「無責任な純粋さ」

平気でうそをつく人たち―虚偽と邪悪の心理学

 『健康帝国ナチス』に出てくる言葉。ヘルベルト・メルテンがどういう人かも、どういう文脈で言ったのかも知らないのだが、なかなかうまい言葉だと思う。ちょっと前に読んだ『平気でうそをつく人たち』とも共通する話。

 要は「悪」と一口に言ってもいろいろあって、なにも北斗の拳のモヒカンがやるようなヒャッハー的わかりやすい悪ばかりではなく、もっと微妙・巧妙でしかもありふれた悪があるということ。

 『平気でうそをつく人たち』の内容をうまいことまとめているところがあったので引用させてもらう。

  • 邪悪な人たちは、自身の罪悪を認めない。
  • 多くの場合、堅実な市民として生活している。
  • 彼らの犯罪は隠微であり表に現れない。
  • 自分自身には欠点がないと思い込んでいる。
  • 自分自身の罪悪感に耐えることを徹底的に拒否する。
  • 自分の行為を隠蔽するために他人に罪を転嫁する、スケープゴートにする。
  • 世の中の人と衝突すると、必ず他人が間違っているために問題が起こると考える。
  • 自分自身の欠陥を直視する代わりに、他人を攻撃する。
  • 自分自身の中の病を破壊する代わりに、他人を破壊しようとする。
  • 道徳的清廉性を維持するために絶えず努力する。
  • 他人が自分をどう思うかという点に鋭い感覚を持っている。
  • 善人であろうとはしないが、善人であると見られることを強烈に望んでいる。
  • 自身の邪悪性を認識していないのではなく、その意識に耐えようとしない。
  • 邪悪な人の悪行は罪の意識から逃れようとして行われる。
  • 社会的な対面や世間体を獲得するために人並み以上に奮闘し努力する。
  • 地位や威信を得るためには熱意を持って困難に取り組むこともある。
  • 自身の良心の苦痛、自身の罪の深さを認識する苦痛を耐えることができない。
  • 自分の正体を照らす光を嫌う。
  • 自分中心的な行為が他人にどのような影響を及ぼすのか考えない。

(【読書会】『平気でうそをつく人たち』(M・スコット・ペック) 第48回桂冠塾: 市民はたさん の 普通の感覚?)

 キーワードは「嘘」と「正当化」だろうか。頭――身体の首から上という意味ではなく理性の意――がおかしいわけではないから、自分が嘘をついていることはちゃんとわかっている。

 しかし、「俺が善意で嘘をついてやってるのに信じようとしないなんて、なんという心のねじ曲がった奴だ許せない!」みたいな独特の正当化をする。

 ネット世界ではしょっちゅう見かける話だし、今の首相――とか書いてるうちに前首相になってしまいそうだが――なんかもそれかもしれない。ひとつ頭に置いておくといいのではないか。

おまけ

コメント

  1. 木戸孝紀 より:

    遅くなりましたが、プッチ神父はびみょーに違う気がします。
    他人が自分をどう思うかという点に鋭い感覚は持ってないし、
    善人であると見られることを強烈に望んでもいなさそう。

    むしろ神あるいは自分が正しいとわかっていれば、
    他人からはどう思われてもいいというような感じでは。

  2. 匿名 より:

    JOJO第六部に出てきたプッチ神父やサンダー・マックイィーンもこの邪悪な人に該当しそうですね

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