IQは知能指数ではない?

人間の測りまちがい―差別の科学史

 テレビでIQテストの番組をやっていたのでクイズ好き我が家は総出で挑戦した。全くと言っていいほどテレビを観ていない私が観たのだから相当な視聴率だったのだろう。ネットでもいろいろ反響が見られるようだが、あの番組で測っているのがそもそも知能指数でもなんでもないというを知っている人はどれぐらいいるだろうか。

 知能指数、いわゆるI.Q.はintelligence quotientの訳語でquotientは“商”の意である。なぜ商かというとIQは試験で計った“精神年齢”を実年齢で割ったものだからだ。たとえば3歳児が平均的6歳児と同じ成績を示せば200である。

 式から予想されるように一定以上の年齢の人間に対する知能商は無意味である。それもそのはず、精神年齢は今で言う精神遅滞の児童を的確に判断し教育的補助を与える目的で考え出されたものだったからだ。

 ところがそれを実年齢で割ってひとつの数値(つまりIQ)にするという一見なんでもない単純化によって重要な何かが失われるとともに望まれざるものが加わってしまった。知能を単一の数値によって直線的にランク付けするという抗しがたい魅力を持つ概念である。

 それは回り回って何十万という人間を文字通り地獄に送ることになるわけだが、このあたりの歴史は非常に面白く同時に背筋にゾクゾクするほど怖いので、興味がわいた方はぜひ『人間の測りまちがい』を読んでもらいたい。著者はバージェス頁岩を有名にした『ワンダフル・ライフ』のスティーブン・ジェイ・グールドである。

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