東方のキャラ設定の魅力は「さびしくない孤立が嫌いなオタクなんていません!」の一言に尽きる(前編)

東方求聞史紀 ‾Perfect Memento in Strict Sense.

 タイトルは上のエントリにコメントした台詞だが、なにげなく言ったわりに結構本質を突いてるような気がしてきたのでもうちょっと敷衍してみたい。公式設定がどうかということより二次設定でどういう解釈が好まれているかの方に興味があるので、公式設定と二次設定の違いはあまり意識してない。

 また、私はニコニコ動画のMAD流行後だいぶ経ってから「アイマス・ボーカロイドと並ぶ三大部族の一角なのに面白さがわからないのはもったいない」という理由で勉強し始めたにわか中のにわかで、原作ゲームは一秒たりともプレイしていない。資料もWikipedia・はてなキーワードぐらいしか見てないし、それもちゃんと読んだのは今回が初めてなので、ひどく間違ってるところがあったら教えてほしい。

予習用資料

 まったく知らない人のためのもの。まったく知らない人はこのエントリ自体読まない気がするが、念の為。

「さびしくない孤立」

 まず全ての舞台である幻想郷が日本から「孤立」している。東北(?)の山奥に実在する空間だが結界で外界と隔離されている。しかし、この結界は常識と非常識を分ける結界で、外の世界(現実)で否定されたり消えつつある妖怪など様々な種族が世界中から集まってくるので「さびしくない」

 この描像は「日本は海外から隔絶しているが、いろんな文化を取り込んでかつ平和でいられるのでそれでよい。」という俗流文化論的自己認識*1と自己相似形になっていることは言うまでもない。

 冒頭のエントリでも指摘されているが、主人公の人間二人、博麗霊夢霧雨魔理沙は両方とも独りで「孤立」した暮らしを送っているが、博麗神社にはいろんなやつらが押しかけてくるし、魔理沙はいろんなところに自分から押しかけに行ってアイテム強奪したりするのでやはり「さびしくない」

 幻想郷全体に、いつともなしにフラッとやって来ていつともなしにフラッと帰るというゆるい友人関係が一般的というイメージがある。後述の地縁関係・封建関係と無縁の、ゆるくない友人関係というものは、上白沢慧音と藤原妹紅の間のそれぐらいしかないように見える。

 主人公だけではなく、「孤立」やそれに類するイメージの設定を持つキャラが非常に多い。しかもそのようなキャラに重要キャラが多く、人気も集まっているようだ。そもそも人間関係というものが設定されていなさそうな単発の妖怪・妖精は初めから除いているが、それらの中には特に人気の高いキャラはいないようである*2

キャラ 属性
博麗霊夢 神社で独り暮らし。人間(≒長命の他種族からの孤立)。誰に対しても特に優しくも厳しくもない。
霧雨魔理沙 独り暮らし。実家から勘当されてる。人間(≒長命の他種族からの孤立)。
パチュリー・ノーレッジ 図書館に引きこもり。
十六夜咲夜 人間(≒長命の他種族からの孤立)。
フランドール・スカーレット 館の地下に軟禁されてる。
アリス・マーガトロイド 独り暮らし。人形遣い(≒自分と人形しかいない≒自分しかいない)。
プリズムリバー三姉妹 四女と永別。
伊吹萃香 幻想郷でも外界でも消えつつある種族。幻想郷で一匹だけの鬼。
鈴仙・優曇華院・イナバ 幻想郷で一頭だけの月の兎。故郷の月からの逃亡。
八意永琳 不老不死(≒定命の者からの孤立)。故郷の月からの逃亡。
蓬莱山輝夜 引きこもり。不老不死(≒定命の者からの孤立)。故郷の月からの逃亡。
藤原妹紅 不老不死(≒定命の者からの孤立)。
森近霖之助 独り暮らし。

 血縁関係の設定も非常に少ない。名前があるキャラ同士の血縁関係は以下のものぐらいしかない。

キャラ 属性
吸血鬼姉妹 姉レミリアが少々気の触れた妹フランドールを館の地下に閉じこめている。
プリズムリバー三姉妹 四女が実在の姉達を元に生み出した霊。四女はすでに死別。
東風谷早苗と洩矢諏訪子 早苗は諏訪子の子孫だが、本人は知らない。
秋静葉と秋穣子 静葉が姉。穣子が妹。

 しかもこのうち、吸血鬼姉妹と騒霊三姉妹の血縁関係は「孤立」の要素を際だたせる役割を果たしているようであり、いわゆる普通の血縁関係にある(そしてそれ故にか全然人気がない)秋姉妹のみが例外中の例外であるように見える。少年少女向けのエンターテイメントで親や親類が無視されるのは一般的傾向であるとはいえ、これだけ大勢のキャラがいることを考えれば、たったこれだけしかないのはやはり特徴的ではないかと思われる。

 これだけ徹底して「孤立」していても、やはり様々な理由で「さびしくない」。なんというか「緩い人間関係の肯定」とでもいうべき一貫したメッセージ性を感じる。これまでニコ動でいくつMADが流行っているのを見ていても、東方Projectが老若男女問わず日本のオタク界隈で絶大な人気を得ているということが、いまいち腑に落ちていなかったのだが、今回初めて真面目に資料を読んでみて何となくわかる気がしてきた。(後編に続く)

*1:個人的にはあまり正しくないと思っているが、今回はそこが本題ではないので追及しない。
*2:バカの子キャラが立ちまくっているチルノは例外

おまけ

 長く「BGMに定評のありすぎる同人シューティング」というぐらいの認識だったのだが、どうも改めなければならないようだ。

コメント

  1. 木戸孝紀 より:

    >鯛
    私は陰盗からかな(例に漏れず最初しばらくアリスの名前を魔理沙だと勘違いしていたクチだ)。一応弾幕シューティングがどんなものかはわかっているつもりだが。

  2. より:

    ゆっくりから入ったにわかの中のにわかな俺様が通りますよ。
    何気に本編に関しては麻雀やりに来た友人が勝手に俺のPCに入れていった妖々夢だけやった事がある。
    でも小学生までしか許されないイージーモードですら結局最終ボスで死んでノーコンテニュークリアは未達成です><

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