ショーン・B・キャロル『シマウマの縞 蝶の模様 エボデボ革命が解き明かす生物デザインの起源』

シマウマの縞 蝶の模様  エボデボ革命が解き明かす生物デザインの起源

 突然だが、この世で最も驚異的な自然現象はなんだろう? 虹? オーロラ? 台風? 噴火? 津波? 超新星爆発?

 大きい方はそんなところかもしれないが、小さい方に目を向けると胚発生が有力な候補に入ってくると思う。驚異と感じないとすれば、それは毎日その結果を見すぎて慣れてしまっているからだろう。

 最近になって急速に進歩した発生生物学についての本。面白かった。以下は前書きからの抜粋。

 ノーベル物理学賞受賞者のジャン・ペランによれば、科学を発展させる鍵は、「目に見える複雑なものを、目に見えない単純なもので説明」できるかどうかだという。進化学と遺伝学の分野で成された生物学の二大革命は、確かにその考え方で推進された。ダーウィンの偉大な業績は、化石として残された生物種のオンパレードと現生生物の多様さを、自然淘汰が膨大な時間に渡って作用した結果として説明したことにある。分子生物学は、あらゆる生物種の遺伝的基盤は、たった四種類の基本的構成要素で組み立てられたDNA分子にコードされていることを明らかにした。古代に生息していた三葉虫の体からガラパゴス諸島に生息するダーウィンフィンチ類の嘴に至るまで、複雑そうに見える形態の起源を説明するに際してもこの考え方は大いに有効だが、完全ではない。個々の形態がどのようにして作られるのか、それらはどのようにして進化したのかは、自然淘汰やDNAだけでは説明が付かないのだ。
 形態を理解する鍵は、発生にある。発生とは、単細胞である卵が何兆個もの細胞でできた複雑な動物になってゆく過程である。この驚異的な現象は、ほぼ二世紀にわたって生物学が解決できない大問題だった。しかも、発生が進化と密に関係しているのは、発生が形態の変化を引き起こす胚の変化によるものだからに他ならない。ここ二十年ほどの間に、生物学で新しい革命が進行した。発生生物学と進化発生学(いわゆるエボデボ)の発展が、見えざる遺伝子の働きと、動物の形態と進化を司る単純な規則に関して、たくさんの新知見をもたらしたのだ。その結果わかったことの多くは、進化はどのようにして起こるかという構図を大幅に書き換えてしまったほど予想外の驚異的発見だった。たとえば、ある昆虫の体と器官の形成に関与している遺伝子が、人間の体作りにも関与しているなどということを予想していた生物学者が、はたしていただろうか。
 本書では、そうした革命的発見と、動物界の進化に関する新しい見方について紹介する。私が目指すのは、動物の体の作られ方を活写すると同時に、これほど多種多様な現生生物と化石生物が誕生するにあたっては何があったのかを解き明かすことである。

おまけ

コメント

  1.   より:

    「目に見える複雑なものを、目に見えない単純なもので説明」
    をみて、これを思い出した。
    宮本さんによれば、
    「アイデアというのは
     複数の問題を一気に解決するものである」

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