全体としては期待ほど面白くなかったが、インフレ率と失業率にトレードオフの関係があるという8,9章のところが今まで他で見たことがなくて面白かったので要旨をメモ。
労働は普通の財と違い、買えばその時点で取引が終わりではない。雇用者は労働者を完全に管理できるわけではないので、労働者はサボるという選択肢≒優位を持つ。
したがって、雇用者は労働者に対して、たとえばその労働者と同一の仕事をする産業ロボットに対して支払うよりも、いくらかイロをつけた賃金を払わなければちゃんと働いてもらうことはできない。
その結果、雇用者全体としての賃金は、純粋に需給のみから合理的に決まる水準よりもいくらか高いところで均衡し、その水準の差の部分が失業となる。
労働者は、名目賃金引下げを不公平・搾取と捉え、激しく反発・反対するし、辞める(自発的に失業する)ことさえある。雇用者もそれがわかっているので容易には行えないし実際に行わない。名目賃金には強い下方硬直性がある。
インフレ率が低い場合、実質的な賃金は、時間とともに上がっていくことになる。最初から合理的水準より高く均衡している賃金は、さらに高いところに向かって乖離し、失業は増える。
一方で、事実上賃金引下げと同じぐらいの損ではあっても、インフレに対しては、貨幣錯覚によって同じだけの反発は働かない。
つまり高いインフレ率は労働力が安くなる(≒合理的水準に近づく)ことと同じ効果を持ち、労働力が安くなれば単純な需給の法則で、労働力は多く買われる、すなわち失業が減ることになる。
おまけ
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