書評

科学技術哲学

ポール・ホフマン『放浪の天才数学者エルデシュ』

ポール・エルデシュの伝記にからめて様々な数学および数学史の逸話を盛り込んだ本。 四六時中手を洗う、とか潔癖症を通り越して強迫神経症を疑わせるようなエピソードが多数あり、これまた天才とキ○ガイは紙一重と表現したくなるような人物だったようだ。 エルデシュ自身に一般的にすごくわかりやすい目立つ業績(たとえば「あのフェルマー予想を証明した!」とか「あのポアンカレ予想を証明した!」とか)があるわけではないの...
政治経済社会

前田高行『アラブの大富豪 』

“アラブの石油王”なんて表現はフィクションではお馴染み……かと言えばそうでもないな。イスラム圏なので文化の壁もあるだろう。そもそも本当の金持ちというのは、自分がいくら金を持っているかも、どのように運用しているかも秘密にするものだそうである。 まあ確かにそうだろう。近代的な会計制度によって財務がオープンになる企業を通して金持ちになるという私たちが当たり前だと思っているスタイルが、むしろ最近になって生...
科学技術哲学

デーヴ・グロスマン ローレン・W・クリステンセン『「戦争」の心理学 人間における戦闘のメカニズム』

『戦場における人殺しの心理学』の実践編みたいな位置づけの本。前作と共通部分が多いので、普通の人は前作のみで十分かもしれない。逆に自衛隊員・警察官・SP・警備員・消防士といった職業の人は自腹切っても読むべきだと思う。 いや……自腹というか、配られて然るべきなんじゃないのか? そもそも日本の自衛隊や警察では、ちゃんとこういう最新の研究成果に基づいた教育と訓練が行われているのだろうか? 根拠はないが絶対...
科学技術哲学

パスカル・ボイヤー『神はなぜいるのか?』

原題は『説明される宗教』(Religion Explained)。原題の方が内容に忠実だ。全体の趣旨は私なりに思いっきり要約するとこう。従来の説明宗教は説明を与える。宗教は安らぎを与える。宗教は社会に秩序を与える。宗教は認知的錯覚である。 これらはみな一理あるが不十分である。このような現在「宗教の特徴」と言われて思いつくようなものは、いくつかの大宗教の特徴であるに過ぎず、宗教全体の中では時間的にも...
アニメコミック

Boichi(ボウイチ)『HOTEL』

いけさんフロムFR・NEO RE 壮大なるSFロマン!Boichi作品集「HOTEL」が待望のリリース!! 立ち読みで印象に残っていた作品だけど、上のいけさんのところで単行本化を知って速攻買ってきた。やはりこれは絶品。読んでいて、なぜか木城ゆきとの『飛人』を思い出した。何となく雰囲気とか全体の密度の高さとかノリとか、もちろんSF短編集であること等が似ている。神漫画『銃夢』作者の短編集と無意識に比べ...
政治経済社会

藤原辰史『ナチス・ドイツの有機農業―「自然との共生」が生んだ「民族の絶滅」』

今もシュタイナー教育などに名を残し、真面目に受け取っている人もいるルドルフ・シュタイナーと有機農法の話から始まって、自然を愛し全ての生命と共生しようという思想がなぜ大量殺人のような結果を生んだのかを巡る話に繋がっていく。 私はこれとかこれとかナチスネタには目がないのだが、この本と『ナチスと動物』『健康帝国ナチス』の2冊はどれも素晴らしく、“いまここにいるナチス”三部作とでも勝手に命名しておすすめし...
科学技術哲学

ウィリアム・パウンドストーン『天才数学者はこう賭ける―誰も語らなかった株とギャンブルの話』

クロード・シャノンといえば情報理論を1人で生み出し完成させたと言われる、今日のコンピュータ化世界を作った立役者の一人。そのシャノンの人生と絡めてギャンブルと金融市場に関する理論とアメリカ社会の歴史を描くという本。 ちょうど同じウィリアム・パウンドストーン著でフォン・ノイマンにスポットを当てた『囚人のジレンマ』と同じような構成だ。彼の本はどれも最高クラスに面白く、もちろんこの本もつまらなくはないのだ...
科学技術哲学

河井智康『消えたイワシからの暗号―七人の研究者と魚類五億年目の謎』

このものすごいタイトルを見て超絶したトンデモ本を期待して借りたのに、意外にもまともな水産学本だった。 妙に力の入った言い回しを好む人らしく、ところどころかなり変なことも言っているが本筋にはあまり関係ない。ちょっと残念(笑)。おまけ【ニコニコ動画】初音ミクねんどろいど到着記念「おさかな天国」