必要最低限にしか政治的に正しくないおとぎ話『ハリー・ポッターシリーズ』

「ハリー・ポッターと死の秘宝」 (上下巻セット) (ハリー・ポッターシリーズ第七巻)

 固有名詞のセンスが半端じゃない時点で結構面白いだろうということは確信していたのだが、最近ようやく最終巻まで図書館で借りられるようになってきたので、全部読んだ。

 どこかで誰かが「魔法界はアムネスティの調査で100位以下になりそうだ」とか書いているのを見て笑ったおぼえがあるが、確かにそんな感じ。大臣の独断で容疑者を処刑したりしちゃうし。

 機会均等の原則はしっかり守ってホグワーツの創設者も2/4は女性。だけど、重要なのはグリフィンドールとスリザリンだけで、ハッフルパフとレイブンクローは空気*1。過去も現在もどこまで行っても最後は男と男の一騎打ち。

 「黒人が出てこねーぞ」とかヤンキー*2どもがうるせえのでキングズリーを出してやったぜ。おまけに最後には魔法大臣にしてやんよ。これで文句ねえだろオラ。

 チャンだかチョンだかいう東アジア系の女は、キスぐらいなら許してやるけど、すぐ裏切りやがるから恋愛対象としては間違った相手。

 ああ、このいかにもイギリスっぽい慇懃無礼さがたまらない。物心ついた頃からこれ読んで育つ子供たちは、どれだけ素晴らしくねじ曲がった物語を生み出すだろうか。楽しみでたまらん。

 ところで、基本的に常に悪役好きな私なのに、ヴォルデモート卿には全く食指が動かなんだ。なんでだろう? 一人称が「俺様」なのを含め、全体になんとなく小者っぽいからだろうか。

*1:そもそもこの二人が女性(魔女)だというのは相当後になるまで気がつきもしなかったぞ。
*2:もちろん不良じゃなくてアメリカ人の方ね。

おまけ

 魔女つながり。

コメント

  1. 木戸孝紀 より:

    >4
    ゲド戦記はまだちゃんと読んでませんが、
    どこかでそういう話を聞いたおぼえはありますな。

  2. 匿名 より:

    この辺、ゲド戦記と比べると面白いよな。
    あっちは、フェミニストの作者が、わざと差別的な社会に描いている。
    あの社会に差別があることを明確に批判はしないが、当然肯定もしないわけで。

    ヴォルテモート卿のあの、周囲からの扱いに反して、にじみ出る小物臭さは何なんだろうなぁ。
    なんつーか、わりとただのアホっぽいというか。
    いや、アホならアホで開き直れば、それはそれで悪役として面白いんだろうけど、何だろう……アホであることに開き直りきれない小心者っぽさもあるんだよなぁ。

  3. 匿名 より:

    そういえば召使い妖精を必要最低限政治上正しく言うとどうなるんだフォイ?

  4. 木戸孝紀 より:

    >1
    一生懸命正しくあろうとしているところに垣間見えるから面白いんじゃないか。

  5. 匿名 より:

    必要最低限政治的に正しい物語として読めるなんて発想はなかったフォイ

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