2017 11/8

『自閉症は津軽弁を話さない 自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解く』★

 松本敏治著。方言は、ほとんどが人間から(苦手な)人間関係や心情を伴う形でもたらされるため、主にテレビから言葉を覚えることになるからではないか、という説。なかなか面白い。

『東方鈴奈庵 〜 Forbidden Scrollery.(7)』★★

 春河もえ著、ZUN原作。完結。当然ネタ切れ感は否めないものの、最後まで一定のクオリティは保ったか。

『日の名残り』★★★★

 カズオ・イシグロ著。当然ノーベル賞から。面白かった。他のも読んでみようかな。

『あさひなぐ』★★★

 こざき亜衣著。妻経由。今時珍しい(?)正統派(?)スポ根(?)漫画。

『系外惑星と太陽系』★★

 井田茂著。知らない間にいろいろアップデートされているなあ。

『子育ての大誤解――重要なのは親じゃない』★★★★★

 ジュディス・リッチ・ハリス著。非常に面白い。スティーブン・ピンカーが序文書いてるだけのことはある。激しく要約すると、両親は当然に遺伝子と環境を提供するものの、子供がそこから実際何を学ぶか・何を開花させるかは、主にピア効果で決まる、という主張。

『触れることの科学』★★★

 デイヴィッド・J・リンデン著。触覚の話題。面白い。

『獣の奏者 I闘蛇編』★★★★

 上橋菜穂子著。守り人シリーズから続いて読む。こちらもかなり面白い。

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2014 8/24

人間と動物の病気を一緒にみる : 医療を変える汎動物学の発想

 バーバラ・N・ホロウィッツ著、キャスリン・バウアーズ著。原題”Zoobiquity The Astonishing Connection Between Human and Animal Health”(汎動物学 人間と動物の健康の間の驚くべきつながり)。

 (人間の)医学は獣医学からもっと学ぶことがあるという本。素晴らしく面白かった。進化医学・進化病理学・進化心理学本としての側面もある。

 特に第8章の自傷行為、第9章の過食症・拒食症の部分は、初めて聞くような知見もあった。

 第6章の乳幼児突然死症候群と恐怖反応の関係についての仮説は興味深い。単に原因不明の死につけられたラベルではないという説の中では、今までで一番ありえそうだと思った。

 もちろん人畜共通感染症の話も多い。エボラが話題の今、是非おすすめ。

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2014 7/7

『フェッセンデンの宇宙』★★

 エドモンド・ハミルトン著。昔読んだはずだが思い出したくなって。なんと言っても表題作がオススメ。ドラえもんにもこれが元ネタと思われるエピソードがあるぐらい有名。

『スエズ運河を消せ―トリックで戦った男たち』★

 デヴィッド・フィッシャー著。興味深い。

『「ニセ医学」に騙されないために 危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!』★★★

 NATROM著。お馴染み(?)NATROM先生が書籍化。

『東大家庭教師が教える 頭がよくなる読書法』★★★

 吉永賢一著。『思考法』が良かったので念のためチェック。比較的いい。

『東大家庭教師が教える 頭が良くなる記憶法』★★

 吉永賢一著。『思考法』が良かったので念のためチェック。これは普通か。

『東大家庭教師が教える 頭が良くなる勉強法』★★

 吉永賢一著。『思考法』が良かったので念のためチェック。これも普通レベル。

『都市は人類最高の発明である』★

 エドワード・グレイザー著。悪くないけど大体順当な内容なので、タイトルだけで「こういう内容だろう」と想像つく人は読まなくてもいいかも。

『サッカー人間学―マンウォッチング 2』★

 デズモンド・モリス著。ワールドカップなので。サッカーにまつわる人間行動のあれこれを文明化以前の部族の行動と比較するという本。なかなか興味深い。

『米国世界戦略の核心―世界は「アメリカン・パワー」を制御できるか?』★

 スティーヴン・M. ウォルト著。ちょっと興味ある人なら今更な内容かもしれないけど。

『「勇気」の科学 〜一歩踏み出すための集中講義〜』★

 ロバート・ビスワス=ディーナー著。やや散漫だけどテーマ的に捨てがたい。一番面白かったのは本番に入る前の前書きのエピソード。

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2013 1/11

不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」

 以前『予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』を紹介した、ダン・アリエリーの本。

 行動経済学の部分はすでに一度は読んだことがほとんどなのだけど、作者の人格――全身大やけどという経験にも深く影響されている――に好感が持てる。

 最高級に面白いし、生活の上でも心がければ役に立ちそうなことが多い。

 たとえば、順応を考慮すると、楽しいことは切れ切れに、苦しいことは一気にやったほうがよさそうだ、とか。不機嫌なときには後まで影響を与えるような決断をするな、とか。

おまけ

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2012 11/10

友達の数は何人?―ダンバー数とつながりの進化心理学

 陰謀論(ウォッチ)業界でよく見る(?)悪の秘密結社の名前に三百人委員会というものがある。

 30人委員会や3000人委員会でなく、3万人委員会でも3億人委員会でもなく、あくまで300人委員会であり、300という数がロビン・ダンバーいうところのダンバー数の上限あたりにほぼ一致するのは興味深い。

 利害でまとまったひとつのグループとして、人間が自然に想像できる限界の数がちょうどそれぐらいであるということなのだろう。

おまけ

 友人の数が減りそう。

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2011 8/27

人間の本性について (ちくま学芸文庫)

 エドワード・オズボーン・ウィルソンのピュリツァー賞受賞作。内容はタイトル通りで、賞に相応しい素晴らしさ。

 私が生まれた年の本だが、いま見てもそれほど古びていない。問題になりそうなほど古いのは、同性愛を擁護するのにヘルパー説に頼っているところぐらいか。

 同じ人間が『創造』みたいなすっとこどっこいな本を書いたとは、なかなか信じられないほどだが、この本のラストには、それに繋がった問題意識がすでに見られる。

 科学的自然主義scientific naturalismの決定的な強みは、その主敵たる伝統的宗教を、物質的な現象としてあますところなく説明してしまうことができるという点にあると言える。つまり、神学が独立した知的分野として生き残れる見込みはなくなったのである。しかしそれでも、宗教それ自体は、社会に重大な影響力を及ぼすものとして、今後も長く存続することであろう。産みの母である大地からエネルギーを吸収したという神話上の巨人アンティオスと同様に、宗教もまた、単に地上に打ち倒されたぐらいのことで打破されるものではないからである。科学的自然主義の精神的な弱みは、アンティオスにとっての大地に相当するような力の供給源を、それが欠いているということに由来している。科学的自然主義は宗教的感情の強固さの唯物学的源泉を説明しはするが、現在のままの形態では、その力を自らの側に引きよせることはできないのである。なぜなら、科学的自然主義の進化的叙事詩は、人間個人の不滅性を否定し、その代りにただ人類という生物種の実存的な意味を示してみせるばかりだからである。ヒューマニストたちが、精神的帰依や自己放棄の強烈な快感を享受することは決してないであろう。科学者たちは、司祭の役目など金輪際果たせるものではないのだ。かくして我々は次の問いに逢着した。宗教の源泉を白日のもとにさらしてしまうこの偉大な新しい企てに、当の宗教の力そのものをふり向けさせる方法が、一体存在するのだろうか。

関連書籍

おまけ

 MMD杯は今回もレベル高かったな。

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2011 7/30

(本文とは無関係)

『ホロコーストを知らなかったという嘘―ドイツ市民はどこまで知っていたのか』★

 フランク・バヨール著、ディータァ・ポール著。みんな薄々わかっていることながら、まあタイトル通り。

『図解・感覚器の進化』★★★★

 岩堀修明著。久しぶりにすごくいいブルーバックス。図解多し。おすすめ。

『プルトニウムファイル』★

 アイリーン・ウェルサム著。ちょっと今話題の方向性とはずれてるけど、プルトニウムはプルトニウム、放射性物質は放射性物質。知っといて損はないのでは? ただし、根っから陰謀論脳な人は悪化する可能性があるからやめとこう。

『やわらかな遺伝子』★★★★

 マット・リドレー著。古典的な『生まれか育ちか?』的な二者択一の問いは、最新の知識からするとほとんど意味を成さないという、その辺の話。いいと思う。

『吸血鬼(バンパイア)ハンターD』★★★★★

 菊地秀行著。「ラノベは銀英伝とロードス島戦記ぐらいしか知らない」と前に書いたが、これもラノベに入れてよければ読んだことある。古いけどやっぱ面白いなあ。

『実践 行動経済学 健康、富、幸福への聡明な選択』★

 リチャード・セイラー著、キャス・サンスティーン著。行動経済学本は最近よくあるが、それを社会デザインにどう活かすかという方に重点が置かれている。ナッジ(NUDGE)という概念は憶えておきたい。

『かぜの科学―もっとも身近な病の生態』★★★★

 ジェニファー・アッカーマン著。普通(≒インフルエンザ以外)の風邪は、手についたウィルスが目や鼻に付くことによって感染する。子供(≒保育園・幼稚園・小学校)はかぜの巣。等々、いろいろ勉強になる。

『紛争屋の外交論―ニッポンの出口戦略』★

 伊勢崎賢治著。やや散漫な印象あるけど、この著者個人的に好きなので。

『誘惑される意志 人はなぜ自滅的行動をするのか』★★★★★

 ジョージ・エインズリー著。なんでも双曲割引で説明しちまう本。さすがにちょっとフカシ過ぎじゃねえの? と思うところもあるけど、すげえ面白い。普段なら単独エントリにするのだが。山形浩生の訳者解説から読むことを勧める。

おまけ

 人はなぜ自滅的行動をするのか……。

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2011 3/6

(本文とは無関係)

 たとえ話のたとえ話をしたい。たとえ話というのは地図のようなものだ。

 当然だが、地図は現実の地形そのものではない。分かりやすい線や図形で必要な情報だけを表し、残りを全て省いて単純化したものだ。だからこそ有用である。

 たとえ話に対して「元の話と違っているから不適切である」という批判は一般的にはナンセンスである。「1/1の地図」が役に立たないのと同じく、不適切でないたとえ話は無価値である。

 「1/1リアルタイム更新フルカラー3D地図」は現実の地形を表すのに不適切ではないかもしれないが、それを持っていることは、地図を持っていないのと同じである。

 ある場所に行きたいという共通の目的を持っている人々の間では、地図はとても役に立つ。人間の思考はコンピュータのようにはいかないので、論理的に同等なことでもたとえ次第で理解の度合いがまったく違うことはよくある。*1

 しかし、そこに行きたくないと思っている人に地図を与えても無意味だ。偶然に行き着いてしまう可能性もゼロにすることに「悪用」*2されるだけだろう。

 本論に反論できないときにも、たとえ話にツッコミを入れることは常に可能なので、そうして論点をずらした議論に引きずり込んで抵抗するのもよくあることだ。私は、そうした状況をたとえ話地獄と呼んでいる。

 たとえば、この話に対して、お前は馬鹿か「1/1リアルタイム更新フルカラー3D地図」はメチャメチャ有益だろ! と言い出す人が現れて私がその人にまた反論を始めたら、典型的なたとえ話地獄である。

 たとえ話は元からある意見・視点に賛成する人同士での手間や労力を省くことには役立っても、反対意見を持つ人を説得したり味方にしたりということにはまったく役に立たないのだ。

*1:参考:4枚カード問題 推論と社会ルール:進化研究と社会
*2:行きたいと思っている人の見方では。

おまけ

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