【第13回】 【目次】 【第15回】
いきなり太古のミームとか言われてもわけわかんねーよ! って? そりゃそうだわな。宇宙はいつだって自分で思っているより複雑なものなんだ。慌てなくても勉強することはまだいくらでもある。ゆっくり理解していけばいい。
しかし、主にビクター・ケラハーさんのおかげで、そろそろこの問題と、根本的な精神生活のあり方・具体的には宗教・名指しすればキリスト教との間に、何らかの関係があるってことは、たとえ疑いながらでも実感がわいてきたのではないかと思う。
そもそもシーシェパードと聞いて「海なのになんで犬?」とか思ってる人が、ここを読んでいるような人の中ですら絶対にいるだろう。確かにシェパードという犬はいる。牧羊犬だ。辞書を引いてみよう。持ってなくても今ならネットにあるはずだ。
shepherd
1 羊飼い,牧羊者.
2a (教会員を羊に見立てて)牧師.
b (精神的)指導者.
c [the (Good) S〜] よき羊飼い,イエスキリスト.
3 →shepherd dog.1 <羊を>飼う,見張る,世話する.
2 +目+副(句)<人の集団を>(…に)導く,案内する
古期英語から
いくらなんでも迷える子羊って言い回しぐらい聞いたことがあるだろう? 羊飼いというのはキリストの古い暗喩なんだ。
当然キリスト教国なら一般常識だが、日本人には知らない人がいたっておかしくない。新聞やニュースでこの程度のことを教えてくれないのは何故だろうね?*1 日本の権力を牛耳る闇の勢力は実は勇魚取りの組合から発展した秘密組織で、報道を操って国民の眼から都合の悪い真実を隠蔽しているのかな? それとも単に知らないのかな? どっちかな?
シーシェパードになったつもりで想像してごらん。長いひれを左右に拡げて泳ぐクジラは海に浮かぶ巨大な生きた十字架であって、銛に刺し貫かれて血を流すクジラは、今まさに人間の環境破壊その他諸々の罪の全てを引き受けて天に召されようとしている顕現したキリストなの。
クジラは生態上の理由によって痛みによる悲鳴はあげないけど、*2代わりに彼らの耳には「ガイアよ彼らを許したまえ。彼ら日本人たちは何も分かっていないのです。」というクジラの気高い祈りの声が届いているよ。
ホントだよ。どうしたらそうじゃないなんて思えるの? 私にはわからないね。(わかるけど。)
天ぷらご馳走してシャワーも貸してあげたのに虐待されたと嘘をつくなんてひどいだって? ふざけんな! 俺はお前らの魂を永遠の苦しみから救ってやりたい一心で、つきたくもない嘘をつくという罪まで背負ってやってるのに、天ぷらで恩を返した気になるとはどういう了見だ。お前らの魂はそんなに安いのか!? さもありなんだがな。自分で自分をそんな風に扱うなら次に俺たちがお前らをどんな風に扱ったって文句は言えないよな!? その時になってから懺悔しても遅いぞ!
……と、いつものように「地獄への道は善意で敷き詰められている」というわけなんだよ。いろんな意味で大変そうでしょ? どうやったらこんな精神を理解できる?
まだ信じてくれなくてもいいが私はできる。その方法については、心の師匠の1人、古生物学者、進化生物学者、科学史家、エッセイストでもあった故スティーヴン・ジェイ・グールドからほとんどを学んだ。(後で『人間の測りまちがい』に言及するときにもっと詳しく触れるであろう。)しかし、学んだと言っても普通に中学・高校・大学・市立図書館に置いてあった本を読む以上のことは何もしていない。私にできるならあなたにもできるはずである。
第1回で少しだけほのめかしたが、捕鯨・反捕鯨問題の本質を正しい時間感覚で捉えられていないことが、相手を、時に異常に強大に見せたり、時に異常に弱小に見せたりして判断を狂わせている。
この場合、正しい理解を得るためには、歴史的・文化人類学的思考――わかりやすく言えば脳内時間旅行――が一番よい方法だ。
私は第5回で「反捕鯨運動の始まりについては扱わない」と言った。誤解を招きそうな言い方だったかもしれないが、それは本当である。時間旅行とは言っても「19XX年IWC総会で云々」などということを指しているのではない。
いま日本人に足りていないのはそんな時期の知識ではない。最初の行き先は、500年前だ。
*1:実は最近ニュースだけでなくテレビをまったく観ていないのでテレビ報道がどうなっているかは知らないのだが。
*2:その理由を調べるのと、もしそうじゃなかったら歴史はどう変わっていたかだろうかと考えるのは読者への宿題としよう。
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おまけ
これについては言いたいことがあるがオチを割っちゃうので言わない。いつか取り上げるのでそれまでにいろいろ考えておいてね。
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