書評

科学技術哲学

サイモン・シン『代替医療のトリック』

うちではお馴染みのサイモン・シン4作目。テーマはもちろん代替医療。 第1章 いかにして真実を突き止めるか 第2章 鍼の真実 第3章 ホメオパシーの真実 第4章 カイロプラクティックの真実 第5章 ハーブ療法の真実 第6章 真実は重要か?  原題"Trick or Treatment"は、直訳すれば『詐術か治療か?』だが、ハロウィンの「トリック・オア・トリート(Trick or treat. お菓子...
科学技術哲学

ロバート・N・プロクター『健康帝国ナチス』

藤原辰史『ナチス・ドイツの有機農業―「自然との共生」が生んだ「民族の絶滅」』 ボリア・サックス 『ナチスと動物―ペット・スケープゴート・ホロコースト』  と合わせて“いまここにいるナチス”三部作と私が勝手に命名しておすすめしている本の中の一冊。全体の趣旨がよくわかるように序文から抜粋。  本書はファシズムについての本である。と同時に、科学についての本でもある。おそらく我々はどちらに関してもかなりの...
科学技術哲学

鹿野司『サはサイエンスのサ』

サはサイエンスのサ:ハヤカワ・オンライン(目次) サはサイエンスのサ くねくね科学探検日記(公式)  巡回先にも入っている『くねくね科学探検日記』の鹿野司によるサイエンスエッセイ集。  語り口は実にくだけた感じで、ネットスラングやマンガネタも入るし、イラストもとり・みきで軽妙な感じだけど、内容そのものは極めて正統派。上のリンクから目次を見てもらえば雰囲気は掴めるだろう。  話題の幅が広いわりに奥も...
科学技術哲学

レオナルド・サスキンド『ブラックホール戦争 スティーヴン・ホーキングとの20年越しの闘い』

スーパーロボット大戦とか宇宙戦艦ヤマトとか、そっち方面を連想しそうなタイトルだが、真面目な話。著者は『宇宙のランドスケープ』と同じレオナルド・サスキンド。  これらの単位(プランクの長さ、時間、質量)には驚くべき意味がある。それらは、存在可能ないちばん小さいブラックホールのサイズ、半減期、質量なのだ。  という記述を読んで何か反応する人には是非おすすめ。スティーヴン・ホーキングとの論争の意味だけで...
政治経済社会

トニー・ブザン『ザ・マインドマップ』

なんだか有名なので一応目ぐらい通しておくかと図書館で借りてきた。  本そのものはオススメしない。初っ端から脳が脳がと典型的なビジネス本的ノリ全開で、そういうもんだとわかってはいても好意的にはなれない。  「マインドマップは登録商標です」と高らかにうたっているので、望みどおり使ってやらん。こんなもん普通に「図」とか「絵」と呼べばいいのだ。  要するに、この本の主張は一行でまとめられる。 もっと紙に色...
文化芸術宗教

田中克彦『エスペラント―異端の言語』

将来書こうと思っている「ひらがな すいしょう」問題*1の下地作りのため適当に選んで読んだだけ。  ……なのだが、正直むかつく。文章を読んでここまで腹が立ったのは何年ぶりか。一言は表出しておかないと収まらぬ。 『エスペラント―異端の言語』読了 - じゃがの日記  いまググった中では、一番近い感想はこれ。 *1:「ひらがな すいしょう」問題自体に入るには、まだいくつかの前置きが必須なので、現時点では何...
政治経済社会

クリス・ヘッジズ『本当の戦争―すべての人が戦争について知っておくべき437の事柄』

こういう「冷静な頭と温かい心」的な感じは好き。そでより。 戦場特派員として、15年にわたり、中南米、アフリカ、中東、バルカン半島など、世界中の紛争地をかけめぐって報道してきた前線記者が、豊かな経験を活かし、戦争とはなにかをQ&A方式で事細かに示したのが本書である。 現代の強力な武器や爆発物が、命を奪うだけでなく、人間にどんな傷を残すのか。現役の兵士や退役軍人、さらには医師、心理学者などに取材を重ね...
文化芸術宗教

伊藤計劃『ハーモニー』

いつぞやの表現規制の件周辺で何度かタイトルを小耳に挟んだので読んだ。 『すばらしき新世界』 『1984年』 『エヴァ』 百合(公認)  って感じか。表現規制の件で引かれた文脈はまあわかった。  でも『すばらしき新世界』『1984年』の部分はそのまんま。『エヴァ』の部分は、読んだ人はわかると思うが、「老人」って言葉の使い方とか、結局人類補完計画*1かよとか。  元ネタに対するプラスアルファの部分が百...