文化芸術宗教

中島敦『山月記』

DS文学全集で久々に読んだがやっぱりこれは面白いわ。  隴西の李徴は博学才穎、天宝の末年、若くして名を虎榜に連ね、ついで江南尉に補せられたが、性、狷介、自ら恃むところ頗る厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしなかった。いくばくもなく官を退いた後は、故山、略に帰臥し、人と交を絶って、ひたすら詩作に耽った。下吏となって長く膝を俗悪な大官の前に屈するよりは、詩家としての名を死後百年に遺そうとしたのである。しかし...
ガイア教の天使クジラ

ガイア教の天使クジラ5 金儲けのための宣伝や政治利用を批判するのが論の目的ではない

【第4回】 【目次】 【第6回】  ずいぶん間が空いたが久しぶりに続きを書く。  あちこちからリンクされているのは結構だが、若干誤読されていそうな気配も出てきたので、ちょっと今までの流れを止めて、このシリーズで扱わない事は何かということを書こう。  まず、反捕鯨運動の始まりやそのきっかけに関しては扱わない。昔調べた名残でまんざら知らないわけではないが、一切扱わない。これらは――少なくとも私にとって...
科学技術哲学

ジャレド・ダイアモンド『文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの』

プラトンの『国家』と共通点のある本。その共通点とは、初めて読むとき最初の一章を飛ばせ! 必ず飛ばせ! というもの。  最初の一章がアメリカのモンタナ州の話なのであるが、これが本の中で一番、そして唯一、実につまらないのである。  アメリカ人なら自国の話から入ることによって興味が沸くのかもしれない――少なくとも著者の意図はそうだろう――が、アメリカ人でないのなら絶対に次のイースター島の章から読み始める...
科学技術哲学

スティーヴン・ジェイ・グールド『神と科学は共存できるか?』

誰だつまらないとか感心しないとか言ってるのは。十分面白いじゃないか。まあ確かにグールドの本の中では、一番つまらないのは認めざるをえない。個人的には『2000年問題』よりは面白かったが。  しかし、題材が題材である。なんと言ってもこれは何百年も前から確立している道徳原則と科学哲学の再確認に関する本なのだ。およそ本の題材として――何の題材としても――これ以上つまらないものがこの世にあろうか。  思えば...
科学技術哲学

人種差別問題でオススメの本3冊

ワトソン発言の件(finalventさんのまとめを見ればいいと思う)で何か書こうと思っていたのだけど、ちょっとまとまったものを書く暇がなくて出遅れてしまった。  やはり日本ではこの件での認識の甘い人が多いと感じる。誰とは言わないが、ワトソンと同レベルの剥き出しの偏見をしっかり抱いている人が、ざっと見るだけでもかなりの割合でいる。彼らとワトソンの違いは、反発を受けるとわかっている発言をあえてする自信...
科学技術哲学

ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』

今日の世界の各地域の状態には大きな格差がある。  ユーラシア大陸発祥の民族・文明・国家は先に高度な発展を遂げた。  その侵略によってアメリカ大陸やオーストラリア大陸の先住民は絶滅あるいはその寸前にまで追いやられ、アフリカ=ユーラシア大陸からの移民に取って代わられてしまった。  アジアの各地やアフリカ大陸は、植民地にされたり住民が奴隷にされたりしたとはいっても、今でも有史以来の住民の子孫が暮らしてい...
ゲーム森羅万象

『DS文学全集』

買ってみた。なかなか快適だ。  DSを縦に持つとちょうど2画面が本のページらしい見た目になる。しかも画面の端あたりをタッチするというアバウトな操作でページをめくることができるので、普通に読み進めている場面ではタッチペンを使わず、本を持っている右手親指にちょっと力を入れるような感じでいける。実に自然だ。  このような使い方はDS開発の時から考えていたんだろうか。考えていたとしたらすごいことだし、予想...
WEB情報通信

さいたまさいたまさいたまさいたま

投げっぱなしエントリ。一世を風靡したさいたまAAの魅力は一体どこにあったんだろう?  AAの魅力もあったかもしれないが、それよりは音韻的なものだったような気がしている。「sa i ta ma」。  当時からいろいろな県名や全く関係ない言葉に置き換える試みがあったが、それらを見ながら面白さを保存するものの共通点を突き詰めていくと、どうも母音の並びに関係ありそうだという結論に達した。 a i a a ...