科学技術哲学

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マーティン・ガードナー『奇妙な論理 だまされやすさの研究』

最近亡くなったマーチン・ガードナーによるニセ科学本の古典。原題"In the Name of Science."(『科学の名の下に』)  原著は1952年著と相当に古く、単に多くのネタが昔の話であるというだけでは済まない。一例を挙げれば、「ニグロ」という単語が、単に「黒人」という意味でなんの注釈もなしに使われる。現代ではありえないことだ。  この本の面白さは、それほどまでに古いにも関わらず、その価...
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ネクトカリスはイカだった!?

Nectocaris: mystery fossil was actually a 500-million-year-old squid relative | Not Exactly Rocket Science | Discover Magazine  バージェス動物群について久々に面白いニュースが。ハルキゲニアの上下逆転以来の衝撃かもしれん。  摩訶不思議と思われていた化石が徐々に既知の分類に...
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ダニエル・C・デネット『スウィート・ドリームズ』

目下バカ検知ワードとして大活躍中の「クオリア」についての議論。 分子やエネルギーについて何もわからなかった頃の「フロギストン」や「カロリック」 DNAや酵素について何もわからなかった頃の「生気」 素粒子や時空について何もわからなかった頃の「エーテル」  などと同様に、まだ神経や脳について詳細がわからない時代であるが故に抱くことが可能であるだけのどうでもいい概念だというのが著者の立場。  内容そのも...
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マーティン・ガードナー『自然界における左と右』

数学者 マーチン・ガードナー氏逝去 - スラッシュドット・ジャパン  マーティン・ガードナーの訃報を見たので、ついでに一番記憶に残っている本を紹介。  よくある「鏡はなぜ左右だけ反転させるのか?」的な話から始まってパリティ対称性の破れなどまでカバーしてくれる、この話の決定版的存在。 おまけ  左右に腰振るだけなんてゲッダンよりつまらんと思ったら意外な収穫。 【ニコニコ動画】おちゃめ機能 歌った
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空飛ぶスパゲッティモンスター

うろおぼえだが、昔読んだユダヤジョークの本に、確かこういう話があった。 (強制収容所にて) 看守「ドイツ*1をダメにしやがったのは誰だ!」 囚人「はい! ケーキ屋とユダヤ人です!」 看守「……なんでケーキ屋なんだ?」 囚人「……なんでユダヤ人なんです?」  世の中にはしばしば、何かがないことの証明が不可能だということ*2に依拠する一見もっともらしい主張があって、倫理的にもろくでもないことが多い。 ...
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テンプル・グランディン『動物感覚―アニマル・マインドを読み解く』

「動物福祉」にたずさわる「自閉症」の「女性」の「共著」。……何このスピリチュアルアンテナにビンビンくるキーワードの羅列! 「おお、彼女こそ動物たちと魂の触れ合いができる天使のようなピュアな心の持ち主! 環境ホルモンまみれのマクドとかむさぼり喰ってる愚民ども今すぐ有機野菜買わないと地獄に堕ちるぞ!」  みたいな内容だったらどうしようと警戒しながら読み始めたので、意外にも大変まともな内容でものすごく得...
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クリストファー・レーン『乱造される心の病』

私はADHDなどの新しい精神疾患の概念には懐疑的である(参考)が、ちょうどそれに関する話題のようだったので読んだ。  ますます疑念が強まる結果になった。読んでいて楽しい本ではないが、下の目次や抜粋を見て興味を持った人にはおすすめする。 目次 第1章 心の問題か?脳の問題か?――不安をめぐる一〇〇年の闘い 第2章 感情が病状にされる――診断をめぐる闘争 第3章 内気は病気になった!――精神医療産業の...
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カール・ジンマー『大腸菌〜進化のカギを握るミクロな生命体』

カール・ジンマーの本。彼の本はどれも最高に面白いが、今回も期待を裏切らぬ出来。  E.Coliすなわち大腸菌を案内役に、生命科学の基本・その歴史・社会的意義に至るまで幅広く扱っており、かつどの部分を取ってもレベルが高い。非常におすすめ。  一般向け科学啓蒙書として唯一の欠点と思われるのは写真の少なさだろうか。口絵に何枚かだけでもいいので、大腸菌の電子顕微鏡写真とか、鞭毛を動かす分子モーターのCGと...