書評

政治経済社会

山形浩生『要するに』

山形浩生のエッセイ集。話題自体はやや古くなりかけているが、内容は別に古びてはいない。  今回「おっ?」と思ったのはここ。  さて、たぶん実際の世の中の制度設計というのも、このゲームの「おもしろさ」を考えるのと同じことだろう。ゲームも、まったくの自由放任では成立しない。なんらかの制度(つまりルール)があって初めて成立する。でもがちがちに規制しまくっては、ゲームが硬直する。(中略)万人による、さまざま...
科学技術哲学

マーティン・ガードナー『自然界における左と右』

数学者 マーチン・ガードナー氏逝去 - スラッシュドット・ジャパン  マーティン・ガードナーの訃報を見たので、ついでに一番記憶に残っている本を紹介。  よくある「鏡はなぜ左右だけ反転させるのか?」的な話から始まってパリティ対称性の破れなどまでカバーしてくれる、この話の決定版的存在。 おまけ  左右に腰振るだけなんてゲッダンよりつまらんと思ったら意外な収穫。 【ニコニコ動画】おちゃめ機能 歌った
政治経済社会

スディール・ヴェンカテッシュ『ヤバい社会学 一日だけのギャング・リーダー』

『ヤバい経済学』の一部の元ネタになったギャング研究の回顧録みたいなもの。『ヤバい経済学』とは全然趣が違うので同じようなものを期待するべきではない。  内容そのものも興味深く、いろんな読み方ができる作品だが、すでに方々で書かれているので他に譲る。  私が惹かれるのは、shorebirdさんが言及している どこかで終わってしまうことがわかっている物語が醸し出す不思議な雰囲気 (書評 「ヤバい社会学」 ...
科学技術哲学

テンプル・グランディン『動物感覚―アニマル・マインドを読み解く』

「動物福祉」にたずさわる「自閉症」の「女性」の「共著」。……何このスピリチュアルアンテナにビンビンくるキーワードの羅列! 「おお、彼女こそ動物たちと魂の触れ合いができる天使のようなピュアな心の持ち主! 環境ホルモンまみれのマクドとかむさぼり喰ってる愚民ども今すぐ有機野菜買わないと地獄に堕ちるぞ!」  みたいな内容だったらどうしようと警戒しながら読み始めたので、意外にも大変まともな内容でものすごく得...
政治経済社会

グレゴリー・クラーク『10万年の世界経済史 』

10万年の世界経済史 - 情報の海の漂流者  で知って、面白そうだと思って借りてきた。なかなか面白かった。以下は私の超要約。 1800年ぐらいまでの地球の標準的な人類は、1人あたりで見ると、狩猟採集生活をしていた新石器時代と比べて、有意に豊かになっていたとは言えない。ずっと生存スレスレだった。 その理由は、技術の緩やかな進歩などによる資源増加は人口の増加で、気候変動や疫病による不作などによる資源減...
科学技術哲学

クリストファー・レーン『乱造される心の病』

私はADHDなどの新しい精神疾患の概念には懐疑的である(参考)が、ちょうどそれに関する話題のようだったので読んだ。  ますます疑念が強まる結果になった。読んでいて楽しい本ではないが、下の目次や抜粋を見て興味を持った人にはおすすめする。 目次 第1章 心の問題か?脳の問題か?――不安をめぐる一〇〇年の闘い 第2章 感情が病状にされる――診断をめぐる闘争 第3章 内気は病気になった!――精神医療産業の...
科学技術哲学

カール・ジンマー『大腸菌〜進化のカギを握るミクロな生命体』

カール・ジンマーの本。彼の本はどれも最高に面白いが、今回も期待を裏切らぬ出来。  E.Coliすなわち大腸菌を案内役に、生命科学の基本・その歴史・社会的意義に至るまで幅広く扱っており、かつどの部分を取ってもレベルが高い。非常におすすめ。  一般向け科学啓蒙書として唯一の欠点と思われるのは写真の少なさだろうか。口絵に何枚かだけでもいいので、大腸菌の電子顕微鏡写真とか、鞭毛を動かす分子モーターのCGと...
おすすめ書評まとめ

書評在庫一掃セール2010年4月版

最近読んだ本、またはずっと紹介したいと思っていた本の中から、個別エントリにするタイミングがなさそうなものを、まとめて一挙紹介。  ★は1-5個でオススメ度。人に薦める価値がまったくないと思うものはそもそも取り上げないので、1個でもつまらないという意味ではない。 『南極1号伝説―ダッチワイフの戦後史』★★  高月靖著。雑学として普通に面白い。「エロと戦争は文明発展の原動力」的な言い方はよくされるが本...