宗教

映画・ザ・ムービー

アナクロニズムの極致『地球が静止する日』 オススメ度 1/10

わははは! 予告編を見てこれはダメ映画だと確信していたが、ある事情でダメなのを期待して観に行った。そして期待以上にダメダメで嬉しかった! つまんなくて嬉しかった映画は生まれて初めてかもしれない。人には全くすすめられないのでネタバレは気にせず行きますよ。 (ネタバレ注意!)  リメイク元の『地球の静止する日』は古典的名作SFである。友好的異星人像を初めて真面目に描いたと言ってよい先駆的な作品だった。...
科学技術哲学

直感的分類カテゴリーにひとつだけ違反するものは流行る法則

パスカル・ボイヤー『神はなぜいるのか?』を読んでから、二つの観点が頭に残り続けている。 宗教というのは極めて現状追認的なものであるということ。 宗教的概念として受け入れ可能なものは、人間の持つ直感的な分類カテゴリーに違反するような属性が、ひとつだけ加わったものであることが多いということ。  前者は、多くの人が貧しく苦しかった過去の時代には苦難をよしとするような宗教が流行り、「人間には無限のエネルギ...
文化芸術宗教

エーリッヒ・フロム『愛するということ』

『自由からの逃走』からエーリッヒ・フロムつながりで読んだ。“愛”についての本。内容は参考リンク先が充実しているので繰り返さない。  面白いけど原著が1956年というだけあって、とても時代を感じる。今日時点で、  社会の未開人的自然崇拝的な愛からキリスト教的な愛への成長を、個人の母性的愛から父性的愛への成長になぞらえる  なんてことをやったら「二重三重の意味でPCでない!」と怒られるんではなかろうか...
ガイア教の天使クジラ

ガイア教の天使クジラ33 ジョン・C・リリー『イルカと話す日』 6/8

【第32回】 【目次】 【第34回】  前回でリリー博士に関しては最大の山場を越えたが、まだいくつか興味深い部分が残っているので『イルカと話す日』から抜き書き風に進めよう。 第一章 イルカに関する新学説の展開  イルカに関する学説を最初に記録したのはアリストテレスである。その著作『動物誌』の中で、アリストテレスはイルカに関して鋭い観察を数多く書き記しており、イルカが胎生であること、授乳すること、呼...
科学技術哲学

パスカル・ボイヤー『神はなぜいるのか?』

原題は『説明される宗教』(Religion Explained)。原題の方が内容に忠実だ。全体の趣旨は私なりに思いっきり要約するとこう。 従来の説明 宗教は説明を与える。 宗教は安らぎを与える。 宗教は社会に秩序を与える。 宗教は認知的錯覚である。  これらはみな一理あるが不十分である。このような現在「宗教の特徴」と言われて思いつくようなものは、いくつかの大宗教の特徴であるに過ぎず、宗教全体の中で...
ガイア教の天使クジラ

ガイア教の天使クジラ32 人間の思考に対して働く時代精神の制約がいかに強力なものであるか

【第31回】 【目次】 【第33回】  歴史上存在した生物の由来に関する理論は、創造論と進化論のふたつだけというわけではない。  もちろんそれは最も重要な境目には違いないが、『種の起原』が出版されたと同時にスイッチが切り替わるように前者が後者に置き換えられ、以後そのままであるかのような印象を抱いているなら誤りだ。  それはあくまで第28回で少し触れたような、我々が歴史を理解しやすくするために必要な...
ガイア教の天使クジラ

ガイア教の天使クジラ31 ジョン・C・リリー『イルカと話す日』 5/8

【第30回】 【目次】 【第32回】  ではまた『イルカと話す日』の続きから始めよう。次の部分はちょうど第29回の引用部分の直後に続くもので、ガイア教徒の鯨類に関する中心信条とでも言うべきものである。  機会があれば後で実例もお目にかけるが、驚くべきことに――そろそろ驚かなくなってきていてもらえると嬉しいのだが――今日時点ですら、これをほぼそのまま信じている人は大勢いる。  このような考察を推し進...
ガイア教の天使クジラ

ガイア教の天使クジラ30 狂っているのは我々の歴史に対する感覚であって彼らの頭ではない

【第29回】 【目次】 【第31回】  前回で、ついに“脳”を介して歴史上三つの大いなる存在の連鎖が全て一本に繋がるところまで来た。いい機会なので少し俯瞰してまとめてみよう。  いつの時代も――少なくとも何万年という長きにわたって――ずっと変わらないものがある。それは、自分と自分たちの共同体が、宇宙の中で特別の歴史を持ち・特別の使命を帯び・特別の地位を占めていると信じたい人間の心である。  それは...