ジョージ・オーウェル『一九八四年』

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

 今年は『種の起源』出版150年だったが『1984年』出版60年でもある。そのせいなのか、『1Q84』に便乗したのか、新訳版が出た。

 これはやはり素晴らしい。結末を知っていても息もつかせず一気に読ませる。還暦を過ぎてもまったく古びず、むしろ輝きを増すばかりのようだ。こんな文学というのはそうそうあるものではないだろう。

 テレスクリーンは実現にますます近づいているし、共産主義は滅んでも全体主義の脅威は去っていない。ニュースピークの制定を望んでやまない人は、どんどん減少してはいるが、まだ無視できないほど生き残っている。

 1つだけ不満なのは、解説で、この体制において人種差別がないということをオーウェルの見通しの甘さのように捉えていること。私は、体制のための体制・権力のための権力には必ずしも人種差別など必要ないのだ、という認識は正しく、むしろ非常に先見的だと思う。

おまけ

 kamS先生は崇拝してもいい。

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