『Mr.インクレディブル』以来ピクサーにまいっている私だが、今回は正直期待はずれだったと言わざるを得ない。
もちろん凡百のアニメとは比べものにならないレベルの高さではある。しかし、これまでどの作品にも見られたピクサーならでは、純ディズニーブランドならば絶対にあり得なかったと思わせるような予想を超えてくる要素がなかった。
(ここから先内容の全面ネタバレあり注意)
CG他技術はいつも通り最高レベルだったと思うが、今回はピクサーを別格たらしめていた脚本がレベル低い。*1ジョン・ラセターが自分を投影していると思われるレミーはよかったが、それ以外のキャラがどいつもこいつも首尾一貫していない。
グストーの霊はいい味だしてたがフェードアウトしちゃう*2し、女*3も最初の啖呵きるあたりまでは好感持てたが、後半はさっぱり。
他の厨房スタッフは何のために出てきたって感じだし、ラスボスの評論家だけはなかなかいいキャラしてたのに、最後はなんだよお前は美味しんぼの京極さんかよと。
特にもう一人の主人公であるリングイニに全く魅力がないのが致命的。途中まで絵に描いたような貴種流離譚*4なのに、実は本当に才能ないとか、どんな理由であれ店潰して終わりとかありえないでしょ。
こういう結末にするならリングイニはグストーと縁もゆかりもない見習いの方がまだよかったよ。
そう考えていくとレミーの結末もなんだか中途半端だ。ネズミだって人間だって料理への愛さえあれば違いはないんだよってメッセージならば、ラスボスの批評によってレミーの存在が世間に認められてよかったね! ……という結末にすることが簡単にできたはずだ。
逆にネズミはネズミだけどそれでいいんだよってメッセージならば、協力してラストバトルを乗り切った後、リングイニ*5は父の店を継いで、レミーはネズミの仲間たち*6に対して、それぞれの世界で一流シェフとして活躍しました。
……とかいう終わり方でもよかったはず。このどちらでも私はかなり気に入ったと思う。私が一瞬で思いつくのに脚本を何度も練り直すというピクサーのスタッフの選択肢の中に存在しなかったということはなかろう。
実際のストーリーはこのどちらも選べたのに、無意味に中途半端な折衷案を選んでしまったような気がしてならない。それとも私が何か読み取り損ねているのだろうか。海外での評価が気になるところだ。
*1:少なくとも私は気に入らない。
*2:それは仕方ないが。
*3:名前が思い出せないが冒頭のショットガン婆さん以外には一人しかいないのでたぶん通じるだろう。
*4:きしゅりゅうりたん・実は高貴な身分である不遇な主人公が簒奪者の奸計を知恵と勇気で跳ね返して正当な地位を取り戻すというパターンのお話のこと。
*5:二人羽織やってる間に生来の才能を開花させていたという設定にして。
*6:都会のエサは口にわねえよとぼやいていたという設定にして。
おまけ
アニメーション繋がり。
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