文化芸術宗教

星新一の夢世界

星新一『囚人』

ボンボンと悪夢 (新潮文庫)より。  ある刑務所。そこにいる囚人は彼たった一人。しかも牢の鍵は自分が持っている。 「まったく変なことになったものだ。犯罪者でもないおれが、刑務所のなかにいる。そして、きみたちは脱獄の邪魔をしないばかりか、内心ではしてくれるよう祈っている。しかし、おれは出ていかない。なれてはきたものの、時たま考えるとおかしくなってくる」  塀の外では飢えて絶望した群衆が集まって「囚人...
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岡本太郎『明日の神話』

岡本太郎の『明日の神話』という壁画が、渋谷駅の毎日通るところに来ていた。  なんと言うか、すごい。「すごい」ぐらいしか表現できない芸術の素養ゼロの自分が大変かっこ悪いが仕方ない。  説明抜きで人の視線を釘付けにする怖ろしい力がある。力がありすぎて、公開以来あの場所で正面衝突して怪我したりトラブったりした人の割合がどのぐらい増えたのだろうか? とか変なことが気になってしまう。 関連リンク 岡本太郎『...
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松岡正剛『日本という方法―おもかげ・うつろいの文化』

なんかものすっごい微妙な本。何とも説明しづらい感覚なのだが、これを読んで「感動した!」って人間とはあまり趣味が合わなさそうと思う反面、これに書いてあるようなことを「全然興味もありません。」って人間ともあまり趣味が合わなさそうな感じ。  よって、一目で「面白そう」と思った人には「必ずしも読まなくてもいいです」と言い、一目で「全然食指が動かない」という人には「まあそう言わずに読んでみて」というぐらいの...
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井筒俊彦『イスラーム文化 その根柢にあるもの』

最近ちょっとシーア派とスーフィズムの位置づけについて確認したいことがあって再読。  真面目なのとコミカルなのという位置づけで、下の阿刀田高のとセットで読むとちょうどいいか。あとは昔読んでいいと思ったこれとか。 参考リンク イスラーム文化 その根柢にあるもの - 情報考学 Passion For The Future おまけ  これはドバい。 【ニコニコ動画】沸騰都市 01 「ドバイ 砂漠にわき出た...
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暁烏敏『歎異抄講話』

先月祖父が亡くなった。その葬儀の時に初めて知ったのだが、うちの宗派は浄土宗だったらしい。  ちなみにその週の絶望先生がちょうど失って初めて気づくとか、死んで初めて知るとか、そういうネタだったのですごい偶然だと思った。  そのせいという訳でもなかろうが、私は仏教の中では浄土真宗が好きだ。歎異抄は有名で色々解説本も出ているが、私はこの本をおすすめする。 おまけ  仏教つながり。 【ニコニコ動画】僧侶の...
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バート・D. アーマン『捏造された聖書』

これはとても面白かった。超おすすめ。  しかし、邦題があまりにひどい。これではどう考えてもトンデモ本にしか見えない。finalvent氏のところで見かけてなかったら絶対手に取ってないぞ。  訳者あとがきに  本書はバート・D・アーマン著『イエスの誤引用――聖書を改変した人々とその理由の背後にある物語』(Misquoting Jesus: The Story Behind Who Changed t...
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ジョウ・シュン フランチェスカ・タロッコ『カラオケ化する世界』

カラオケなんか昔から世界中にあるもののような気がするが、本当はまだ30年やそこらしか経っていないとか。  日本で発明されたものだということは、特許取ってなかったのはもったいないとかなんとかいう話として、おぼろげに知っていたが。  あっという間に世界中ありとあらゆる場所に様々な形で取り入れられたカラオケ。これこそ真のグローバリズムか。  途中で「カラオケの本なのか売春の本なのかどっちやねん」と突っ込...
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スティーブン・J. ブラムス『旧約聖書のゲーム理論―ゲーム・プレーヤーとしての神』

えーと、このタイトルからどんな本だと予想します? たぶん「十戒が原始的なりに社会契約を成り立たせる経済ゲームのルールとして解釈可能だ。」とかなんとかそういう話になると思うでしょ。私もそう思ってた。  ところがぎっちょんキリギリス、非常に聖書直解的に旧約聖書の記述が事実だとした上で、旧約聖書の神が自分の栄光を最大限に示すゲームを行っていると考えて解釈したらどうかという話なんだわ。  これはさすがに予...