2010 8/13

(本文とは無関係)

  • 「お互い人間なんだから、話せばわかる」

 という考え方がある。

 一見、文句のつけようのない立派な考え方に見えるが、大きな問題がある。

 なぜか? 対偶を取ってみればわかる。

  • 「話してもわからない(≒自分に同意しない)やつは人間ではない」

 と言っているのと同じである。

 「話せばわかる」という信念は、自分が間違っている可能性を常に真剣に考える態度とセットでなければ危険である。

おまけ

 13日の金曜日→ジェイソン。

by 木戸孝紀 tags: ブックマークに追加する

2010 7/31

(本文とは無関係)

 最近読んだ本、またはずっと紹介したいと思っていた本の中から、個別エントリにするタイミングがなさそうなものを、まとめて一挙紹介。

 ★は1-5個でオススメ度。人に薦める価値がまったくないと思うものはそもそも取り上げないので、1個でもつまらないという意味ではない。

『シー・シェパードの正体』★

 佐々木正明著。興味ある人は押さえておいてほしいけど、日本では、シーシェパードをそのまま信じている人なんてあまりいないので、それほど積極的な価値はないかも。

『100年予測―世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図』★

 ジョージ・フリードマン著。トンデモ本としての評価。最初の方は真面目に予測しているのだが、途中からいきなりSF仮想戦記モノに。ギャップが笑える。

『経済倫理=あなたは、なに主義?』★

 橋本努著。この本の分類だと私は「平等主義」になるようだ。

『背信の科学者たち―論文捏造、データ改ざんはなぜ繰り返されるのか』★★★★★

 ウィリアム・ブロード著、ニコラス・ウェイド著。すごくいい。古今東西の主要な科学の偽造・捏造・改竄、その他の問題が網羅されている感じ。ブルーバックスでこれはとてもお得。コストパフォーマンス高すぎ。

『「環境主義」は本当に正しいか?チェコ大統領が温暖化論争に警告する』★

 ヴァーツラフ・クラウス著。現職チェコ大統領が書いている、という以上のものは特に。内容的はロンボルグの本の方がまとも。そちらを読んでいれば十分と思う。

『宗教からよむ「アメリカ」』★★★

 森孝一著。これは今まで興味なかった人が、このキーワードで押さえておくのにちょうどいい感じ。

『絶対貧困』★★★★

 石井光太著。「世界リアル貧困学講義」スラム編・路上生活者編・売春編。かなり面白い。同著者の他の本も当たってみよう。

『無限のパラドックス―パズルで学ぶカントールとゲーデル』★★★

 レイモンド・スマリヤン著。何かの加減で思い出した。無限とかパラドックスとかいう単語に反応する人おすすめしたい。

おまけ

 経済倫理と聞いて。桃鉄も昔と随分変わってるなあ。

by 木戸孝紀 tags: ブックマークに追加する

2010 7/2

(本文とは無関係)

 という言葉を考えたのだが、何一つ反応なくて寂しい。

 最小限の音韻的変更で、意味がほぼ正反対の方向に*1通る、我ながらなかなかよい言葉遊びだと思うのだが。

 特に、ビジネス系・経済系のブログタイトルなどにぴったりだと思うのだけど、自分では使わないし、誰かいりませんか。

*1:元々の言葉も、本来の文脈では特に悲観的なものではなく、むしろ悲観論を茶化すジョークだったようだが。

おまけ

 言葉遊びつながり。

by 木戸孝紀 tags: ブックマークに追加する

2010 6/27

リスクにあなたは騙される―「恐怖」を操る論理

 我々が恐れなければならない唯一のものは、恐怖そのものである。

フランクリン・ルーズベルト

 ルーズベルト大統領はともかく、この言葉は好きだったのに、しばらく積んでたのを後悔。これは素晴らしい。超いい。

 と並んで、一家に一冊配布を義務づけたいレベル。

  • 進化心理学本
  • メディアリテラシー本
  • 科学リテラシー本
  • 社会問題リテラシー本

 いずれの視点から見ても最高クラス。それぞれ同等以上の内容をもつ本はもちろんあるけど、一冊に濃縮した感じ。その割に価格も低めでコストパフォーマンスも最高。

 例の『The Cove』見に行く人は、これ読んでからにしてほしいかも。

参考リンク

関連書籍

おまけ

 なんでもないものが恐怖の象徴となるたったひとつのルール。

by 木戸孝紀 tags: ブックマークに追加する

2010 6/23

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

 原題 “Justice – What’s the Right Thing to do?”(『正義――何が正しいことなのか?』)NHKでハーバード白熱教室として放送されているらしい講義の書籍化。

 歴史を足早におさらいする感じや、日本での流行り方からは、正義論に集中した『ソフィーの世界』、といった印象を受ける。

 確かに流行るだけあって、大変よくまとまっていると思う。この分野の入門書としては最高だ。おすすめ。NHKの番組は未見だが、講義そのものはYouTubeで見られるらしいので、後でちょっと覗いてみよう。

 ただ、邦題は内容に即していない。むしろ正反対だ。『これからの「正義」の話をしよう』とあるが、「これから」の話は、ほとんど何も出てきていない。単に内容を表すものとしては『これまでの「正義」の話をしよう』の方が適切だと思う。

 この分野は今まさに、脳・神経科学および進化心理学の両面から革命が進行中で、この本にまとめられた現在までの議論は、ちょうど進化論以前の生物分類学のようなものになる可能性が高い。

 決して価値がないという意味ではない。それはそれで素晴らしい壮大な知の体系なのだが、現実の問題を解決したり、さらなる進歩の元になったりするというよりは、歴史的研究の対象になるということだ。

参考リンク

参考動画

 英語。[CC]ボタンから字幕(やはり英語)を出せるようになるようだ。

関連書籍

おまけ

 ジャスティスつながり。

by 木戸孝紀 tags: ブックマークに追加する

2010 6/5

平気でうそをつく人たち―虚偽と邪悪の心理学

 『健康帝国ナチス』に出てくる言葉。ヘルベルト・メルテンがどういう人かも、どういう文脈で言ったのかも知らないのだが、なかなかうまい言葉だと思う。ちょっと前に読んだ『平気でうそをつく人たち』とも共通する話。

 要は「悪」と一口に言ってもいろいろあって、なにも北斗の拳のモヒカンがやるようなヒャッハー的わかりやすい悪ばかりではなく、もっと微妙・巧妙でしかもありふれた悪があるということ。

 『平気でうそをつく人たち』の内容をうまいことまとめているところがあったので引用させてもらう。

  • 邪悪な人たちは、自身の罪悪を認めない。
  • 多くの場合、堅実な市民として生活している。
  • 彼らの犯罪は隠微であり表に現れない。
  • 自分自身には欠点がないと思い込んでいる。
  • 自分自身の罪悪感に耐えることを徹底的に拒否する。
  • 自分の行為を隠蔽するために他人に罪を転嫁する、スケープゴートにする。
  • 世の中の人と衝突すると、必ず他人が間違っているために問題が起こると考える。
  • 自分自身の欠陥を直視する代わりに、他人を攻撃する。
  • 自分自身の中の病を破壊する代わりに、他人を破壊しようとする。
  • 道徳的清廉性を維持するために絶えず努力する。
  • 他人が自分をどう思うかという点に鋭い感覚を持っている。
  • 善人であろうとはしないが、善人であると見られることを強烈に望んでいる。
  • 自身の邪悪性を認識していないのではなく、その意識に耐えようとしない。
  • 邪悪な人の悪行は罪の意識から逃れようとして行われる。
  • 社会的な対面や世間体を獲得するために人並み以上に奮闘し努力する。
  • 地位や威信を得るためには熱意を持って困難に取り組むこともある。
  • 自身の良心の苦痛、自身の罪の深さを認識する苦痛を耐えることができない。
  • 自分の正体を照らす光を嫌う。
  • 自分中心的な行為が他人にどのような影響を及ぼすのか考えない。

(【読書会】『平気でうそをつく人たち』(M・スコット・ペック) 第48回桂冠塾: 市民はたさん の 普通の感覚?)

 キーワードは「嘘」と「正当化」だろうか。頭――身体の首から上という意味ではなく理性の意――がおかしいわけではないから、自分が嘘をついていることはちゃんとわかっている。

 しかし、「俺が善意で嘘をついてやってるのに信じようとしないなんて、なんという心のねじ曲がった奴だ許せない!」みたいな独特の正当化をする。

 ネット世界ではしょっちゅう見かける話だし、今の首相――とか書いてるうちに前首相になってしまいそうだが――なんかもそれかもしれない。ひとつ頭に置いておくといいのではないか。

おまけ

by 木戸孝紀 tags: ブックマークに追加する

2010 6/1

(本文とは無関係)

 引っ越してすぐの頃、家賃の払い込みをする時に、このようなことを考えた。

「オーナーは契約書に名前が載ってるだけでこの家賃を受け取ってるわけだ。これは払う側ではなくもらう側にならなくてはいかんのではないか?」

 そこでマンション・アパート経営について一通り調べて、実際にそういう不動産屋にも足を運んで話を聞いてみたりした。すると、よくあることだが、調べるほどそんなにうまい話はないことが明らかになっていく。

 取得時のコストがどうの、修繕積立金がどうの、固定資産税のなんの、といろいろと考えなければならないことが出てきて、それらをExcelでシミュレーションに加えていかないといけなくなる。

 すると、額面利回りで11%とか12%とか、ぱっと見かなりいい条件であっても、結局株や債権などの流動資産で年3%程度の運用をした場合と同じぐらいの額にしかならないのである。それも、空室や火事・地震等のリスクがまったくないと仮定してもである。

 20年間ぐらいの間に1000万以上のプラスになることがかなり確実そうな物件が、途中で一件だけあったのだが「これどうなの?」と尋ねた時には「もう契約決まってしまいました」と言われてしまった。

 まあ、そうだろう。私のような初心者が見ても明らかに良さそうな話なら、誰が見てもいいに決まってる。生き馬の目を抜くような……と言ったら大げさだろうが、そういうものなのだろう。

 こういう分野があるという勉強にはなったけど、よほど運良くいい話に巡り会わない限り、実際に手を出すことはなさそうだ。

おまけ

by 木戸孝紀 tags: ブックマークに追加する

2010 5/27

要するに (河出文庫)

 山形浩生のエッセイ集。話題自体はやや古くなりかけているが、内容は別に古びてはいない。

 今回「おっ?」と思ったのはここ。

 さて、たぶん実際の世の中の制度設計というのも、このゲームの「おもしろさ」を考えるのと同じことだろう。ゲームも、まったくの自由放任では成立しない。なんらかの制度(つまりルール)があって初めて成立する。でもがちがちに規制しまくっては、ゲームが硬直する。(中略)万人による、さまざまなゲームの総和を考えたとき、最大限の「おもしろさ」を保証する制度ってどう考えればいいんだろうか。

(P286-287 制度設計と「おもしろさ」)

 上記エントリで私が、ゲームデザイナーの才能に一番近いのはあえて言えば立法者の才能ではないか? などと言っているのは、これと同じ話だ。

 しばしば訳書を好意的に取り上げてきたが、やはりこの人とは思考回路が近いらしい。他の著書も当たってみよう。

 ちなみに『山形道場』という本の文庫化らしいので、そちらを既読の人はかぶらないように注意。

参考リンク

おまけ

 これが十分コンテンツになるんだから今ゲームって難しいわな。

by 木戸孝紀 tags: ブックマークに追加する