ウィリアム・ソウルゼンバーグ『捕食者なき世界』

捕食者なき世界

 内容についてはshorebird先生にお任せ。生態学の基本としてはまともだし、面白くもあるけど、全体として作者の意見には乗れないな。最後の一文を引用。

 わたしには、今も獰猛な肉食獣にかみ殺される不安を抱えながら暮らしている数少ない人々の気持ちを代弁することはできないし、そうするつもりもない。ライオンがうろつく畑で眠らざるをえないタンザニアの農夫を代弁する資格はないし、信仰と仮面だけを頼りに、トラがいる森に入っていくスンダルバンの男たちのような自信もない。しかしわたしは、科学が発見したことと、愚かな人間の実験によって明らかになったこと、そして、大型捕食者が消え、生物世界が不毛になる未来が迫っていることをどうしても伝えなければならない。わたしは、大きな肉食獣が歩きまわる土地とそうでない土地との本質的な違いを、彼らのなわばりをひとりで歩いてみればはっきりとわかるその違いを、個人的な感覚としてではあるが、ありのままに証言できる。そしてわたしは、論理的思考よりもっと深いところでこう信じている――野生動物が姿を消し、もはや戻ってくることのない世界には、果てしない孤独が待ち受けている、と。

 そりゃあ私だって著者と同じように感じる。ただでさえ狭い地球に溢れかえっているアフリカやアジアの貧乏人なんかもっとライオンやトラの餌になって、私が温かい部屋で鑑賞するBBCの番組に出演する動植物たちが、代わりに増えれば幸せだと思う。

 私が彼と意見を異にするのは、論理を超えた何かはそのような感情を助長するためにではなく、抑制するために使われなければならないと思っているところだ。

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