人類

科学技術哲学

ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』

今日の世界の各地域の状態には大きな格差がある。  ユーラシア大陸発祥の民族・文明・国家は先に高度な発展を遂げた。  その侵略によってアメリカ大陸やオーストラリア大陸の先住民は絶滅あるいはその寸前にまで追いやられ、アフリカ=ユーラシア大陸からの移民に取って代わられてしまった。  アジアの各地やアフリカ大陸は、植民地にされたり住民が奴隷にされたりしたとはいっても、今でも有史以来の住民の子孫が暮らしてい...
科学技術哲学

「秀でた額」の意味するもの

さて、『人イヌにあう』コンラート・ローレンツのエントリ最後の問題になんと答えただろう? 大多数の人は「背」と入れたのではないかと予想しているのだが。  私も知らなければ「背」と入れただろうと思う。日々野獣の脅威に晒されていた原始の人類の群にあってリーダーの資質として重要だったのは知恵と経験に加えて、体が大きく頑健であることであったに違いない。何か問題でも?  いや、何も問題はない。正解は「額」であ...
科学技術哲学

コンラート・ローレンツ『人イヌにあう』

「動物」と言ったとき最初に連想されるのはまずイヌかネコだろう。「刷り込み」の発見等の功績によりノーベル医学生理学賞を受けたコンラート・ローレンツのイヌネコ限定エッセイ集である。  彼の『ソロモンの指輪』は私が誰に対しても絶対の自信を持っておすすめする本の一冊である。彼の動物にたいする限りない知識と愛情の深さには敬愛の念を抱かずにはいられない。この本もイヌ・ネコが好きか嫌いかに関わらず楽しめるだろう...
科学技術哲学

ドナ・ハート ロバート W.サスマン『ヒトは食べられて進化した』

ヌーやインパラのような動物がライオンやハイエナに捕まってもりもり食われている。テレビの自然番組でお馴染みの光景である。  では霊長類――いわゆる猿――がヒョウやトラに捕まってもりもり食われている場面を見たことがあるだろうか?  私は昔この手の番組を平均よりかなり頻繁に見ていたと思うが、そんな場面は全く見たことがないと断言できる。  これは何らかの真実の反映なのだろうか? つまり猿は賢くて強いから他...
文化芸術宗教

トンパ文字

??????? - トンパ文字の衝撃  タイのクーデターの時に発見して最近読んでいるブログ*1より。  まずリンク先と、そのまた先のWikipediaを見に行って欲しい。この文字だと私の名前は右上の画像のようになるらしい。ホントか?(笑)。面白いな。  最後の「生きている」象形文字らしいが、このような文化的なものは絶滅すると二度と取り戻せないものだから、わずかでも生き残って欲しいところだ。  文化...
科学技術哲学

サラ・ブラファー・ハーディー『マザー・ネイチャー 「母親」はいかにヒトを進化させたか』

「母親」について生物学・遺伝学・人類学・動物行動学・発達心理学等のありとあらゆる科学的見地からまとめた本。  個々の分野については特に斬新というわけではないが、これほどまとまってる本は今までなかったと思う。特にフェミニズムや少子化問題について何かしら考えたいという人は必読ではないかと思う。  子殺し事件が起きるたびに母性本能がどうのという無意味な議論が繰り返されるし、中絶の是非をめぐって賛成派と反...