アンドリュー・パーカー『眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く』

眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く

 これも読もう読もうと思って後回しになっていた。いわゆるカンブリア大爆発についての本。

 カンブリア大爆発についてはとにかく『ワンダフル・ライフ』が有名だが、この本でのグールドは、人間の進化が偶然の結果であるという意見――それは正しいと思うが――を強調するあまり、バージェス動物の異質性・多様性を過大に強調してしまった面があり、カンブリア大爆発などと言うのはただの誇張で実際は何も特別なことなど起きてはいなかったという反論もあった。

 この意見の対立は結局のところどちらも半分ずつ正しかった。確かにこの時期だけ遺伝の仕組みに何か特別なことが起きて全ての生物のボディプランが百花繚乱して進化の可能性が試されたなどということはなかった。遺伝子レベルではあくまで予想されるような漸進的な進化がその以前から変わることなく続いていた。

 同時に、たとえ外見的にだけであっても、この時代の生物が爆発的と言ってもよい多様性を見せたこと、とりわけ軒並み硬組織を発達させたことは依然として変わりなく、しかもその理由ははっきりしていなかった。

 この本で紹介されている光スイッチ説は『外見が多様化したのは視覚の誕生によって生物の取り得るニッチが多様化すると同時に外見が死活的に重要になったから』だというもの。

 この説を取材した新聞記者が出版前日になって編集長から「本当に新説なんだろうな?」と念を押されたというエピソードが載っているように、思わず「そんなの当たり前じゃないの?」と反応してしまいそうになるほど明解で説得力のある説だ。

 かなりの確率で真実を言い当てているだろうと思える。

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