うーん、「知ってるがお前の態度が気に入らない」ってアスキーアートありましたよね? ちょうどそんな感想。
思い切り要約すればイスラム原理主義と中露の全体主義を警戒せよって主張であって、それにはまったく賛成なんだけど*1、言葉の端々がいちいち癇に障る。
タイトルからして『野蛮』ってなによ『野蛮』って! プロローグの冒頭はこう。
ルールをなくした歴史
わたしたちが引き継ぐことになる歴史は、二世紀あまり前から急に加速し始めた。そうして人類は狂気の時代に放り込まれ、もう流れつく先もわからなくなっていく。
……なんだかなあ。全編こんな調子で人類はどんどん野蛮化し、理性が失われ、未来は予測不能になる一方だという堕落史観と悲観的な未来観が展開されるわけだが、これは文学的な修辞を割り引いても全く共有できない。まるで平行宇宙の話を聞かされているような気がする。
プーチン政権が強権的だって? 知ってるよ! でも、それはいつと比べて? 中共の野心に世界平和が脅かされてるって? 知ってるよ! でも、それはいつと比べて?
私は今日の世界は歴史上のいつと比べてもずっとマシだと思っているし、未来の世界も今日の世界と比べればずっとマシになるだろうとしか思えない。
たとえ正当と思える目的のためだったとしても、むやみにおどろおどろしいビジョンを強調して、世界の首脳はみんな馬鹿か性悪かその両方で理性を持っているのは私だけでござい! 目覚めなければハルマゲドンはもうすぐそこだ! っていう宗教みたいなノリはどうかと思う。
むしろ日本では左派が好きそうな言い回しの文章だ。向いてる方向が左右正反対なだけで極端な理想主義という点で本当に同じだからそうなるんだろうけど。
加えてなんだかんだ言って結局は白人キリスト教ヨーロッパの地位が歴史的にずっと凋落傾向にあり今世紀もあり続けるであろうことへのひがみじゃないのかという見方もせざるを得ないのだけど、さすがに意地悪が過ぎますかね?
と、まあここでは文句ばかりになったがヨーロッパの右派の主張は見る機会が相対的に少ないだろうし、総合的には一読の価値はあると思う。
*1:ていうか西側先進諸国民で賛成できないって人がいるか?
おまけ
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