでもよかったのではないかと思います。

 もう一つの欠点は全体にスピードが遅いということです。私はずっとAlquadeLiteの2倍速でプレイしていました。

 非リアルタイム*1ゲームは作者がこれでいいと思った状態からさらに1.5倍、あるいは2倍ぐらいに加速してちょうどよくなると思います。

 マップでの歩行速度も遅く感じます。ダッシュ機能もありますが、そのダッシュを標準にしてもう一段階早い速度が欲しくなりました。

 特に気になったのは自室の扉を出てから下宿を出るまでの道のりです。ゲーム中もっとも数多く通らなければならない道なのですから、ぜひとも方向キー1つだけで、かつもう少し短い時間で抜けられるようにして欲しかったです。

 「そんな細かいこと鬼の首でも取ったように言わなくても」と思うでしょうが、同様に自室ももっと狭くてよかったはずですし、マップ構成に関して類似の引っかかりがところどころに見られました。

 一時が万事というやつです。全体としてプレイアビリティには十分気を配っている様子がうかがえるだけに惜しいと思います。逆の言い方をするならそんな細かいところにしかつっこめないぐらい完成度が高いということです。

 XPがスペック過剰で不発に終わった感があるツクール界ですが、ひさびさに文句なしにおすすめできる作品に出会いました。作品自体とは無関係ですが、サイトの制作回想録がまた面白いです。

 というのも「何かをきちんと作り上げられる人」の典型が見て取れるからです。具体的には豊富な

  • 予定表
  • コンテ
  • 設計図

 などの形で表されているもの、すなわち「計画性」です。ツクールに限らず何かゲームを作ろう、あるいは作ってみようかなー、作りたいなーと思っている方はぜひとも参考にしていただきたいです。

*1:シューティングやアクションなどスピード自体がゲームの難度に関わってくるようなリアルタイムのゲームを除いて、という意味。

コメント

  1. HJM より:

    そんなもんですかね?
    グッドエンディングが見れるまで何回も粘り強くプレイしていれば、自然と戦闘システムなどについてわかってくるし、
    ダッシュの時の速さにもなれてくると思うのですが・・・

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