わははは! 予告編を見てこれはダメ映画だと確信していたが、ある事情でダメなのを期待して観に行った。そして期待以上にダメダメで嬉しかった! つまんなくて嬉しかった映画は生まれて初めてかもしれない。人には全くすすめられないのでネタバレは気にせず行きますよ。
(ネタバレ注意!)
リメイク元の『地球の静止する日』は古典的名作SFである。友好的異星人像を初めて真面目に描いたと言ってよい先駆的な作品だった。原作のハリイ・ベイツ『主人への告別』も、映画とはあまり関係がなくなってしまっているがオチだけは印象に残るいい作品だった。
ああ、それなのにリメイクはどうしょうもないただの黙示文学。SFキリスト物語になってしまった。いつの時代も天からやってきた神の使者は「悔い改めなければ人類は亡びる」と言うことになっている。*1
そして自分の気に入らない人間ともの、時の政府・軍隊・警察・文明を滅ぼし、自分の気に入った人間ともの、動物・バッハの音楽・ノーベル賞学者・「宇宙では本当に失われるものはない、形を変えるだけなのだ」とかいう高尚な哲学を教えてやれる黒人の阿呆餓鬼・そしてもちろん自分自身は救ってくれることになっている。
終盤CGのペプシマンが鉄とシリコンのイナゴにはっちゃけて、ここまで期待通りにクソだと、1%ほど残っていたまさか『主人への告別』のオチが復活したりせんよな? という不安も消えた。00年代もそろそろ終わりに近づくかという時になって20世紀的後半的な思想を間接的に思いきり虚仮にしてくれて、私としては非常に気持ちよかったのである。
しかしSFキリスト物語といえば、女が手引きして病院から脱出させ、老学者の元へ連れていき、そこへやってきた追捕のヘリを超能力で撃退、あたりの流れはまるで『異星の客』が原作のように見える。と、いうかほんと逐語訳レベルでそっくりじゃん。パクリというほどではないが、とても偶然とは思えん。ハインラインの影響力は伊達じゃねーな。
*1:悔い改めなければならないものは元では冷戦と核戦争だったが今では当然環境破壊。
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おまけ
3:00から。メタルマックスは91年か、当時としては何もかも図抜けたセンス。
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