ゴルゴ13の出身が決して明らかにならないのはなぜか?

ゴルゴ13 155 (SPコミックス)

 ゴルゴ13の出身は、たびたび話題になるものの、決して明らかになることはない。なぜか?

 ある意味では答えは簡単だ。多分あなたもすぐ思いついた通りだ。明らかになってしまったら、いつでも使えて確実に人気のあるネタの一つが無くなってしまうからだ。

 しかし、それはあくまで至近要因だ。なぜゴルゴの出身が確実に人気のあるネタなのか?

 想像してみよう。ついにゴルゴの真の出身が疑問の余地なく判明した! 実はロシア系中国人で日本とは縁もゆかりもなかった!

 あるあ……ねーよ。

 そう、誰もそんなことはありえないと知っている。みんな実はゴルゴは日本人――でなくとも、少なくとも日系人とか日本人とのハーフとか――だと知っているのだ。

 では、なぜゴルゴは日本人でなければならないか?

 いつか一言だけ触れた(参考)が、ゴルゴ13というキャラクターの人気は、戦後日本人の国際政治コンプレックスと切り離して考えることはできない。

 いつも無表情でアメリカ大統領やCIA長官を震え上がらせるゴルゴというキャラクターは、メガネでへらへら笑うエコノミックアニマル*1としての日本人の自己認識の正確な裏返しだ。

 では、もう一度最初の問いに戻って、なぜゴルゴの出身は決して明らかにならないのか?

 明らかにしたっていいのではないか、誰もがすでにそうだと知っているのだから。読者が皆そうであることを望んでいるとわかっているのだ。ネタのストックをひとつぐらい減らしても、明らかにしてあげるべきでは?

 もちろん、違う。

 コンプレックスの補償としての娯楽は、それを楽しみつつ、そうしているということをはっきり自覚させないことが重要だ。

 「日本人と断定されたゴルゴ」は、あまりにも日本人の国際政治コンプレックスの代償の要素がはっきりしすぎる。それは、たとえるならギャルゲーに「非モテ御用達」と明記するような自殺行為だ。

  1. おそらく日本人と思われつつも不明のまま
  2. 日本人と判明する
  3. 日本人でないことが判明する

 ゴルゴの出身についてのありうる選択肢は、この順番で望ましい。つまり、現状のままがベストだということを、作者はもちろん読者もみんなわかっているのだ。

*1:今となっては「むしろまたエコノミックアニマルと呼ばれたい」という思いの方が強くなっているかもしれないが。

おまけ

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