グレッグ・イーガンと並び称されているテッド・チャンの短編集。個人的にはイーガンの方が好きだが、かなり面白かった。
イーガン作品に通底するテーマが「自己同一性とは何か?」だとすれば、チャン作品に通底するテーマは「絶対的に隔絶した存在といかに向き合うか?」*1というものだ。
その隔絶した存在は、作品によって、神だったり・異星人だったり・未来だったり・超人類だったり・数学だったりするけども。
『バビロンの塔』
本当にバベルの塔が建設されている世界。ファンタジー的。なかなか面白い。
『理解』
『アルジャーノンに花束を』みたいに薬で知能が激増してしまった患者の話。途中からスキャナーズの現代版みたいな超能力バトルものに。テーマはありがちだが、面白い。
『ゼロで割る』
イーガンの『ルミナス』でもあった数学の矛盾を証明してしまう話。つまらない。
『あなたの人生の物語』
七本脚のエイリアンとのファーストコンタクトに関わった言語学者が、自分の娘に語りかける。表題作だけあって一番面白い。
『七十二文字』
前成説ネタ。いまいち。
『人類科学の進化』
4ページの超短編。人間が人間以上の圧倒的知性を持つ超人類を発明した後の話。短いなりにそこそこ面白い。
『地獄とは神の不在なり』
そのまんまヨブ記テーマ。単なるパロディに留まり、あまり面白くない。
『顔の美醜について――ドキュメンタリー』
これだけ他の作品と傾向が異なる。顔の美的基準に基づく判定に係る脳の機能を一時的に停止させる技術を巡る論争を描いた疑似ドキュメンタリー。結構面白い。
*1:いわゆる『ヨブ記』テーマ。
おまけ
超人的。
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