- 文字から計算が生まれたのではなく計算から文字が生まれた。文字に繋がる抽象化にまつわる最も古い遺物は一定間隔で刻み目の入った骨。数えていたものはおそらく日数。
- 家畜を管理するために、一頭囲いから出すごとに一つ小石や小枝を拾い、一頭囲いに戻すたびに一つ落とす、といったことをしていた時期があったはず。*1
- シュメールの遺跡では粘土で作られた様々な形のトークンが出土する。農耕の始まりと定住生活によって増えた穀物・家畜など様々な財物の会計・管理・記録に使われていた。
- トークンをまとめて管理・保管するには穴が開いたトークンに紐を通すか、粘土球に入れるか。粘土の封球は自分や相手の印章を押してから焼けば改竄できない記録となる。
- 封球の不便な点は、中身が簡単に確認できないってことだ。どうしたらいい? 粘土球の表面に印章と同じようにトークンを押しつけてその形もつけておけばいい。
- ちょっと待てーゐ! 粘土球の表面の印で中身がわかるんなら中身いらなくね? 粘土板の表面に形だけ書けばいいじゃねーか!*2 と文字誕生。
- たとえば「10単位の穀物」を意味していた記号から「10」という“数”の概念が分離され数字誕生。
というような過程が5000年ぐらいかけて進行したのでした。いーち、にーいとか数字を教わってる現代の子供は皆いきなり数千年分の文明の蓄積を与えられた超人なわけですな。
この文字と数字の起源に関する説はかなり昔に何か別の本で読んで、衝撃を受けつつも説得力があるなと思った覚えがあるが、今回大量の図表入りで見られて面白かった。
*1:数学では「ものを数えるということは、集合の要素と自然数の間に一対一対応をつけることである」などと習いますが、つまりこれは数えるという行為が生まれた頃への原点回帰と考えることもできそうですな。
*2:と、即座に突っ込めるのは私たちがすでに「書く」という概念を習って知っているから。
関連サイト
- Denise Schmandt-Besserat(著者公式サイト・英語)
おまけ
文字つながり。
コメント
遺物の裏づけもありますが、
各段階の進化のステップに無理がないところに説得力を感じますね。
これは確かに説得力アリ