書評

WEB情報通信

西垣通 『ウェブ社会をどう生きるか』

『ウェブの品格』とでも改題した方がよくね? ぐらいの印象。  一章に一つぐらい、いちいちファッショナブル・ナンセンスの領域に一歩踏み込んでる箇所があって萎えた。  とはいえ、事実認識としてあからさまにおかしいところはなかったような気がするので、おじさんにも読みやすいウェブ進化論としての価値はあるんじゃないのかな。  積極的にはおすすめしない。 おまけ 【ニコニコ動画】忙しい人のための『粉雪』
文化芸術宗教

海堂尊『チーム・バチスタの栄光』

方々でべた褒めされていたので読んだ。  こういういわゆる普通の小説を読むのはかなり久しぶりなので、どう評価していいかわからないが、かなり面白かったと言っていいのではないか。  どういう繋がりか『パラサイト・イヴ』と比較されていることが多いが、『パラサイト・イヴ』よりは好きだ。 おまけ  病院繋がりで作者は病気シリーズ。フタエノキワミ系では粉雪も受けたけどこれが一番。 【ニコニコ動画】【MAD】フタ...
政治経済社会

木村剛『最新版 投資戦略の発想法』

前も少し書いたけど今まで関心が薄かった経済や金融に興味が沸きつつあるこの頃。 404 Blog Not Found:発想法の投資戦略  でおすすめされていたので購入。  さすがに常識的な事が多く、今回これを読んだからどうだということはなかったが、非常な良書だと思う。最初の一冊におすすめ。 おまけ  12日でニコニコ動画が誕生一周年だったとか。まだ1年しか経ってなかったのか。 【ニコニコ動画】ニコニ...
科学技術哲学

フリーマン・ダイソン『ガイアの素顔―科学・人類・宇宙をめぐる29章』

フリーマン・ダイソンは「ガイア」を語ってもアホに聞こえない稀なる人間。  個人的に、日本で紹介されるときよく「ダイソン球で有名な〜」とか付け加えられるのがいまいち気にくわない。あれは本人も言っているように『スターメイカー』が出典でダイソンのアイデアなわけじゃなく、別にSFに関係なく単純に現代最高の知性の1人なのに。  恥ずかしながら、今回英語版のWikipediaでテンプルトン賞を受賞しているとい...
文化芸術宗教

中島敦『山月記』

DS文学全集で久々に読んだがやっぱりこれは面白いわ。  隴西の李徴は博学才穎、天宝の末年、若くして名を虎榜に連ね、ついで江南尉に補せられたが、性、狷介、自ら恃むところ頗る厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしなかった。いくばくもなく官を退いた後は、故山、略に帰臥し、人と交を絶って、ひたすら詩作に耽った。下吏となって長く膝を俗悪な大官の前に屈するよりは、詩家としての名を死後百年に遺そうとしたのである。しかし...
科学技術哲学

ジャレド・ダイアモンド『文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの』

プラトンの『国家』と共通点のある本。その共通点とは、初めて読むとき最初の一章を飛ばせ! 必ず飛ばせ! というもの。  最初の一章がアメリカのモンタナ州の話なのであるが、これが本の中で一番、そして唯一、実につまらないのである。  アメリカ人なら自国の話から入ることによって興味が沸くのかもしれない――少なくとも著者の意図はそうだろう――が、アメリカ人でないのなら絶対に次のイースター島の章から読み始める...
科学技術哲学

スティーヴン・ジェイ・グールド『神と科学は共存できるか?』

誰だつまらないとか感心しないとか言ってるのは。十分面白いじゃないか。まあ確かにグールドの本の中では、一番つまらないのは認めざるをえない。個人的には『2000年問題』よりは面白かったが。  しかし、題材が題材である。なんと言ってもこれは何百年も前から確立している道徳原則と科学哲学の再確認に関する本なのだ。およそ本の題材として――何の題材としても――これ以上つまらないものがこの世にあろうか。  思えば...
科学技術哲学

人種差別問題でオススメの本3冊

ワトソン発言の件(finalventさんのまとめを見ればいいと思う)で何か書こうと思っていたのだけど、ちょっとまとまったものを書く暇がなくて出遅れてしまった。  やはり日本ではこの件での認識の甘い人が多いと感じる。誰とは言わないが、ワトソンと同レベルの剥き出しの偏見をしっかり抱いている人が、ざっと見るだけでもかなりの割合でいる。彼らとワトソンの違いは、反発を受けるとわかっている発言をあえてする自信...