リチャード・E. ニスベット ドヴ・コーエン『名誉と暴力―アメリカ南部の文化と心理』

名誉と暴力―アメリカ南部の文化と心理

 『みんなの進化論』で言及されていて面白そうだったので読んだ。以下は超要約。

 アメリカ南部の文化が、端的に言ってマッチョ的だというイメージは広く知られている。しかし、南部人は単に何に関しても暴力的というわけではない。自分自身や女性親族の「名誉」を守るという文脈で、特に暴力を許容する傾向がある。

 よく言われてきた「奴隷制のせいで良心が摩滅しちまったんだよ」という類の説明は、「社会制度が暴力肯定を助長することがある」という一般論として正しい部分はあるかもしれないが、南部の特殊性を説明しうるものではない。

 南部の「名誉の文化」の特殊性は、初期の移民達の牧畜生活の産物である。盗まれやすい家畜が主な財産であり、公権力に頼りにくい牧畜生活では、家畜や家族を守る暴力を持たないと見なされる、すなわち「なめられる」ことは、死活問題に繋がりやすいからである。

 かなり面白かった。実験やデータの説明もなかなか面白いのでぜひおすすめ。

参考リンク

おまけ

 牧畜と文化つながり(?)

コメント

  1. 木戸孝紀 より:

    情報どうも。面白そうです。
    読書リストに入れておきます。

    >「中世、日本人はキレやすかった!」

    という文句から、
    今度は『殴り合う貴族たち』を連想しました。

    https://tkido.com/blog/773.html

    そういえば星蓮船がらみの東方ネタまだ書けてませんね。
    どうしよう。

  2. king より:

    「喧嘩両成敗の誕生」という本に、中世日本で暴力が連鎖していく要因として、命より重い名誉意識が指摘されていたのを思い出しました。本の主題は法なので、中世日本の名誉意識がどのようなメカニズムで働いているかの分析をしているわけではないのですが、これは面白い本でした。
    http://inthewall.blogtribe.org/entry-6841f1a338b566d629a8896f70af1839.html

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