「どくけしそう」はなんのためにあるのか?

ドラゴンクエストIII そして伝説へ… 公式ガイドブック

1.「どく」状態は何のためにある?

 DS版ドラクエ5のエントリで予告していた話だが「毒を治すために決まってんだろ!」ということを言っているわけではもちろんない。

 そもそもドラクエの「どく」状態というのは実はほとんどペナルティがない。戦闘中にはダメージがないし、移動中に数歩に一歩だけ画面が赤くフラッシュして1ダメージを受けるだけだ。仮に全員がずっと毒に犯されっぱなしでも、鬱陶しいのを我慢しさえすれば普通にプレイすることが可能である。

 Wizardryのように毒のダメージが大きくて、毒消しは序盤では買えないほど高く、宝箱のどくばりの罠にうっかりかかったら死あるのみ、というような状況はありえない。毒がパーティーメンバーを殺すためにあるのではないのなら、毒消し草の存在意義以前に、そもそも毒状態は一体なんのためにあるのだろう?

 ファミコン版ドラクエ3まで遡ってみよう。ドラクエ3について思い出しておかなければならない事は3つ。

  • 初期のドラクエではアイテム欄が1人8個まで
  • 毒の治療法は教会・どくけしそう・キアリーの魔法
  • ドラクエ3で毒を使用するモンスターは出現順に
    • バブルスライム
    • ポイズントード
    • どくいもむし(毒の息)
    • くさったしたい
    • どくどくゾンビ(毒の息)

2.ナジミの塔でのトレードオフ

 最初のダンジョン、ナジミの塔に「とうぞくのカギ」を取りに行く道中にはバブルスライムが登場する。この時点でキアリーを習得していない*1ため、バブルスライムに毒を受けて「どくけしそう」を持っていない場合、レーベの村まで引き返さなければならない。

 冒頭とはいえ全員「よろい」と「ぶき」は装備するため、アイテム欄は一人6個以下しかない状態だ。開いた欄には「やくそう」「どくけしそう」「キメラのつばさ」のどれかを持つ事になる。

 「キメラのつばさ」は一個持てば足りるため、事実上これは薬草を持つか? それとも毒消し草を持つか? のトレードオフである。薬草が多すぎれば、毒消し草が切れHPを残しながら町に引き返さざるを得なくなり、悔しい思いをする。毒消し草が多すぎれば、アイテム欄が圧迫され薬草を持てる数が減りHPが切れて、やはり悔しい思いをする、というわけだ。

3.キアリー習得による解放のカタルシス

 ロマリアに渡ってしばらくするとキアリーを憶えるレベルに達する*2。このキアリー習得によって、プレイヤーはついに毒消し草を何個持つかなどという下らないことに頭を悩ます必要もなければ、失敗して悔しい思いをする必要もなくなるわけだ。

 習得してすぐ使う機会があるように、ちょうどロマリア周辺にはポイズントードが配置されている。さらにそこから少し進んだシャンパーニの塔*3とその周辺には、毒の息で複数に毒を与えてくる「どくいもむし」が登場する。もちろん「一度に何人毒に犯されようがもう怖くないぜヒャッハー!」という開放感を確認させるためである。

 と、いうわけで、

  • 毒のダメージが戦闘中にある(戦う代わりに毒を治すこととのトレードオフ)

 わけでもなければ、

  • 毒消しが高い(お金とのトレードオフ)

 わけでもないドラクエ的な毒なのに、

  • アイテムの個数制限が厳しい(他のアイテムを持つこととのトレードオフ)
  • “後で”キアリーを憶える。*4
  • それを確認させるための毒使用モンスターが登場する。

 というカタルシスを得るための条件が用意されていない「毒」ステータスは、ほぼ存在意義がない。「毒を受けたら毒消しを使う」という単なる作業をプレイヤーに強制するだけのものになってしまう。

 「RPGには毒があるのが当たり前だろう」「毒があったら毒消しがあるのが当たり前だよね」と惰性で決めただけだと、そうなってしまう。実際そうなっている事が、ままある。むしろ、そうなっていない事例の方が少数派なのではないかと思う。

 もちろんドラクエは、そこのところはきちんとしていた。1人が持てるアイテムが12個になりアイテム制限が大幅に緩んだ5では、戦闘中でもダメージを受ける「もうどく」状態が追加されたり、「のろい」状態とシャナクの習得タイミングで同様のカタルシスを用意したりしている。

*1:昔の公式ガイドブックを確認すると、僧侶のキアリー習得レベルは11。ナジミの塔の到達レベルは4。
*2:ロマリア城の到達レベルは10。
*3:到達レベル14。
*4:あるいはそれに相当する解毒手段を得る。

おまけ

 Wizつながり。組曲の替え歌はなんでもあるな。

コメント

  1. 紫蘭 より:

    いまさらですけれど、FFのほうの3だとこの構図が逆転しているのが面白いですね。
    お金の許す限りいくらでも持てるどくけしと、限りある魔法回数を消費するポイゾナ

  2. より:

    FC時代のDQ2やDQ3などは、とにかく初期ほど金欠になりやすいので、
    いかに効率よく金を貯めるかというのが死活問題。
    冒険初期で、「ダンジョンなど遠征」では毒消し草は必須だが、「普段の経験値稼ぎ」ではそうでもない。教会の毒消しは6Gで毒消し草は10G。だから教会まで耐えて、金を4G浮かせるという戦略も成り立つ。

  3. より:

    DQ2でもDQ3でも、初期ほど金欠になる。そんな中、毒消し草10Gの出費は痛い。で、敵を倒す順番として、毒の敵を先に倒すかそれ以外を先に倒すかで、戦闘リスクが変化する。そういった駆引きもある。

  4. 匿名 より:

    幼少の頃からの疑問を敢えて言わせてもらう!w
    現実問題、「毒」ってのは体に回りきった時点で、人体に破滅的なダメージを与えるものであって、それまでは自覚症状すらなかったりするものが多い
    治さないと、継続的にダメージを喰らうのは、骨折とかじゃね?w
    自分を納得させていた理由としては
    ・勇者と仲間たちはかなりタフな連中であるということ
    ・「?ゾンビ」という敵が毒ぐらい吐けないと威厳が保てないから
    結局、敵のさじ加減としての毒であれば、「この敵には火が効く」とかと同列に「この敵には毒消し持参が有効である」ととらえていいんじゃないか?(あくまで90年代以降のゲーム的にはw)
    そこら辺の延長なのか、不思議のダンジョンにいたっては、毒消しを投げつけるとダメージを食らうヤツとかいたよね?

  5. 匿名 より:

    どくけしそうは2から導入されたアイテムなので、2をベースに考察された方が良いのでは?
    役立たずのサマル某を殺してしまった場合のペナルティとしての「どく」、その救済措置としての「どくけしそう」とかなんとか。
    ちなみに、自分は「どく」で全滅喰らった事が幾度もあるので、「鬱陶しいのを我慢しさえすれば?」というのは首肯しかねます…。

  6. 匿名 より:

    せんせー
    僧侶がいないこだわりのPTはどうしたらいいんスか
    フリーダムなPT構成に対する保証アイテムですよね
    発売当時のメイン購買層であっただろう小学生が僧侶を入れるとは限らないわけですし
    勇者キアリー覚えないし

  7.   より:

    ぜんぜん関係ないけど、毒のダメージ受けてる音とエフェクトがウザイのよね。ウインドウの色も。

  8. 木戸孝紀 より:

    >鯛
    アスカは持ってるけどあまりやれてない。
    >通りすがり
    ないです。
    >名無しさん
    その点弱いレベルの魔法も出番が無くならない
    Wizの魔法レベル別回数制は傑作だと思うのです。
    なんで引き継いだゲームが少ないのだろう。
    >aruさん
    鯛の発言はネタでしょー。
    不思議のダンジョンの毒は名前が同じなだけで全然別物だから。
    ああ大根狩り大根狩り。

  9. aru より:

    不思議のダンジョンでも毒食らいすぎるとそれなりにピンチになるけどね。

  10. 匿名 より:

    >「一度に何人毒に犯されようがもう怖くないぜヒャッハー!」という開放感を確認させるためである。
    答えでとるやん。この開放感を味あわせるためだろ。
    ちょこちょこご褒美をはさまれてる感じじゃないの?
    強い武器とか魔法とかも同じようなモンでしょ。
    バギクロスが使えるようになったらメラとかもうほとんど使わないでしょ。

  11. 通りすがり より:

    >毒のダメージが戦闘中にある
    あれ?無かったっけ?ターン終了時にダメージを受けた記憶が有るんだけど。

  12. より:

    俺にとっての毒消し草は盾に合成して消の印を付ける為の物だから超重要。
    うろこの盾出現率微妙だからなぁ。
    しかし、ドラクエも不思議のダンジョンも毒を軽く見てるよねw
    不思議のダンジョンなんて力が減るだけなんだぜwww
    まあ、力は重要だけど。

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