文学

文化芸術宗教

グレッグ・イーガン『白熱光』

すぐ買ったのになぜかしばらく積んでいた。読んでみたらかなり面白かった。イーガンの長編の中でも、これまで一番好きだった『ディアスポラ』に匹敵する面白さ。  あえてケチをつけるなら面白いだけ、ということか。アイデンティティとは何かというイーガン作品に通底してきたテーマがやや薄いのと、これまでと比べて若干オリジナリティに欠けるという点で『ディアスポラ』には及ばないかも。  表面的には『竜の卵』っぽいが、...
映画・ザ・ムービー

『レ・ミゼラブル』 オススメ度 10/10

とても良かった。ジャベール警部役があまり似合わなかったように感じた以外はほぼ完璧。  ミュージカル映画なので、ほとんど全セリフが歌だが、すぐ慣れる。  原作は小学生ぐらいのとき子供向けの抄訳を読んでいたく感動した記憶がある。  テナルディエの女将さんがどこかで見た顔だなと思いながら鑑賞中はついに思い出せなかったが、いま気づいた。ハリポタのアレか。 おまけ 【ニコニコ動画】【日本語字幕】スーザン・ボ...
文化芸術宗教

伊藤計劃『ハーモニー』

いつぞやの表現規制の件周辺で何度かタイトルを小耳に挟んだので読んだ。 『すばらしき新世界』 『1984年』 『エヴァ』 百合(公認)  って感じか。表現規制の件で引かれた文脈はまあわかった。  でも『すばらしき新世界』『1984年』の部分はそのまんま。『エヴァ』の部分は、読んだ人はわかると思うが、「老人」って言葉の使い方とか、結局人類補完計画*1かよとか。  元ネタに対するプラスアルファの部分が百...
文化芸術宗教

ジョージ・オーウェル『一九八四年』

今年は『種の起源』出版150年だったが『1984年』出版60年でもある。そのせいなのか、『1Q84』に便乗したのか、新訳版が出た。  これはやはり素晴らしい。結末を知っていても息もつかせず一気に読ませる。還暦を過ぎてもまったく古びず、むしろ輝きを増すばかりのようだ。こんな文学というのはそうそうあるものではないだろう。  テレスクリーンは実現にますます近づいているし、共産主義は滅んでも全体主義の脅威...
おすすめ書評まとめ

書評在庫一掃セール2009年9月版

最近読んだ本、またはずっと紹介したいと思っていた本の中から、個別エントリにするタイミングがなさそうなものを、まとめて一挙紹介。  ★は1-5個でオススメ度。人に薦める価値がまったくないと思うものはそもそも取り上げないので、1個でもつまらないという意味ではない。 『暗殺の事典』★  カール・シファキス著。『詐欺とペテンの大百科』と同じ著者。そちらほどではないが楽しい。楽しんでいいのかという話は置いと...
文化芸術宗教

繁田信一『殴り合う貴族たち―平安朝裏源氏物語』

要約すると文学しか注目されない平安貴族の暮らしだけど、実情はわりとカオスでしたという話。当たり前と言えば当たり前なのだけど、こういう幻想が破壊される感は個人的に大好きだ。  後半はだんだん似たような内容の繰り返しになってきて、一般的にはあまり面白い本とは言い難いので、そんなに積極的におすすめはしない。ものはついでだが、源氏物語については、 ふみまよう  の音読mp3と、 源氏物語の世界 再編集版 ...
科学技術哲学

エドウィン・A・アボット『フラットランド 多次元の冒険』

404 Blog Not Found:文字通り次元が違う一冊 - 書評 - フラットランド 多次元の冒険  で復刊を知りました。ここでも少し言及しましたが、私もお薦めします。子供も大人も楽しめる、数学教育としても風刺文学としても最高クラスの一冊だと思います。 おすすめ類書 おまけ  この動画シリーズもおすすめ。 【ニコニコ動画】Dimensions 第1章 2次元
ガイア教の天使クジラ

ガイア教の天使クジラ12 ビクター・ケラハー『クジラの歌がきこえる』

【第11回】 【目次】 【第13回】  いよいよ本当の3人目、真打ち登場だ。金の星社「ときめき文学館」シリーズ『クジラの歌がきこえる』を一緒に読んでいこう。ちなみに奇しくも著者は今話題のオーストラリア人。 1 クジラのかげ 「クジラさん、お願い、もう一度、すがたを見せてちょうだい。」  クレアは、はげしい風と雨の中でひとみをこらしていた。 (中略)  クレアは、夏をすごすために群れをつくって南にむ...