誰が見張りを見張るのか『ウォッチメン』オススメ度 10/10

Watchmen

 これはすごい。『ダークナイト』級のアメコミ映画なんて二度とあるまいと思っていたが、早くもそれに匹敵するレベルのものが来てしまった。超面白い。R-15相応のグロさに耐えられる人には絶対におすすめ。

 ……と言いたいところだが、予備知識ゼロでも見れるダークナイトと違ってこれはグロ以外でも大いに人を選ぶ。“終末時計”と言われて何のことかわからない人は、世代的にどうやっても楽しめないかもしれない。

 その2箇所をクリアできた人には、私からアドバイス。私は原作コミックスを読んでから行って、そうして正解だったと思うが、そうでない人はある程度予習した方がいい。

 上の評でどんな雰囲気の映画かを、とりあえず普通のヒーローものではないことを認識する。英語版Wikipediaに載っているキャラの絵を見て、こういう絵柄のアメコミの映画化なんだということを理解しておく。

 日本語版Wikipediaはストーリー全面ネタバレしているので絶対に見てはいけないが、人間関係の複雑な多くのキャラがマスクと素顔の両方で登場し、ヒーロー名と本名の両方で呼ばれるので事前の把握はほぼ不可欠。なので人物紹介の必要な部分だけをここに引用する。

コメディアン/エドワード・モーガン・ブレイク

合衆国の諜報部員として、キーン条例制定後も活動を認可されていたヒーロー。太平洋戦争、ベトナム戦争に従軍した後、各種工作を行っていた。自らの暴力衝動を満たす為にヒーローとなるような、過激で粗暴な人物である。しかし一方では信仰心が強く、神に許しを請うなどという矛盾した面も持ち、それ故に20世紀という時代のパロディとなることを選んだ。

コバックス(ロールシャッハ)からは賞賛され、ヴェイト(オジマンディアス)からは狂気の時代に生きる知恵者、オスターマン(DR.マンハッタン)さえも興味深い人物と評した。かつて初代シルクスペクターことサリーをレイプしようとした事があり、この件によってローリーからは敵視されている。

薄い布のコスチュームで怪我をして以来、星条旗をアレンジした革製のボディアーマーを使用。かつてはドミノマスクで活動していたが、顔面に傷を負ってからは革製の全頭マスクを着用していた。

ロールシャッハ/ウォルター・ジョゼフ・コバックス

違法に活動を続けている唯一のヒーロー。その行動は暴力的であり、少なくとも2件の殺人容疑が掛けられている。憎悪していた母が殺害され、その怒りをぶつける矛先として犯罪との戦いを開始した。

当初は比較的に理性を保っており、ドライバーグ(ナイトオウル)と協力してマフィアと戦っていたが(中略)狂気に陥り、コバックスから「ロールシャッハ」となった。世界を善悪の二つで割り切る事で、辛うじて受け入れている。

トレンチコートにソフト帽、白地に黒い模様がランダムに流動している全頭マスクを着用。事件以降、コートのボタンと肩ベルトは引き千切られている。武器を持ち歩くことはないが、ガス圧でフックを発射するワイヤーガンを携帯する。

DR.マンハッタン/ジョナサン・オスターマン、ジョン

核実験に巻き込まれて全身を分解された後、自力で再構成して復活した世界唯一の超人。あらゆる原子を操作できる能力を持ち、ベトナム戦争を勝利に導いた他、ソ連に対する抑止力、国防の要として活動が許可された。その技術によってアメリカの文明は大きく発展しており、完全無公害の電気自動車をはじめ、数々の新技術(現代を凌ぐほどの)が存在している。

全身が水色をしており体毛・頭髪は一本もない。額に水素原子をモチーフにしたマークを描いている。

ナイトオウル1世/ホリス・メイソン

1920年代に登場した最初期のヒーロー。正義感から警察官となり、コミックブック『スーパーマン』の影響を受けてヒーローとなった。後に世界最初のヒーローであるフーデッド・ジャスティス、初代シルクスペクター、コメディアンらと共にチーム「ミニッツメン」の創立メンバーとなる。

1960年代に「左フックだけではどうしようもない時代」だと悟って引退し、現在は自動車修理工場を経営している。彼の自伝『仮面の下で』は作中世界におけるヒーローについての、極めて重要な資料となっている。

ナイトオウル2世/ダニエル・ドライバーグ、ダン

銀行家であった父の遺産で装備を整え、初代が引退すると同時に名前を襲名、デビューしたヒーロー。子供の頃から騎士物語やヒーローに憧れていたという。ステルス機能を有する飛行船(作中世界では最も一般的な飛行移動手段である)、小型レーザー、ホバーバイク、各種防護服などを有している。

キーン条例制定と共に引退し、現在はメイソンと語らう以外に楽しみを見出せないでいた。未だ情熱を抱き、それを押さえ込んでいた為にインポテンツでもあった。引退した現在でも、コバックス(ロールシャッハ)との間には奇妙な友情関係が続いている。フクロウをモチーフにしたコスチュームと暗視ゴーグルを着用。

オジマンディアス/エイドリアン・ヴェイト

大企業ヴェイト社の若き社長。卓越した頭脳を持ち、世界で最も賢い男と呼ばれる。かつてはアレキサンダー大王に憧れてユーラシア大陸を放浪し、やがて彼が失敗した事を悟ると今度はラムセス2世に学んだ。いくら犯罪と戦ったところで核戦争がおきたらどうしようもないという事実を、かつてブレイク(コメディアン)によって気付かされた事がある。

金色のヘッドバンド、マント、胸飾りのついたチュニックというコスチュームを着用。現役時代はドミノマスクで顔を隠していた。

初代シルクスペクター/サリー・ジュピター

サリーは初めてヒーローの商業的価値を見出した女性であり、「ミニッツメン」の一員である。ブレイク(コメディアン)によるレイプ未遂や自身の結婚を機に引退し、娘にヒーローとしての英才教育を施し、彼女を二代目としてデビューさせた。引退した現在はカリフォルニアに移住し、静養中。過去の思い出に浸って生きており、またブレイクをどうしても憎めないのだという。

二代目シルクスペクター/ローレル・ジェーン・ジュスペクツィク、ローリー

サリーの娘であり、彼女によって英才教育を施され、後を継いだ。しかしローリーは親に押し付けられた道として反発しており、また母がブレイクを憎んでいない事に対して怒りを抱き続けている。引退した現在はオスターマン(DR.マンハッタン)の恋人として同棲中だが、彼の価値観を受け入れる事ができないでいる。

黄色と黒を基調としたコスチュームとロングブーツ、長手袋を着用する。

 この世界でのヒーローというのは、スーパーマン的なスーパーヒーローではなくバットマン的なリアルヒーローである。コスプレして犯罪者を捕まえるぐらいが関の山であり、世界に影響を与えるような力は持たない。

 ただ一人DR.マンハッタンだけが例外で「スーパーヒーローっつーかもはや神だろ常識的に考えて……。」というレベルの超人である。彼の出現で歴史が変わり、ベトナム戦争にアメリカが勝ちニクソン政権が続いている。

 キーン条例というのは議員の名に由来するヒーローの自警活動禁止法。コメディアンとDR.マンハッタンは政府に協力することで例外を認められている。

 これぐらい押さえておけば、間違った理解や期待をする心配なしに楽しめると思う。日本で商業的にヒットするとは思えず比較的早く上映終了するだろうから早めに行こう。予習する価値は十分にある。

おまけ

 こういう時代があったのです。

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