書評

科学技術哲学

ピーター D.ウォード『恐竜はなぜ鳥に進化したのか―絶滅も進化も酸素濃度が決めた』

本書の原題"Out of Thin Air"は、直訳すれば「薄い大気の中から[進化した]」というような意味である。薄いというのは酸素濃度のことであり、何が進化したかといえば、話題の中心は恐竜と鳥類である。しかし著者ピーター・ウォードはもっと大風呂敷を広げる。地質年代を画するような新しいタイプの生物の出現は、すべて酸素濃度の変動によって生まれたというのだ。歴史上の大量絶滅はことごとく酸素濃度が急落し...
文化芸術宗教

暁烏敏『歎異抄講話』

先月祖父が亡くなった。その葬儀の時に初めて知ったのだが、うちの宗派は浄土宗だったらしい。  ちなみにその週の絶望先生がちょうど失って初めて気づくとか、死んで初めて知るとか、そういうネタだったのですごい偶然だと思った。  そのせいという訳でもなかろうが、私は仏教の中では浄土真宗が好きだ。歎異抄は有名で色々解説本も出ているが、私はこの本をおすすめする。 おまけ  仏教つながり。 【ニコニコ動画】僧侶の...
文化芸術宗教

バート・D. アーマン『捏造された聖書』

これはとても面白かった。超おすすめ。  しかし、邦題があまりにひどい。これではどう考えてもトンデモ本にしか見えない。finalvent氏のところで見かけてなかったら絶対手に取ってないぞ。  訳者あとがきに  本書はバート・D・アーマン著『イエスの誤引用――聖書を改変した人々とその理由の背後にある物語』(Misquoting Jesus: The Story Behind Who Changed t...
科学技術哲学

マッテオ・モッテルリーニ『経済は感情で動く―― はじめての行動経済学』

タイトルに経済と入ってはいるが、あまり経済には限定されていない。かといって散漫というわけでもなく、かえって人間の認知の偏り全般についての本としてうまくまとまっているように思える。  特にこれといって新しい話はないが、この分野に興味を持つきっかけとしていいかもしれない。かなりおすすめ。 おすすめ類書 おまけ  今やWiiでSFCソフトがダウンロード販売されてる時代。 【ニコニコ動画】スーパーファミコ...
WEB情報通信

安岡孝一 安岡素子『キーボード配列QWERTYの謎』

やっと図書館で借りられたので読んだ。この話の決定版と言ってよいのではないか。  要点は、「QWERTYはタイプライターのキーが絡まないように、連続して使われる文字を離してわざと早く打てないように決められた。」というよく聞く話は、意外で強い印象を与えるというだけの理由で生き残っているデマであり、本当はそんな単純な話ではなくもっと複雑な歴史的経緯があるということ。  しかし、キーボードのような実用一辺...
科学技術哲学

シャロン・モアレム ジョナサン・プリンス『迷惑な進化―病気の遺伝子はどこから来たのか』

病気と進化の関係というのは比較的新しくかつ面白い、ホットな話題の1つ。これとかも面白いしね。この本も面白いんだけど、1章のへモクロマトーシスについての話で、  そもそも瀉血という行為が世界中で何千年も続けられてきたという事実は、この行為に何らかのプラス効果があるということを示している。瀉血療法を受けた人が皆、死んでいたら、こんな治療法はあっというまに姿を消していたにちがいないからだ。  ひとつだけ...
政治経済社会

藤本由香里 白藤花夜子『快楽電流―女の、欲望の、かたち』

現在、私たちのまわりには、〈性〉に関する幻想の、数多くの鏡のカケラが散らばっている。そのうちの一片には全てを打ち破る愛の物語があり、また別の一片には徹底した支配・服従の物語がある。こちらには貞操の物語があり、あちらには快楽の物語がある。  かつてこれらの物語はそれぞれの鏡にまとまり、秩序だって、映すべき特定の人々を待っていた。しかし、今、それらの鏡はバラバラに壊れ、それぞれのカケラが、別のカケラの...
政治経済社会

栗本慎一郎『パンツを脱いだサル―ヒトは、どうして生きていくのか』

序章 それは病から始まった 第一章 ヒトはいかにじてヒトになったのか――そしてなぜなったのか 第二章 現代に至るパンツ 第三章 同時多発テロと国際関係、あるいはグローバリズムというパンツ 第四章 ユダヤ人の起源の謎 第五章 政治陰謀としてのビートルズ 第六章 結論ヒトはどうすれば生きていけるか、あるいは生きていく価値があるのか  栗本慎一郎というのはガイア教シリーズで水生類人猿説を見ていたときに頭...